春という季節には…?

❅銀花❅

短編第1話【花びら舞い散るころに】

夢は願うだけじゃ現実にならない。分かってる。だけど臆病な私は心の奥底で願うことしか出来なかった。だけどここなら叶うかもしれない…


「ねぇ。風はどうする?カラオケ行く?」

そう京ちゃんが笑顔で尋ねてきてくれた。最近京ちゃんと遊べてないしな。でも今日は無理なんだよな。

「あ、あぁ…うん。今日は辞めておこうかな。ごめんね」

「んー。わかったぁ。」

あぁ…行きたかったなぁ。でも母さんから用事頼まれてるんだよなぁ。もう、めんどくさいなぁ。

はぁ…『夢猫館』?何それ。ここの近所にそんな店あったっけ?まぁいいや。さっさと終わらせて帰ろ。


ここ、か…。なんか雰囲気あるなぁ。

「あ、あの。やってますか…?」

あれ?反応ない?もしかしてやってないのかな。あっ!じゃあかえ…

「あ。はい。この店に何かようですか?」

なんだろ。この人なんか笑顔が胡散臭いんだよね。気のせいかな?

でも残念だな。早く帰れたのなら京ちゃんと合流して遊べたのに。さっさと用事終わらせようっと。お使いの紙を出さないと。

「え、えっと、母からお使いを頼まれて…『夢見る猫をください』?」

え…なにそれ。どんな商品だよ。

って、店員さん少し驚いたような感じだけどどうしたんだろう?もしかして商品名間違えた?!

「あ。もしかして神崎風花様ですか?」

なんか納得したような感じで尋ねてきたな。確かに私は神崎風花だけどなんでこの店員さん私の名前知ってるんだろう?

「え、あっ、はい…」

「お母様からお話は伺っております。こちらへどうぞ」

あ。なるほど。母さんから話を聞いてたから知ってたのか。

って、ちょっと待って?!母さんから話を聞いてる?どういうこと?


「まずはお茶でも飲んでゆっくりしてください。」

そう言ってお茶を差し出してくれたけど、私は一刻も早く疑問を解決したいんだけど!この店員さんマイペースなんだね。まぁ、出されたものは有難くいただくけど。

「ありがとうござ…」

「ニャーン」

今猫の鳴き声聞こえたよね?どこだろ。

あ!いたいた!黒猫だ!可愛い。私猫好きなんだよね。

「その黒猫お気に召しましたか?昔拾った猫なんですよ。今では大事な相棒です。だからお店の名前にも猫という字を入れたんです。」

ふーん。店員さんとても優しい表情で猫のこと語るんだ。さっきまでの胡散臭い笑顔とは別物だね。でも相棒かぁ、それはいいな。

「それに黒猫はミステリアスでいいですよね。」

店員さんなんかとてもワクワクしてるけどちょっと普通とズレてる考えだと思うな。だって普通は黒猫は不吉だからって忌避されるでしょ?

というか黒猫の話はどうでもいいんだよ。本題に入ろう。本題に

「母から話を聞いているってどういうことなんですか?」

というかこの質問聞いて

『あ。そうだ。その説明しなきゃなんだ。』

みたいな反応するの?忘れてたの?酷くない?

「ごめんなさい。そうですね。その話をしなくてはいけませんね。」

やっと説明してくれる気になったか。

「明後日誕生日なんですよね?『誕生日のお祝いに』と頼まれたんですよ。」

「え?母がですか?」

いやいや。そんなまさか。仕事一筋の母さんが私の事考えるなんて…

「はい。貴方の夢を叶えるお手伝いをさせていただきます。」

「私の夢…?」

何それ。こんなお店で叶えられるような夢じゃないんだけど…私の夢はもう絶対に叶わないから。

「はい。お母様からお聞きになられていないのですか?ここはお客様の夢を叶えるお店でございますから。」

いい笑顔でそれ言っても不審でしかないからね?

そんな事出来るの?いや無理でしょ。どんな魔法だよ。それは

「そんなこと出来たら誰も苦労しないですよ?!」

「信じていませんか?ですがそれが出来るんですよ。」

店員さんはなんでそんなに自信ありげなんだろ?もしかしてほんとに叶えられるんじゃ。でも流石にね、怪しいし今からなら京ちゃん達と遊べるだろうし。

「ごめんなさい。よく分からないですし帰らせてもらえませんか?」

「はぁ。申し訳ありません。帰らせてもいいのですがそれでは約束を破ってしまいますので強引に失礼します。」

は?どういうこと?!え?黒猫の目が光ってない?どういうこ…って何?だんだん眠くなって…きた…

「失礼ながら魔法をかけさせていただきました。では夢の世界をお楽しみください。」

店員さんの声が微かに聞こえる。

「説明しわすれた…試練…進めない…」

え?何言ってるの?はっきり聞こえな…


ここは、どこ?真っ暗…というか店員さんさっき言いかけてたよね?割と重要な気がしたんだけど…

って、あれ。あれ猫じゃない?店員さんの相棒の猫。なんでこんなところにいるの?

「ミャア」

え、ついてこいってこと?

私たちずっと歩いてるけどどこまで行くつもりなの?ずっと歩かせるつもり?

「ミャア」

え、つい…

「きゃっ!」

眩しい!


え、ここは公園?近所の公園だ…

「わぁ、桜綺麗だなぁ。」

でもさっきまで外にいなかったよね?お花見でもするのが私の夢だと思われたのかな?別にお花見したことは無いけどそんなの夢でもなんでもないんだけどなぁ。

「風ちゃん。」

なんか聞き覚えのある声がする。って、

「母さん?!」

「ふふ。先に走って行っちゃって。そんなにお花見楽しみだったの?」

え、母さんとお花見?そんなことしたことないよね?いっつも母さんは仕事でいないから。というかいつもより目線が低いような?気のせいかな?

「でも勝手に1人で行っちゃダメよ。迷子になっちゃうでしょ。」

なんでそんなに小さい子に言い聞かせるみたいに言うのかな!失礼な母さん。高校生に向かってそれはないよ!

「私は迷子になるような歳じゃありません!母さん失礼だよ!」

「ふふ。そっか。うんうん。じゃあ手繋いでようね。」

なんでそんな微笑ましそうに見るの?!というかそれが子供扱いじゃん!人の話きいてよ!

ん?待って?!え?!なんでこんなにちっちゃい手なの?!鏡!!鏡みて確認しないと。

「風ちゃん?!」

あぁ。もう、走りにくい。なんでいつもみたいに走れないのかな。

「はぁ…はぁ…」

やっぱり小さい頃に戻ってる!!どういうことなのこれ?!

「もう。風ちゃんいきなりトイレに駆け込んで…どうしたの?おしっこ行きたくなったの?」

あ。母さんが急いで来た。なんかとても心配そう…でもそれどころじゃないの!

「ねぇ?!母さん?!なんで私ちっちゃくなってるの?!昔に戻ってるの?!」

「風ちゃん?いきなり何を言ってるの?」

なんで?なんでそんなに戸惑ってるの?私変な事聞いた?だって私は高校生なんだよ?母さんだって知ってるはずだよね?

あ。いや、まさか…このくらいの頃1回母さんとお花見に行ける予定があったよね。結局叶わなかったけど。

もしかしてあの店員さんが言ってた夢を叶えるってこのことさしてるの?ということは…昔行けなかったお花見に行けるようになったってこと?もう二度と行けないと思ってたのに。母さんとはもう二度とどこにも行けないと思ってたのに。

「風ちゃん。今度は黙っちゃってどうしたの?」

母さんが心配そうに見てる。そうだよね。急に黙ってたら不自然だ。だけどこれが夢を叶えられるということなら…

「ううん。なんでもないの。それより早くお花見行こ!」

私は母さんと今日一日一緒にいられる!

「ふふ。そうね。」

ほら。母さんもとても嬉しそう。母さんのあんな顔は久しぶりに見たよ。あぁ。楽しみだな。父さんが死んでから初めて、初めて一緒に休日を過ごせるよ。


「ねぇねぇ。母さん!バナナチョコ食べたい!」

「はいはい。一本だけだからね」

「わぁ射的だ!射的!射的やろ!母さん!!」

「お母さん。射的得意だからね!頑張っちゃうよ。」

あぁ、楽しい。楽しい。こんなにお花見は楽しかったのか。ずっとこのまま続けばいいのにな。それに母さんいつも難しい顔してたから。こんなに笑って楽しんでくれるなんて。

「あ、電話だわ。」

え?まさか、仕事の電話じゃないよね?!

「もしもし………」

なんでそんなに申し訳なさそうな顔でこっちを見てくるの?

「ごめんね。風ちゃん。お母さん仕事行かないと。」

え…?

「なんで?!今日一日遊んでくれるんじゃないの?!」

「ごめんね。また今度遊ぶから。」

母さんが困った顔してる。分かってる。これは我儘だって。いつもの私ならこんなこと言わない。だけどこれは私の夢を叶えてくれるところだよ!なんで?どうして?仕事が入るの?

「じゃあ…帰ろうか…」

さっきで母さん楽しそうだったのに。また難しい顔してる。

それは私の顔が酷いせいなのもあるのかもしれない。だけどそれでも思わずにはいられない。なんでこんなことになってるの?こんなことになるはずないじゃん。これからもっと一緒にいて楽しむんだよ!!たこ焼きとかりんご飴とか食べて一緒にくじとかひいてみてそれで桜と一緒に写真撮ったりするんだよ!!まだやりたいことの半分も出来てないよ。なのに、なのになんで?夢を叶えてくれるんじゃなかったの?!

そう思ってしまう。

「母さんなんて知らない!!」

私は大声で叫んで駆け出した。だってそうしないと母さんに酷いこと言っちゃいそうだったから。でもでもでも!これは母さんが全部悪いんだ!

「風ちゃん!!」

うるさい!最後まで一緒にお花見してくれない母さんも私の夢なんか結局1つも叶えてくれないここも全部全部知らない!

だからもう帰る!こんなところいても時間の無駄

「待って…!待って風ちゃん!!」

なんで母さん追いかけてくるの!!来ないで!母さんは仕事だけしてればいいんだ!私の事なんて結局考えてないんでしょ。

この信号を渡れば流石の母さんも追いつけないで…

「風ちゃん危ない!!」

え…車がこっちにくる…し…


はっ!あれ?死んでない。良かった。

というかここはどこ?また真っ暗なところだ。

「ミャア」

また黒猫?またついてこいって?

そんなことよりさっき死んだの大丈夫なの?というか結局夢叶えられてないじゃん。期待を裏切られたり死んじゃったり散々だよ!

なのにまたどこかに連れていく気なの?今度はどこ?こんなところいても夢は叶わないどころか時間の無駄ってことがよく分かったし目覚めさせてよ!それにあんな思いするのはもうたくさんだよ…

「ミャア」

今度はここなの?ここにいけばこんなところ終わるの?

「ミャア」

行ってみろってこと?行くしか目覚める方法も無さそうだし行くしかないか。


ここはさっきの交差点。

え?私倒れてない?なんで私は私を見れてるの?

あれは母さん?

「風ちゃん!!風ちゃんしっかりして!お願いだから目を開けて!」

なんでそんなに泣いてるの?まるで私が死んだかのように…

もしかして、私死んだの?ほんとに?

じゃあこの私は誰?死んでるのにちゃんとここにいるよ?もしかして幽霊?!

あれ?手紙が落ちてきた。なになに…

『言い忘れていましたが貴方の本当の夢を叶えるためには試練を乗り越えなくてはいけません。もし、試練を乗り越えられなければこの夢から脱出することはできません。頑張ってくださいね。』

はあ?!そんなこと聞いてない!

って店員さんがなんか言ってた気がしたのその事についてじゃない?!なんなの!なんでそんな大事なこと言わないの?!信じられない。

で、試練って何?何をクリアすればいいの?

って書いてないじゃん!大事な事だよ。書いておこうよ。

これからどうしよう。

「風ちゃん。ごめんね。ごめんね。ダメな母親だったよね。ほんとにごめんね。」

なんで母さんそんなに謝ってるの?なんでそんなに悲しそうなの?だって母さんは私よりも仕事を優先するような人で私の事なんて全然考えてないんでしょ。なのになんでそんなに泣いてるの?訳分からないよ…

「もっと風ちゃんと遊べばよかったね。仕事に逃げないでもっとちゃんと向き合えば良かったね。ごめんね。ごめんね。」

母さん?それどういうこと?ひょっとして母さんは私の事考えてなかったわけではなかったの?じゃあ今まで私が悩んでいたのは…


あれ?また真っ暗なところに来た。さっきの場面は終わりなの?

「ミャア」

あ。出た、黒猫。ということはまた変なところに連れられるの?もういい加減帰らせて。母さんのことが分からなくなってきたよ。

って、また手紙が落ちてきた。今度は何が書いてあるのか…

『試練クリアおめでとうございます。貴方の本当の夢を叶えるためにはこの試練をクリアしてもらわないといけなかったですから。どうですか?お母様が貴方のことを考えていないという考えは改まりましたか?貴方のその考えをどうにかしないと本当の夢は叶わないと思いましたので試練にさせていただきました。では貴方の本当の夢、叶えに行ってください』

私の考え方をどうにかする?確かに今まで思ってたことと違くてびっくりしたけど。それ以上に分からなくなっちゃった。

「ミャア」

この猫について行けばこのモヤモヤも無くなるのかな?なら行ってみるしかないよね。

「ミャア」

今回はあまり歩かなかったな。次はどうなるのやら…


えっ。辺り一面紫色だよ。ここ、どこ?今度は何が起こるの?

「風。」

え?

「か、母さん?!」

なんで?なんでこんな所に母さんがいるの?これが私の本当の夢?どういうこと?

「ふふ。サプライズ。驚いた?昔から寂しい思いをさせてきたから。たまにはこういうのもいいでしょ?」

母さんが楽しそうにしてるけどそれを見てると無性にイライラしてくる。確かに母さんは私のことを考えてたのかもしれない。だけど寂しい思いをさせてきたから?こういうのもいいでしょ?

「ふざけないでよ!!こんなんでこんなんで私がこれまで寂しい思いをしてきたのを帳消しにするつもり?!こんなの、こんなの全然良くないよっ!!」

それに私が死んだりして有耶無耶になっちゃったけどさっき結局最後までお花見できなかったじゃん。最後まで出来ないなら初めから諦めた方が良かったよ。

「ごめんね。言い訳になっちゃうかもだけどね。お母さんお父さんが死んでからどうすればいいのか分からなかったの。風にもどう接したらいいのか。だけどね。偶然昔の同級生に会ったの。夢猫館の店員さんお母さんの同級生なのよ。」

母さんの言い訳なんて聞きたくない。うるさい、うるさい!だから?それが何と関係してるの?

「そんな話で誤魔化そうと…」

「風。お願いだから最後まで話を聞いて。それでね相談したの。そしたら『娘さんときちんと向き合いなさい。逃げてばっかり居ないで』って言われちゃって」

そんな事言われても今更なんだよ、母さん

「『向き合うためのお手伝いはしてあげましょう。それにその努力は娘さんのためにもなるでしょう。』って言ってくださってね。で、こうなってるわけなの。」

向き合うためのお手伝い?しかもそれが私のためになる?ふざけてるの?益々イライラしてくる。

「だから、だからなんなの?!今更遅いんだよ!!どれだけ寂しい思いをしたと思ってるの?!」

こんなことされてもちっとも嬉しくない!古傷が抉られただけ。

「うん。そうだよね。ごめん、ほんとにごめんね。風…」

なんで、なんで母さんまでそんなに悲しい顔してるの?これまでの事後悔でもしてるの?ほんとに、今更なんだよ。

「今更、遅いんだよ。ずっと私は寂しかったんだよ。寂しかったんだよぉ。」

あ、あれ?こんなこと言うつもりなかったのに。あぁ。そっか。ほんとに寂しかったんだな。私。なれてたと思ったんだけど…でも泣くつもりはなかったんだけどなぁ。泣きやめ。泣きやめ、私。なのに…なんで泣きやめないんだろう?おかしいな…涙が止まらないよ。

「ごめんね。ごめんね。」

抱き寄せられた?あれ?母さんがとっても悲しそうだよ…違うの。そうじゃないの。母さんを悲しませるつもりはなかったの。あのね、あのね。

「母さんが頑張ってるのも何となく分かってたの。父さんが死んでから人一倍頑張ってた。だけど私は我儘ばかり言ってた。それが煩わしくて私なんか嫌になっちゃったのかなって…。私に構うなんて面倒になっちゃったのかなって思ってたの。」

父さんが死んでから私は寂しくて寂しくてしょうがなかった。だから母さんに構って欲しくて色々やった。もう二度と仲良くなんか出来ないと思ってた。母さんの頑張りを邪魔するような私なんてもう二度と目にも入れたくないのかと思ってた。

「そんなこと、そんなことあるわけないでしょ?!」

「うん。そうだね。そんなことなかったね。」

あぁ。そっか。母さんはいつでも今までも私のために頑張ってくれてたのか。私を目に入れたくなくて仕事していた訳じゃなかったのか。

「風はいつまでもどんな時でも私の宝物よ。大好きだよ。」

あれ?母さんも泣いてるね。そっか。私達は話し合わないといけなかったのか。お手伝いってこういうことだったのか。私の本当の願いも分かったよ。

「うん。わかってるよ。母さん、今までありがとう。ありがとう…」

でも…なんであのお花見の夢では最後まで母さんとお花見出来なかったんだろう?


「目が覚めましたか?」

あ。店員さんがこっちを見ている。

「あ。店員さん。」

「いい夢が見られましたら良かったです。」

店員さんなんか嬉しそう。でもなんでこんなことしたんだろう?

「それはですね、私の尊敬する人が『何もすることがないなら、生きる意味が欲しいなら人と人の架け橋になりなさい。それをやっている間は貴方は生きなくてはならないの。』と私に生きる道を教えてくれたからですよ。」

へぇ、そうなのか。ってなんで私の考えることがわかったの?

「もしかして店員さんエスパー?」

「いえ。貴方の考えは顔に出てとても分かりやすかったので」

え?!じゃあ今まで考えてたこと筒抜けだったのかな?!それはかなり恥ずかしい…

って、そ、そんなことより聞かなきゃいけないことがあるんだ。

「店員さんと母は知り合いだったんですね。」

「はい。貴方のお母様はとても素晴らしい人でした。」

そっか。うん。

「そうですよ!だって私の母さんですから!」

あ。でもそうだ。もう一個聞かないと。

「なんで私の夢は母さんと最後までお花見できなかったんですか?」

「今日はとても綺麗に桜を見ることが出来る天気です。ぜひ夢の続きは行動してみてはいかがですか?」

店員さんはなんでそんなに嬉しそうなんだろう?だけどそっか。これも含めてお手伝いなのかな?だったら、そうだな…

「ありがとうございます。店員さん。母さんを誘ってみますね。」

その時私は多分久しぶりに心からの笑顔で笑えただろう。


『夢猫館』それはとっても不思議なお店だった。結局あの出来事はなんだったのか。魔法をかけられたのかもしれないしもっと別の方法かもしれない。でもあんなふうに私も誰かを救ってみたい。まだどうすればあんなふうになれるかは分からない。だから旅に出てみることにします。いつの間にか消えていた『夢猫館』を探す旅へと。見つけた後どうするかなんてまだ決めてない。でもそれでもいいような気がするのは何故だろう。きっとあの出来事が起きた日と同じような春の穏やかな日だからだろうと私は思った。じゃあ行きますか。

「行ってきます。」

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