保健室の美少女

第23話

階段を上り始めると、すぐ上の踊り場に

ぐちゃぐちゃになった女子生徒の死体が転がっていた。



服がはだけて、露出した肌が真っ赤に染まっている。




歪んだ愛情表現なのだろうか。



それとも、どうせ殺すなら、

という感情で?



よくも好きな人にこんな仕打ちが出来るなと思ったが、私も同じだ。



私もこれから榊原を殺す。



殺し方はどうであれ、殺すという事実がそこにある以上、私もこの女子生徒を殺した奴と何ら変わりはない。



むしろ、この状況で気が狂わない方がおかしい。



普通の人にしてみれば、こうして私が榊原を殺そうとしていることすら気が狂っているように思うだろう。



私だってそう思う。



けれど、これはいわば正当防衛。



何も、間違ったことはしていないのだ。




その死体を出来るだけ見ないようにして、

私は駆け足で階段を上がった。




脚と脚の間がパリパリと割れて痛む。



阪本が死んだとき、血だまりに尻もちをついて下着が濡れたままだった。



しかも、今日に限って下着を一枚しか穿いていない。



半乾きの下着が気持ち悪かった。



一度気になってしまうと、なかなかそこから意識を逸らすことができない。



このままでは、むずがゆくて仕方がない。



まずは保健室に行って、

替えの下着でも頂戴しようか。



そう思って、私は2階の奥に向かった。





保健室は職員室の隣にある。




もう昼休みも終わる時間に差し掛かっていたが、まだ眩い陽射しが窓から差し込んでいた。




5月になって、

もうだいぶ日が長くなった。



こうして窓の外を眺めていると、

こんなにも平和に時間は進んでいる。



普通の日常を過ごしていただけなのに、何がどうしてこんなことになってしまったのだろう。



色んな人の血が付いた包丁を持って、

色んな人の血が付いた制服を着て。



そのうえ今から呑気に

下着を着替えようとしている。




私は、おかしくなってしまったのだろうか。



人が死ぬのは今でも苦しいけれど、

前よりずっと、慣れてしまった気がする。



このままじゃいつか、レンアイ放送に感情を殺されてしまうかもしれない。




そんなことを思いながら保健室に向かっていると、ティロン、とスマホに通知が来た。



開いてみると、届いたのは全校生徒宛の

一斉メールだった。





[皆さん、レンアイ放送、楽しんでますか?このメールを読むことが出来ているあなたに朗報をお届けします!


【レンアイ履歴】というサイトをオープンしました!

そこから放送済みの生徒の放送結果や安否情報が閲覧できます!

聞き逃してしまった放送結果や、離れ離れになってしまった友達の生存確認など、加えて校舎外でも放送が聞ける便利なサービスになっております!


ぜひご利用ください!

そして楽しいレンアイ放送を!


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読み手の苛立ちを煽るような文章に、

まんまと乗せられてイラっとする。



何が楽しんでますか、だ。



お前のせいで苦しんでいるというのに。



そんな感情がふつふつと湧いてくる中で、

私はリンクをタップした。



ウイルスの可能性だとか、

そんなことは一切考えていなかった。



ただ、ずっと美咲の安否が気になっていたから、開かずにはいられなかったのだ。


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