第5話・黒く渦巻く驚異
アースラの指示で
「はあっ、今回も上手く行かなかったなあ、このままじゃ師匠に見捨てられちゃうかも……」
アースラの修行を受け始めてから4ヶ月間、出される課題をある程度そつなくこなしていたシャロだったが、今回はかなり苦戦をしていた。それがシャロの中で不安や焦りとなり、いつも明るいその表情を暗く沈ませていた。
――ううん、ここで弱気になっちゃダメ、これは私が強くなるために必要なことなんだから。よーし、頑張るぞー!
誰も居ない森の中、シャロは自分を奮い立たせるため両手で軽く頬を叩いた。
――それにしても、ちょっと様子がおかしいんだよね。
森の奥へ進み始めてしばらく経つが、その間にシャロが見かけた動物は1匹も居ない。狩猟の森での狩りが初めてではないシャロにとって、この状況は不気味でしょうがなかった。
――あちこちに動物の気配は感じるのに、どうしてこんなに静かなんだろう。
経験の無い静けさを前にシャロは体を強ばらせ、周囲を警戒しながら歩を進めていた。すると突然、立ち並ぶ木々から鳥たちが一斉に飛び立ち、それに続くように隠れていた陸上動物たちが一斉に森の外へ向かい始めた。
「な、なに!?」
突然の事態に困惑の表情を浮かべつつも、近くの木に素早く身を隠して周囲に視線を飛ばし、その原因を探し始めた。
しばらく様子を見ながら多くの動物たちが逃げて来た方を見据えると、その更に奥の暗い所から1頭の巨大な黒い何かがゆらりと歩きながら姿を現した。
――スクローファ? でもそれにしては大きすぎる。
現れた四足歩行の鋭い二本牙が生えた黒い何かは、見た目の形こそスクローファそのものだったが、シャロが見たことのある大型スクローファの5倍以上は大きく、その姿を目にしたシャロは思わず驚き戸惑ってしまった。
しかし驚きつつも対象を観察し続けていたシャロは、それがとんでもない奴であることに気づいた。なぜならその黒い何かは禍々しいまでの不気味な雰囲気を漂わせながら、暗く湿った黒の
――全身から溢れ出る黒の瘴気、あれが師匠の言ってた魔獣だとしたら。
自分が見ている黒い何かが魔獣だと気づいたシャロは、一目散に森の外へ向かって走り始めた。するとその動きに気づいた魔獣は途端に動きを速め、シャロの後を追い駆け始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます