私の運命の人を探せ。

碧木 蓮

私の運命の人を探せ。

「はぁ……違った」

「美里、あまり大声を出さないでよ……恥ずかしいじゃん」

「え、そう?」


 私は美里、もうすぐ高校を卒業する。

 就職先は決まっているし、何も心配することはないと人は言う。

 でも、それは大きく間違っている。

 卒業するのに足りないものがあるからだ。

 それは、私の運命の人。

 その人が見つからないと、卒業式を迎えられないの!


「アナタノウンメイノヒトハ、モウスグアラワレマス」

「もうすぐって、いつですか?今日?明日?」

「ソツギョウシキマデニアラワレマス、ソレヲノガスト……コノサキ、アラワレナイデショウ」

「その人は、どんな人ですか」

「アエバワカリマス」


 当たると評判の『占い師の部屋』、卒業前の記念に友達の礼華と行ってみた。

 初めてで、すごくドキドキした。

 そして、その占い師の人に言わた事に衝撃を受けた。

 だって、私の運命の人がすぐ近くに現れると知ったから。

 しかも、会えばわかると。

 

 その日から私は探し始めた。

 私の運命の人を。



「……違う」

「……?」

「この人も違う」

「なんだあの女」


 道行く人を観察していても、私の運命の人を見つける事が出来ない。

 学校でもすれ違う男子を注意深く見ているけど、やっぱり見付からない。


 それを続けること、一ヶ月。

 卒業式まで、残り5日。

 このままでは私の運命の人と一生会えなくなってしまう。


「見付からない……」

「美里、そんなに落ち込まないで。占い師の言うことなんて、信じなくても大丈夫だって」

「だって、当たると評判の占い師だよ?それって、本当かもしれないじゃん」

「まぁ、それはそうかもしれないけど……」

「だから、諦めちゃダメなんだよ」

「美里!?」


 この時の私は、『運命の人を探す』という事で焦りが出ていた。

 それに、目標に向かって猪突猛進すれば見付かると信じていた。

 だから周りが見えていなかった。


 占い師の言葉の本当の意図を。


「美里、俺と付き合ってくれ。もうすぐ卒業だし、社会人になってもさ……美里に会いたいんだ」

「悟……ゴメン、無理」


 私は即答してしまった。

 せっかく告白してくれたのに。


 だって、運命の人なら会ったらわかるって。

 悟に会っても、不思議な感じはしなかったから……。


「そっか……」


 悟は、私に背をむけて去っていった。

 私も、悟に背をむけて教室へ向かっていった。


「美里、このままで本当に良いの?今ならまだ間に合うよ」

「……良いの」


 この時、悟を思い出して涙が流れた。

 何故だろう……。

 悟は運命の人じゃないのに……。


 運命の人に向かって、まっしぐらに走っているのに。


「美里、泣いてるのは何故?それは悟が好きだからでしょ?後悔している証拠でしょ?今なら引き返せる、悟を追いかけな」

「……礼華、ありがとう」


 運命の人、ごめんなさい。

 あなたにまっしぐらに向かっていたのに、Uターンして悟の所に向かいます。


「悟、待って!」

「美里どうした?」


 廊下を全速力で走って、校門の前で悟に追い付いた。

 良かった、悟に会えた。

 そう安堵した瞬間、私の気持ちが溢れ出した。


「私、卒業しても悟に会いたい」

「美里!?」


 これだったんだ、占い師の言葉の意味。

 会えばわかるって、こういう事だったんだ。

 自分の気持ちを知らずに、ただ探していたから会えなかったんだ。


「美里、大好きだ」

「私も、大好き」


 あれからもう5年が経った。


「美里、綺麗だ」

「悟も、格好いい」


 今から私達の結婚式。

 これからもずっと、私達は一緒だね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私の運命の人を探せ。 碧木 蓮 @ren-aoki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ