人形列車 鉄亜鈴城4
というわけで、しばらくリニスと2人で行動する事になりました。
「あら? あなた達も今からお出かけなのかしら?」
途方に暮れている私達の後ろから、列車から降りてきた人物が話しかけて来たので振り向くと、水色のフリフリのドレスに大きな赤いリボンを頭につけた、すまし顔の女の子がやってきました。
「おや? マリアさん、おはようございます。私達はこれから羊羹を食べに行くんですが、マリアさんもどこかに行くんですか?」
「ええそうよ。マリアも何か甘い物を食べに行こうかと思ってたんだけど。…………そうね、桜達と一緒に羊羹を食べに行くのも面白いかも。ねえ、良かったらマリアもご一緒してもいいかしら?」
「はい。では一緒に行きましょう。リニスもいいですか?」
「別にいいわよ。人数が多い方が色んな種類を楽しめるし」
「…………そっちが目的ですか」
と言うわけで。
私達は今から3人で行動する事になっちゃいました。
「じゃーーん。ようかん団、誕生です!」
「いえーい!」
みたいな感じで3人でポーズを取ったりなんかしちゃったりしながら、仲良く道をすすんでいると、マリアさんがリニスの顔を見ながら何か思う事があったみたいで、話かけました。
「それにしても貴方って凄く整ったかわいい顔をしてるのね。フフ、まるでお人形さんみたい」
みたいと言うか本物のお人形さんなんですが…………。
ちなみに、そう言ってるマリアさんもかなり美人さんな感じです。
「そうでしょ。そうでしょ。ふふん、好きなだけ褒めてもいいわよ」
リニスはかなり上機嫌な様子で、ステップがちょっとだけ軽やかになりました。
人形は可愛いって言われるのが仕事みたいな感じなので、可愛いと言われる事が人よりも特別な意味を持ってるのかもしれません。
「う~ん。なんとかしてお持ち帰り出来ないかしら」
「毎日甘いもの食べさせてくれるなら良いわよ」
「流石にちょろすぎます!?」
後で甘いものに釣られてどこかに行かないように注意しとかないと。
「なーんてね、冗談よ。貴方が本物のお人形なら良かったんだけど」
びくっ。
流石に気付かれて無いですよね?
「マリアさんは人形が好きなんですか?」
「そうよ。マリアはお人形を集めるのが好きなの。マリアのお部屋は色んな種類のお人形がたーっくさんあるんだから」
「そうなんだ。ちょっと見てみたいかも」
「だったら今度見に来てみる? あなた達ならマリアのパーティに来ても絶対に楽しめると思うわ」
「いいんですか? ちょっと今はやる事があるのですぐには行けませんが、機会があったら絶対に行きます!」
「フフ。じゃあその時を楽しみに待ってるわ」
マリアさんは楽しそうに笑い、いつかパーティに行く約束をした所でちょうど私達の目的地である「忍者ようかん」と書かれたのぼり旗が見えてきました。
のぼり旗の横にある木造の建物の前には、買った後にすぐ食べる事が出来るようにテーブルと椅子が置かれたスペースがあります。
日除けと雨対策の為の大きめの傘もテーブルの横に立っているので、雨の日に雨音を聞きながら食事を楽しむことも出来そうです。
「おじゃましま~す」
笑顔で先陣を切って扉を開けてお店の中に入っていったリニスに続いて、私とマリアさんもお店に入って行きます。
「いらっしゃいでござる」
お店に入ると、さっそく忍び装束に身を包んだ店員さんがお出迎えです。
望さんがいたら凄く喜ぶシチュエーションでしたが、多分あっちはあっちで楽しんでると思います。
「わ~。ござる、ござるぅ~。ねえ桜、ござるって何?」
「ござるは方言の1つですね。この辺は忍者が多いのでござるを使う人が多いんだと思います」
「へ~。そんなんで、ござるかぁ~」
「そうなんです。でござる」
さてと。
ござるも堪能したので、次はメインの羊羹を堪能しないと。
ショーケースにはいろんな羊羹が並んでいて、どれも凄く美味しそうです。
全部食べたいですが、流石にそんな事をしたらお腹が大変な事になってしまいますし、お財布ももっと大変な事に。
とりあえず1個だけ注文するとしたら…………。
「すみません。このお店で一番売れてるのを1個ください」
「一番でござるか? だったらこの忍者羊羹でござるな」
「では、それでお願いします。ちなみに忍者羊羹って何が入ってるんですか?」
「忍者でござる」
「ええっ!?」
ニ、ニンジャ?
もしかして忍法小人化の術を使った忍者さんがこの中に!?
…………って、流石にそんな事あるわけ無いですね。
気になりすぎるので、これは是非とも食べて確かめないといけません。
「あっ!? 私はこれがいいかも」
リニスが選んだのは栗羊羹です。
パット見でもわかるくらい大き目の栗が沢山入ってて、栗だけでも満足出来そうな感じがします。
「では、お会計をお願いするでござる」
「お会計? 桜ぁ~」
そう言えばリニスはお金を持って無かったんでした…………。
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