人形列車 雪菓子の律4
「あのっ! どうかしたんですか?」
「ちょっと、空調が壊れちゃったみたいなんだ。―――――けど、安心していいよ。すぐに代わりのが…………」
「おるか~?」
「おっと、丁度来たみたいだ。すぐに直すから待っててね」
そう言ってスタッフの人は宅配のお兄さんが持ってきたパーツを受け取って、運営本部の隣にある空調システムの壊れた部品と交換したのですが…………。
「会長! 駄目です、機械は直ったんですがエネルギーが足りません!?」
「よし! だったらすぐに補充だ!」
スタッフの人が空調システムにエネルギーを補充する為に使う機械を台車に乗せて持ってきて接続すると、軽快な音楽と共に画面に楽譜のような物が表示されたのでした。
「会長、大丈夫なんですか?」
「今はプロゲーマーがいないんだし、私がやるしか無いだろう?」
「わかりました、お願いします!」
会長さんはエネルギー補充開始のボタンを押してゲームを始めたのですが…………。
「ぐはっ!? わ、私では難しくて無理だっ」
と、始まった瞬間にミスを連発してしまい、上手く補充出来なかったエネルギーが会長に直撃して吹き飛ばされちゃいました。
「か、会長!?」
「…………き、君。プロゲーマーの到着はまだかね?」
「流石に急だったみたいで、到着にはまだちょっとかかるみたいです。…………やっぱり中止にした方がよくないですか?」
「仕方ない。お客さんに怪我があっては大変だし、少し早いが今回は終わりに―――――」
「ま、待ってくださいっ!!!!」
私は会長さん達の元へと駆け出しました。
「だ、誰だね君は?」
「私にやらせてください! 絶対に成功させてみせます!」
「このゲームをやった事はあるのかい?」
「はいっ、1つ前のバージョンですが、SSランクまでは取った事があります!」
「会長!」
「し、しかしお客さんにやらせる訳には…………」
「大丈夫です!!!!」
私は必死になって会長さんにお願いすると、何とか熱意が伝わったようで。
「わかった。だが1台でエネルギー補充をするとなると失敗した時の負担が大きいから、3台に分けてやるんだ。確か予備の機械があったはずだね?」
「はい。すぐに持ってきます!」
スタッフの人が倉庫へと走り、すぐに持ってきた追加の2台が空調システムに接続されました。
「だが、あいにくとここにいるスタッフは全員ゲームが得意では無いんだ。せめて少しでもゲームが出来る人物がいれば…………」
「じゃあ1個は望がやるよ!」
望さんが名乗りを上げ3台ある機械のうちの1台の前に立ちました。
望さんは独特のリズム感を持っていて、それと楽曲がピタリとハマれば高得点を連発する事が出来ます。
…………まあピタリと合わなかった場合は散々な事になるのですが、今回はそうならないよう祈るのみっ!
「だったらもう1個は私がやる!」
最後の1台はリニスが名乗りを上げました。
芸術性の高い人形なので、音楽にも精通している……………はずっ!
てか、他に適当な人もいないですし、今はこれがベストメンバーです!
全員が配置につき、ゲームのスタンバイ画面を開きました。
私が担当するゲームは大工の鉄人。
どんどん流れてくる釘や木材にあった大工道具を選択して音を出すゲームです。
重要なのはトンカチで手を叩かない事。
間違えて手を叩いちゃったら痛くてしばらくゲームができなくなっちゃいます。
「さあ! やーるよおおおおおおお!」
気合じゅうぶんの望さんが担当するのはダイゴの達人。
ダイゴになりきってカッコいいポーズをタイミングよく取るゲームです。
ポーズの判定はゲーム機の前に付いているミニカメラが行うのですが、カメラ自体の性能があまり良いとはいえず、ちょっと大げさ気味にしないと判定されない事もあるのですが、元気いっぱいな望さんなら多分必要以上にポーズを取ってくれるはず。
「えっと。こ、これでいいの?」
リニスが担当するのはポップコーン・ミュージアム。
楽譜に合わせてとうもろこしをフライパンに入れてポップコーンを作るゲームです。
これはたまに出てくるキャラメルを組み合わせて得点をアップさせるのが特徴ですね。
「―――――では。行きますっ!」
私達はお祭りを終わらせない為に一斉にゲームを起動しました。
みんな楽しみにしてたのに、機械の故障で終わらせちゃったら駄目です。
それに、このままだとプリンの屋台も行けなくなっちゃいますから!!!!
「やっ! えいっ!」
一応それなりにやってたゲームなので、私はそこそこ良いスコアを叩き出せています。
「ていやー! とりゃー!! ウォーーーッシュ!」
望さんもキレキレのポーズを披露しています。
「えっと…………これなら! ――――そ、そっち!?」
予想外だったのは、初プレイのリニスが結構上手かった事です。
ただの食いしん坊人形じゃないみたいですね。
――――そんな訳で楽曲も終盤になり順調に終わると思いきや。なんとここで事件が。
「あ。あれっ!? タイミングが!?」
そう。
最初は特に気にならなかったのですが、後半になり音楽も楽譜も激しくなって来たので、他のゲームと音が混ざってしまい、タイミングがちょっとずれてしまうのでした。
「あ、あれっ!? ちょっと…………。違うっ!?」
そのまま後半がグダグダになったままゲームは終了し、規定ポイントに届かなかったようで………。
「はううっ!?」
「うぎゃあ!?」
「きゃあっ!?」
溢れたエネルギーが私達の体を軽い電気ショックくらいの衝撃で突き抜けていきました。
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