第6話
助かる方法があるかもしれない。
ほんの少しの希望を抱いて、
私は次の放送を待った。
この放送は、私たちの不安を煽るためなのか一つ一つの間が長い。
どこまでがルール説明なのか、
いつからレンアイ放送が始まるのか……
先の見えない不安ばかりが押し寄せた。
早く、早く……
生死の係ったルールを、
私はひたすら待っていた。
《ただ一つ、
失恋者にも助かる方法があります。》
……来た。
私の助かる道しるべが。
ほんの一筋見えた希望の光に、
私は肩の力が抜けた。
美咲も、私を見て控えめに笑う。
助かる方法があるというだけで、
こんなにも心が軽いなんて。
退屈な日々だけれど、
それでも私は生きたいんだな。
そう思った。
《生き残るただ一つの方法。
それは、好きな人を殺すことです。》
時が、止まったような気がした。
好きな人を、殺す……?
私はしばらくその意味がわからないまま
その場で固まってしまった。
《自分の好きな人が発表され、そして相手の好きな人が発表されるまでに、好きな人を殺してください。そうすればあなたは助かります。》
「こんなの、こんなの嘘だ……」
思わず、そんな言葉が漏れた。
「出来ないよ、殺すなんて……」
「瑞季……」
「私、やっぱり死ぬんだ……
どうしよう……」
手の震えが止まらない。
死の恐怖に直面すると、
何もできなくなってしまう。
榊原のために死にたいだなんて思わない。
でも、榊原を殺してまで生きたいとも思わない。
その感情の中で揺れていた。
どうしよう。
殺すべきなんだろうか。
私が死んだら、お父さんもお母さんも
悲しむんじゃないか。
でもそれは榊原だって同じじゃないか。
榊原にも家族がいて、
妹もいると聞いたことがある。
私より家族が多い分、
悲しみも大きいのではないか。
でも、人の命の価値は同じだ。
私が死んでも榊原が死んでも、
悲しむ人は絶対にいる。
私が死んでも、私が殺人犯になっても、
きっと両親は悲しむだろう。
じゃあ、どうすればいい……?
もう感情はぐちゃぐちゃだった。
どうするのが正解なのか、
私には何も分からなかった。
《それでは、レンアイ放送を始めます。》
ぐちゃぐちゃな考えを必死に整理していると、そんな放送が耳に入ってきた。
ついに、始まってしまう。
私の死へのカウントダウンが、
始まってしまう……
ぽろぽろと、涙がこぼれてきた。
生きたい、死にたくない。
まだ私、16年しか生きてないのに。
今は退屈でも、
大学に行って、
就職して、
結婚して、
子供も産んで、
家族に囲まれて幸せに死んでいく。
そんな普通の人生を送るものだと思っていた。
でもそれが、こんなにも簡単に壊されてしまうなんて。
当たり前の幸せなどないのだと悟った。
《A組1番
胸が、ドクンと波打つ。
心のどこかで、まだこれが夢だと、
冗談だと信じたかった。
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