第18話 撃破
プスプスを黒い煙を出しながら活動を止めた黄金のゴーレム。
そしてその周囲を覆っていた鈍い鉄くずは、まるで地面に吸い込まれるように消えていく。
「やった」
『うん!』
シズルとイリスは笑顔を見せあうと、巨大ゴーレムと接近戦で対峙していた二人がこちらに向かってきた。
「さすがだなシズル」
「いいとこ持っていきやがって!」
「二人が抑えてくれてたおかげだけどね」
しかし、と思う。
あの巨大ゴーレムは間違いなく脅威的な力を持っていた。
意志があるのかわかならないが、少なくとも並みの魔物とは一線を画していたし、その厄介さは下手をすればフェンリル並みである。
もちろん巨大ゴーレムとフェンリル、この二体が戦えば後者が勝つだろうが、しかし普通の人間から見ればどちらも化物としか言いようがないだろう。
もしこの場にいたのがシズルたちではなく、普通の冒険者であったら――。
「いや、普通の冒険者だったら、そもそも最初のアイアンゴーレムで撤退してたかな」
あのゴーレムがこのダンジョンを守るために活動をしているのであれば、そこまで追い詰めたのは自分たちだ。
「……しかし、あれほどのものが出てくるとはな」
「とりあえず、これは一度ギルドにも報告が必要だよね」
「ああ。しかし、まだ第一層でしかないというのにこれでは、先が思いやられる」
直に戦ったローザリンデも、先ほどの巨大ゴーレムに脅威を感じているのか、少し声に緊張があった。
基本的にダンジョンは奥に行けば行くほど、その魔物や敵が強くなる。
これはダンジョンコアが己の身を守るための措置と言われているが、このあたりは人間の王族も同じようなことをするので理屈は通っているようにも感じた。
だが、とシズルは思う。
このダンジョンから生み出された魔物たちはともかく、あのゴーレムは明らかに人工的な匂いがするのだ。
もちろん、倒せばこのダンジョンに吸い込まれることから、なにかしらの関連性があるのは間違いないが、普通にダンジョンを跋扈する魔物たちとは、少し違うきもしていた。
『あ……』
そんなことを考えていると、イリスがそんな声を零す。
彼女の視線を辿って見ると、ゴールドゴーレムがゆっくりと動き出していた。
他のゴーレムみたいにダンジョンに吸収されないと思えば、どうやらまだ活動を停止していなかったらしい。信じられないほどの耐久力だ。
「おいシズル、あいつ逃げるぞ」
「……追いましょう」
まるで重傷者のように身体をひきづりながら奥の道に向かっていくゴールドゴーレム。
あれを仕留めるの簡単だが、こちらから逃げるよう進んでいくその先に興味があった。
「あのゴーレムたちが守ってた部屋。多分なにかあるよね」
「おお、これぞダンジョンの醍醐味ってやつだな」
「いいか、魔物やゴーレムがあれだけ必死に守ろうとしていたんだ。何があってもおかしくない。二人とも、油断するなよ」
四人はゆっくりと進むゴーレムを歩きながら追いかける。
大広場から奥に続く道は、ゴーレムが数体は通れる程度の広さがあった。
途中途中で分かれ道や横穴があるのはきっと、ここから魔物やゴーレムたちが現れたのだろう。
もしシズルたちにイリスがいなければ、この道を捜索するだけでも相当な時間がかかったに違いない。
だが、ゴールドゴーレムはこちらを気にする余裕がないのか、それとも気付くだけの機能が完全に壊れたのか、迷うことなく進んでいく。
そして、すこし長い道を進んでいくと、その先に小さな部屋。
ゴーレムがその部屋に入ったので追いかけると、そこだけ妙に人工的な部屋だった。
「書斎? いや、これは研究室か?」
「おいおいおい……こんなダンジョンの中にか?」
ローザリンデたちも驚いているが、シズルもまた驚きを隠せない。
部屋の中には本棚が壁一面に並び、テーブル、そして簡易のベッドなど、人間が住まうために必要なものが置かれている。
ところどころに古い紙や研究道具が散らばり、どうやらここの主はあまり整理整頓が出来ないタイプだったのだろう。
『あそこ……』
イリスが指さすと、ゴールドゴーレムが部屋の奥で蹲っていた。どうやら今度こそ活動を停止したのかと思っていると、少し身動きをする。
そしてそこには、まるで棺のような石でできた箱。
「あれは、なにかを守ってる?」
「どうするよシズル? とりあえず、ぶっ壊すか?」
「……そうですね」
迂闊に近づくのは危険だろうか、と思うがここまできてあのゴーレムが守っている物を確認しないわけにはいかないだろう。
「とりあえず、俺が行きますよ。イリス、なにかあったらサポートお願いね」
『うん、シズル気を付けて』
念のため『
どうやらもう、抵抗する力もないのかゴーレムは微動するだけで攻撃を仕掛けてくる様子はないので、守っているであろうそのなにかを見てみると――。
「え……?」
そこには、まだ五歳かそこらの幼い少年が眠っていた。
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