第31話 大文化祭の始まり
深夜の天文部に天文部員の他にナタリーやフェイトに父上も呼んで泊まり込みのつもりで修繕を急いだ。
父上は
「おい!ヴィル!何で俺がこんなことせにゃならんのだ!お前!俺は仕事があるんだぞ?しかも息子の大文化祭の展示物の修繕の手伝いとか!仮にも国王陛下に!!」
「ほお、いつも俺が父上の仕事を手伝ったりしているのに、父上は俺のこと手伝ってくれないんですか?後、父上は絵は微妙だけど模型とか作るの得意でしょ。それから夜中の飯とか」
「俺は一体何なんだ!!??」
と嘆く父上にザシャは
「陛下…すみません、それよりここのところ…元より綺麗になってて凄いです!!」
と言うと父上は調子に乗り
「そうだろ?流石フェリクスの息子だ!目の付け所がいいな!ここのこだわりは外せないだろ?より立体的に見えて観客も感心するだろう!」
と鼻高々に言う。
「それにしても誰がこんなことしたんだろ…」
とシーラはまた悲しげに言う。
俺は
「まぁ大体検討はつくよ…元星読み部の連中が自分達の部を潰されて腹いせにやったんだろ。証拠がないから訴えても無駄だしシラを切るだろうさ。相手をするだけ無駄だ」
と言うとミリアムは怒り
「お菓子潰されて憎たらしい…。仕返ししたい」
「ですよね…ミリアム様のお菓子を踏み潰すなんて!」
「ミリヤムねーちゃんのお菓子潰されたのかっ!?そりゃ酷い!」
いや、お前ら菓子より展示物の損壊の方が酷いからな!
「そうだ、夜食のおにぎりを作ってきたぞ、これでも食べて元気出せ皆!」
と父上がおにぎりを沢山持ってきて振る舞った。
「やった!陛下のご飯だ!!」
「おにぎりですか、三角で面白いです」
「味がなんかこっちと違う!」
「面白い!!」
と空気も和やかになる。悔しいが父上はこういう雰囲気作るの上手いよな。と見ると
ドヤ顔してこっち見てたからもう褒めるのやめとこう。
「何でだよ…」
と父上はボソリと言っていたが、食べながら作業を続けようやくなんとか元通りというか前よりも上手くできて精霊のウィルを呼んで星の点や月に灯りをつけて光らせて見るととても幻想的な空間が出来上がった!!
「おおっ!ヴィルやったな!プラネタリウム程じゃないけど十分綺麗じゃないか!!流石俺の息子!!ナタリーちゃんもイラストがこんなに上手いとはね」
「陛下ありがとうございます!!」
とナタリーも頭を下げた。
(これがこの世界の月…知ってたけどやはり地球から見た月とは微妙に違うけど…これが俺たちの世界の月だよな…)
と父上の心の声がした。もちろんシーラには聞こえないように俺だけに聞こえる声だった。父上曰くこの会話は親子の心のキャッチボールにしようぜと言うことにしている。
(父上の前世の月はどんな感じなの?)
と心の中で聞いてみると
(ん?日本じゃこの影の部分が月で兎が餅ついてる姿に見えると言われていて昔話ではよく月には兎がいるって言われてんだよ。ま、いないけどな)
(ふーん、この影にも何かの形でそういう創り話作ってんだ…モチって何?)
(おお、餅かあ…流石に餅米は手に入らないんだよなこの世界。このおにぎりに使われてる米の別の種類の米を炊いて潰してモチモチフワフワにして丸めて食うと上手いんだよ)
(そっか…この世界でも食えないのか…でも品種改良でいけるんじゃないの?)
(えっっ!?品種改良…おお、その手が…)
と話してると皆は無言の俺たちを不思議そうに見ていた。
「おお!み、皆お疲れ!皆でがんばったからなんとか明日は間に合ったな!!あ、父上もう帰っていいよ、仕事頑張ってください!」
「父親遣い荒いわっ!!」
と父上やナタリーとフェイトはミリヤムに送られて行った。
後の皆は外の見張りの兵士にも夜食を渡してそれぞれ寮に帰る。泊まり込みと思ってたけど案外早く終わったから良かった。父上を連れてきて良かったわ。使えるものは使わんとな。
男子寮と女子寮の間で別れる時にシーラは
「明日は楽しみだね!!お母様やお父様に弟たちも来るし!」
「ああ、楽しんでもらえるといいな!」
と言うとザシャは
「大丈夫ですよ!きっと私たちの展示物が一番です!」
と言う。シーラとサブリナと戻ってきたミリアムは女子寮に行き、俺とザシャとユストゥスは男子寮に戻っていく。
「ザシャ…もう一つの展示物は用意できたか?」
「ええ、滞りなく」
ユストゥスは首を傾げた。
「何ですか?ヴィルさんもザシャくんも?」
「明日のお楽しみだよ…」
と俺とザシャはクックックっと黒い笑いを漏らした。
*
次の日空は青く晴れて生徒達は朝早くから大文化祭の準備をする。
まだ外からの来訪者は来ていない。
そんな中、ざわざわと女子寮と男子寮の間の連絡通路の真ん中にある掲示板に元星読み部のメンバーが校内の人目に付かない所でイチャイチャしてる写真や俺達の天文部の展示物を壊している所などの写真が何枚も貼られているのを生徒達は食い入るように見ていた。
「やっ!やめろぉ!見るなっ!なんなんだよこの写真!!いつの間に!!」
と掲示板の前に踊り出したのはいつぞやの星読み部の先輩だった。もう名前も忘れたけど。
そう…俺はだいぶ前から先見の力で夢でこいつら元星読み部の連中が俺たち天文部の部屋を荒らしているのを視たのだった。
その事を俺はザシャだけにこっそりと言い、ザシャに彼等の行動を監視させ奴等がイチャイチャしているところや天文部の部屋を荒らす所を写真に撮らせておいた。それが今日発覚されたということだ。元々星読み部なんてどうでも良かったが、俺達の展示物を壊している先見は気分の良いものでは無かった。
ザシャも撮影を任された時、嫌な思いはしたと思うがザシャは誰よりも顔に出ない奴だから今までも黙って俺に協力してくれた。その代わりに大文化祭最後の後夜祭で何とかミリヤム様と一緒にいられるようにしてくださいと協力を頼まれたが。
そして俺とザシャは最後の仕上げと言わんばかりに
「おい、どうした?何騒いでる??」
と全く知らんように装った。
「ひっっ!ヴィルフリート王子!!」
名前も忘れた先輩が写真を隠すように立ち塞がった。残りの元星読み部メンバーも同じように隠そうと掲示板の前に立ち
「ちょっとあの…掃除を…」
と言い訳しているが、先に来て他の生徒と見ていたシーラやサブリナやミリヤム達が
「ヴィル!!犯人見つかったよ!!この人達が私達の展示物壊してた!!」
とシーラが怒ってビリビリしている。
ミリヤムも
「ミリアムのお菓子潰した所も写ってた!」
と攻撃魔法を掌に集めてバチバチさせている。
サブリナはユストゥスと先生や生徒会長達を連れてきた。
生徒会長の6学年のロホス・ヴァイスミュラー先輩は4大侯爵家の一つ、ヴァイスミュラー侯爵家の者だ。能力持ちで発動させるとその手に触れられた者は毒に侵されるという特徴を持ち、ヴァイスミュラー家は古くから犯罪者達の拷問官の役割を担ってきた一族だった。
生徒会長はメガネをかけたインテリイケメンで髪は濃い紫に瞳は切れ長のオレンジだ。
「皆さん何の騒ぎですかね?大文化祭が始まるというのに」
クイっとメガネを押し上げて元星読み部の人達にどけと言付けて青くなる彼等は
「違うんです!!ね、捏造写真が!!だ、誰かの悪戯なんです!きっと変身能力を持った奴が俺たちを陥れようとしたんです!会長!!」
と言い訳を始めた。しかしロホス会長は写真をじっくりと見て
「はぁ…嘆かわしい…学院内では寮も含めこのようないかがわしい行為は発覚すると処罰に値するだけでなく、加えて天文部の部屋を破壊か…何だね?君達には天文部に自分達のいかがわしい行為をする場所を潰された腹いせかね?お門違いだろう?君達の星読み部を潰したのは最終的に生徒会長である私だ!」
「だからこ、これは私達を陥れる為に誰かが撮ったものです!会長!」
「ふむ、ではその証拠はないのかね?変身能力を持つ者…前に」
とその場に数名が出てくるが
「私そんなことしてません!!王子達の部の展示物を壊す理由もありません!」
「俺もです!会長!写真に日付が写ってますがその日俺は寮にいました!ルームメイトが証人です!」
と変身能力を持つ者達も言い張り、彼等を睨んだ。
「ではヴィルフリート王子…心当たりはあるかね?」
「はぁ、元星読み部の彼等しか思い浮かびませんね。俺たちこの元星読み部を隠蓑にしたいかがわしいことする部は学院の秩序を乱していると判断したので報告したまでで、嫌がらせならば直接俺に来ればいいものを…まさか展示物を破壊するなんてね。修復するのは大変でしたよ…」
と被害者を装った。
「ともかく彼等にはじっくりと聞くことがある。先生方を交えて元星読み部の者達は大文化祭の参加は取り消しだ。これからじっくりと尋問させて貰おう」
と冷たくロホス会長はニヤリとした。
そして
「ここにいる者たちも…特に婚約者や恋人たち!寮はもちろん、慎みを持ちこのようなことにならないようにしてほしい!キス以上は休日外出許可を取り、色街で高い金を払うかお互いの自宅ですれば良いことだろうが!この学び舎を汚すな!!判ったな!?」
(ふっ、決まった!!)
と会長は心の中でほくそ笑んでいた。
いやキスはいいんかい!?いや…そりゃ俺とシーラもたまに…まぁいいか!!
そしてその場は解散となり、生徒達は俺たちに
「王子!後で天文部の展示見に行きます!!」
「天文部負けないでね!」
との声が上がった。
先生方も彼等を連行していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます