第3話:スライムって仲間にすることは出来ますか?
スライムと聞いて愛那が思い出したのは、漫画の主人公に懐いていたポヨポヨ動く愛らしいスライムの姿だ。
「ナチェルさん! スライムって仲間にすることは出来ますか?」
キラキラとした笑顔で愛那が訊ねる。
「は?」
ナチェルが戸惑いの表情を見せる。
「え? 仲間? スライムを、ですか?」
その戸惑いこそが答え。
(しまった! 漫画の世界をそのまま口に出してしまった!)
愛那は馬鹿なことを訊いてしまったとすぐに反省して手と首を振りながら「ごめんなさい、何でもないです」と謝った。
冒険者ギルトにあった攻撃魔法を吸収する魔道具はこの城にもあり、魔物を討伐するのに必要な攻撃力があることは昨日証明してみせた愛那である。
その時明日は実戦かとライツと共に魔物の討伐に出るつもりでいた愛那に、その前に確認しなくてはならないことがあるからと止められた。
今日はその確認とやらをするらしい。
朝食の後、ライツはハリアスとモランを連れ、騎士団の者達と共に魔物の討伐に出た。
ライツの騎士姿を見た愛那が見惚れてくれたことが嬉しかったのか、上機嫌で出かけていった。
城で留守番の愛那は、自分の部屋のソファにナチェルと並んで座っている。
「それで、何の確認が必要なんですか?」
「マナ様は、魔物と動物の違いがわかりますか?」
「・・・・・・魔物と動物の違い?」
首を傾げ愛那は考えようと試みたが、ふと気づいてすぐに考えるのを放棄した。
わかるはずがない。
魔物なんて見たことないし、ここは異世界。動物でさえこの世界とあちらの世界で同じ認識なのかわからないのだ。
「わかりません」
愛那の答えにナチェルが頷いた。
「マナさまのおられた世界には魔物が存在しないと聞いていましたので、この確認は必要だと時間を取らせていただきました」
「お手数をおかけします」
「とんでもありません」
そう言ってナチェルはテーブルの上に置いていた一冊の本を手にして開いた。
「こちらの絵が何かわかりますか?」
「・・・・・・牛、ですね。隣が羊、山羊、豚、鶏」
本に描かれてある絵を指さしながら愛那が答える。
「そうです。これらは主に食用として育てられている動物です」
愛那はうんうんと頷く。
(よかった。あっちの世界と同じだわ)
「では、これは?」
ナチェルが違うページをめくり、その絵を指差し訊ねた。
そこには愛那が見たことがない生き物が描かれていた。
(牛みたいな顔に体はライオンみたい)
「見たことないです。えっと、動物か魔物かですよね?」
わからない。というのが正直な答えだ。
知らないだけで、あちらの世界にも似たような動物がいるかもしれないが。
「これはトビッカーという魔物です」
「魔物、これが・・・・・・」
(そうか。困ったなぁ。魔物と動物の違いがわからないなんて。・・・・・・でも、やらなきゃ!)
「わかりました。今日は私、頑張って魔物の姿形を覚えますからどんどん見せてください!」
「いえ、マナ様。覚える必要はありません。このような絵だけで判断するのは知識が無ければ私でも無理ですので」
ガクッと愛那は気勢をそがれた。
「え?」
「魔物が近くにいれば、わかります。魔物の気配を感じますから」
「えっ、気配? ・・・・・・それって私もわかるんでしょうか?」
「わかりません。討伐の前にその確認が必要だとライツ様もおっしゃっていました。気配で察知する能力には個人差がありますが、この世界で出来ない者はいません。幼子でもわかりますから」
「そうですか・・・・・・。試してみなきゃですね」
「はい。まずは危険の少ないスライムで試します。あれも魔物ですから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます