アタック&コンテニュー

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ゲーム&ブック

 夏の猛暑が本格的にきつくなってきた7月。

 教室の中ではテスト後に控えた夏休みの予定をどうするかという話で盛り上がっていた。

 もちろん僕もそんな中の一人……というわけではなく、教室の端で一冊の雑誌を読み込んでいた。

 雑誌の名前は『月刊ゲームズ』

 シンプルな名前の通りゲームの情報が多く乗っている雑誌で、ゲームが好きな僕にとっては愛読書だ。

 今回はあるゲームの特集ということでいつもより集中して読んでいる。

 そのゲームは『フリーダム・ファンタジー』

 最近話題になっているVRMMOだ。

 多くのスキルや魔法を自由に選んで独自のプレイスタイルを築き上げることが出来るらしく、βテストのころから様々な情報が出回っていた。

 そして今から一カ月前に正式サービスが始まり、多くのゲーマー達がそのゲームに熱中している。

 ゲームズにはその様子や、これからのイベントやアップデート情報が記載されていた。


「いいなぁ、やりたいなぁ……」


 僕もその話題のゲームに興味を惹かれていた。

 だが、残念なことにそのゲームをプレイすることは叶わない。

 理由は単純だ。


「ハードが高いんだよなぁ」


 そう、VRゲームをプレイするためのハードがとても高いのだ。

 少なくとも高校生には少し手を届かない程度には。

 ……いやまぁバイトをすればいい話なのだが、残念なことに学校でバイトを禁止にされている。

 そこそこに優等生な僕はそれを破る気にもなれず、ほぼ諦めている。

 プレイするとしたらいつになるだろうか……。


「もしかしてそれに興味がある?」

「えっ?」


 いきなり声をかけられて顔を上げる。

 そこには一人の女の子がそこにいた。

 えっと確か名前は……。


春秋しゅんじゅうさん?」

「うん、おはよう富士見ふじみくん」

「あ、うんおはよう」

「で、それに興味あるの?」

「これって、これ?」


 僕はゲームズを机に置いて『フリーダム・ファンタジー』のページを指さす。

 そうすると春秋さんはうんうんと頷いた。


「そりゃあるけど……。

 でも無理だよ、ハード高いから買えないし」

「ふーむ、そっかそっか」

「春秋さんはやってるの?」

「うん。

 だけど、周りにはいないんだよねぇ」


 まぁそりゃそうだろう。


「ハードがあれば今すぐにでもやりたいんだけどね」

「ほんとっ!?」

「うぉ!?」


 ぼそりと呟くと春秋さんはグイっと顔を近寄らせる。

 それに驚いて身体を後ろにそらし、その勢いのまま後ろに倒れそうになるがギリギリのところで持ち直してほっと一息をつく。


「あぁ、ごめんつい」

「いや別にいいんだけど、なんでそんなに食いつくように?」

「いや実はちょっと前のイベントの景品でVR機器貰っちゃってさ。

 私はもう持ってるから余らせちゃってるんだよね」

「えっ?」

「周りの何人かに声かけたんだけどあまり興味が無さそうでさ、でもこのままはもったいないし、フリーダムの方で一緒にプレイできる人探してたからちょうどいいかなって」

「待った待った!」

「んっ?なに?」

「……つまり春秋さんは何が言いたいのさ?」


 僕がそう聞くと彼女は「あぁ」と言って笑顔になって言った。


「私と『フリーダム・ファンタジー』やらない?」

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