殺したい。でも、それ以上に
せんぽー
復讐を終えたいの
艶やかな茶色の髪。琥珀のように透明な黄色の瞳。嫌なほど私の愛した人に似ている。
少女は目の前にいる年下の少年を殺そうと思っていた。すでに彼の両親は少女の手で殺している。
「君は……誰?」
部屋の奥で呆然として突っ立っている少年は無垢な瞳で金髪の少女を見ていた。その部屋は小さな少年にはあまりにも広すぎる。これが侯爵家の子息なのか。
少女は返り血がついてしまっていたので服は着替えていた。そのためか少年はまだ自分の両親が殺されたなんて思っていないようだ。
少女の名前はレミア・マックレガー。これは今の名前。彼女は前世の記憶があった。前世での名前はオフィーリア。
オフィーリアは少年の父親の愛人であった。オフィーリアは愛していたその人に裏切られ、死んだ。しかし、死んだオフィーリアは魔導士の血を持つ少女レミアに生まれ変わり、復讐のため裏切った憎き彼と彼を奪った女を先ほど殺した。
だから、目の前にいる少年も殺したい。裏切った彼の子どもなんて目にしたくない。
消えてしまえ。
レミアは氷魔法で剣を作り右手で握る。
目の前にいる少年は憎いほど可愛くて自分の子どもだったらと考えてしまい、右手が動かない。
殺したいのに……。
窓から差し込む光に照らされる少年の髪は輝いていた。彼の姿は神々しく、天使を連想させた。
「君は……」
少年はそっと呟く。後半はなんて言っているか分からなかった。
「エヴァンズ様! お逃げください!」
すると、遠くの方から声が聞こえてきた。
……もう人が来たのね。捕まるのも時間次第だわ。
でも……。
レミアは少年に向かって走り出す。そして、自分よりちっさい少年を抱え、自分よりもずっと大きい窓を左手で豪快に開ける。
「ちょっ、何を!」
少年はレミアに何か言っていたが、今はそれどころではなかった。
レミアは右足を窓枠に掛ける。
「逃げるよ」
すると、レミアの背中から白い翼が現れる。彼女のゴールドの髪がなびく姿はまるで天使。白い羽がひらひらと数枚落ちていく。
翼を広げたレミアは少年エヴァンズとともに空を飛び部屋から去っていった。
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