自分は嘘つき、そしてひきこもり
ゆうひ
生い立ち 魔法の言葉
私は昔から嘘つきだった。記憶にある。小学校一年生の時にはそうだった。一度熱があって休んだとき、家族の誰もが私を甘やかし、ゲームやアニメ、お菓子を与えそれが快感になった。私が体調を崩すと、周りにいる誰もが「大丈夫?」とか「おだいじにね」なんて優しいことを言う。「お腹が痛い」、「吐きそう」という言葉は魔法の呪文だと思っていた。
ところが魔法には限度があるようだった。一ヶ月も持たない。父は私の嘘に気づきはじめていた。そこで私は昔から気づいていた食べ物が逆流してくる性質を利用して、食べたものを吐いて見せた。その時は母もいて、折角作ってくれたものを吐くのはかなり罪悪感があった。それに母は嘔吐恐怖症で、目の前でパニックになったのも覚えている。それを見た父は困惑。効果抜群の攻撃だった。その時は腹の中では笑っているということもなく、ただただ、甘い汁を吸いたいばかりに残酷な手を使った自分に怯えた。金切り声を上げる母親のそばで両耳を塞いで呻いた。そして謝った。「お母さん、ごめんなさい、ごめんなさい、あーどうしよう」その日はそれで無事休めた。
それからというもの、「何故お前は学校に行かないのか」ということは今まで何度でも聞かれた。「行きたくない」そうとしか言わなかった。これは半分は本当だった。ずっと登校していなかったから、急に行っても同級生にどんな顔をされるか想像もつかなかない恐怖があった。
そんなある日校長先生が迎えにきて学校に連れて行かれた。白い高級車、遠慮して後ろの席に座った。校長先生は黙って運転する。およそ一ヶ月ぶりの見慣れた通学路を素早く通り抜ける。こういうことになってしまっては私も抵抗しなかった。学校についてまず、保健室に連れて行かれた。朝ごはん食べてないといったら、お菓子をくれると言ったので私はまた遠慮した。どうもお菓子というのはよくない。人からもらうのなどなおさらだ。見かねた保健室の先生は掛けてある時計を見て、
「五時間目は体育だから行っておいで。」
言われるがまま足は進む。覚悟をした。A君に
「ドッジボールやろ!」
って誘って貰えたのがきっかけで学校も悪くないと考えるようになった。自分には待っててくれる人がいる。そうして学校にも通えるようになった。自分の病巣は完全に消えた。そう思っていた。
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