人形列車 鉄亜鈴城7
「では、服も着替えた所で」
「ところで?」
「記念写真を取りましょう!」
「いえ~い!」
せっかく全員忍者になったので、記念に写真を撮っておかないと。
「それじゃあ、いくよー?」
シャンティの撮影システムを起動してから、皆で揃って決めポーズ!
――――パシャリ。
とフラッシュの光と共にシャッター音が響き、シャンティのメモリーに私達の思い出が刻まれました。
「サカリ忍軍、結成でござる~」
「なんだそれ?」
「たぶん全員の名前の最初の文字から1文字とってるのかと」
「ねえ、桜。忍者って何をするの?」
「――――えっと。何をするって言われても困るんですが」
忍術なんて使えないし、悪の忍者がいるわけでもないです。
さて、どうやって説明するべきか。
「忍者がやる事ならあるぞ?」
和希さんは「当然だろ?」みたいな表情で、忍者の格好でやる事に心当たりがあるみたいです。
「…………あれ? なんかあるんですか?」
「そもそも私はその為に、ここに来たからな」
「ふ~ん。そうなんで…………」
って、何だか凄く嫌な予感がします。
ここは話題を変えて、お団子屋さんに行くことにしないと。
「あの。それより今から、お団子を…………」
「えっ!? 忍者がやる事あるの!?」
「なっ!? ちょ、ちょっと待ってくだ――――」
「なんだ? 興味があるなら連れてってやるぞ?」
「いえ。別にそこまで―――――」
「もちろんあるわ! じゃあ次はそこにしゅっぱーつ!」
「ええっ!?」
私の進言も虚しく、意気投合した2人は次に行く場所をそそくさと決めてしまって、その場所へと向かって行きました。
「ほら、さくら~。早くしないと置いてっちゃうわよ~」
別に置いてって貰っても全然問題なかったのですが、流石に旅行先で1人で行動するのも寂しいので、私は渋々と2人についていく事に。
――――そして、数分後。
私は何故かアスレチックステージのスタート地点に立っていたのでした。
この施設の名前はTASUKE。
伝説のスーパー忍者タスケが、ここを使って修行をつんでいたとかいないとか言われている場所で、今では観光名所の1つになっているようです。
ガイドブックにも特集されていたのですが、運動系の施設には全く興味が無かったので読み飛ばしていました。
過去にテレビで見たりゲームでプレイした事はあるのですが、実際に自分がやった事なんて勿論1回も無く、最初のステージすらクリア出来る気がしません。
私がスタート地点から中々スタート出来ずにとどまっていると、エリア外から声援が聞こえてきました。
「さくら~、頑張れ~」
「最初のステージは簡単だから、気楽に行け~」
「どこがですか!?」
スタート地点からゴールまでの直線には木で作られた様々なアトラクションが設置してあって、挑戦者の行く手を遮ってきます。
下は全て池になっているので落下しても大怪我はしませんが、それでも高いところから落ちるのは怖い事に変わりありません。
ただ唯一私にとって助けになった事は、広場の後ろに大きなお城が建っていた事。
気持ちを城下町で忍術の練習をする忍者に切り替える事で、なんとか乗り切ってみせます!
私は忍者。私は忍者。私は忍者……………よしっ! これで行けるはずっ!
軽く深呼吸をしてからスタート地点に設置してあるボタンを押すと、ブザーの音と共にゲートが開き、制限時間のカウントダウンが始まりました。
「ま、まあとりあえず行ける所まで…………」
スタート地点から少し走ると早速最初のアトラクションがあり、50メートルくらいの池にいくつかのイカダが少し間隔を開けながら浮いている場所に到着しました。
「まずは、これをジャンプするんですね」
走るスピードを調整しながら、踏切から最初のイカダに向かってジャンプ!
ジャンプをする時は特に問題はありませんが、問題は着地する時です。
私がイカダに足をつけた瞬間。
バシャン。
と水しぶきを立てながらイカダの重心が少しだけ傾いて振り落とそうとしてくるのを、私は前に体重をかけて四つん這いになって倒れる事でなんとかイカダにとどまる事に成功しました。
ちなみにルール上では倒れても水に体の一部が触れなければ、失格にならないようになってます。
体が水に触れた瞬間にセンサーが反応して失格を告げるアラームがなる仕掛けになっていて、現在アラームは鳴っていないのでセーフみたいです。
忍者の里の割には、アスレチックが最新のセンサーで管理されているのはどうなんだろう?
みたいな感想は考えない様にしておきましょう。
雰囲気も大事ですが、安全も大事ですからね。
イカダの揺れが収まったのを確認してから、そのまま次のイカダに向かってジャンプ!
最初のアトラクションだからなのか難易度的にはそこまで難しくは無く、少し時間を使えば特に危なげない感じでクリアする事が出来ました。
「まだまだ、これからだぞ~!」
「ご~ご~!」
2人の声援を聞きながら、私は次のアトラクションへと走ります。
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