猫な彼女とデート前

@山氏

猫な彼女とデート前

「啓人、起きて」

 肩を揺すられる感覚で目が覚める。目を開けると、ベッドに身を乗り出して咲弥が俺の肩を揺すっていた。

「ん、おはよう……」

「今日、デートするって言ってたのに……」

 不機嫌そうに咲弥は俺を見る。俺は体を起こして枕元に置いてあった携帯を取ると、時間を確認した。

「まだ約束の時間まで結構あるよ?」

「早く行きたい」

「じゃあ、着替えるからちょっと待ってて」

 頭を撫でると、咲弥は嬉しそうに頷いて部屋から出ていった。

 俺はクローゼットを開けて服を取り出し、寝間着から着替える。

「おまたせ」

 寝間着を小脇に抱えながらリビングに出ると、咲弥はキッチンに立っており、お湯を沸かしているようだった。

「ありがと、咲弥」

 声だけかけて、洗濯籠に寝間着を入れてから咲弥の方に向かう。

「あとはやるから、座ってていいよ」

「ん」

 咲弥は俺の前を抜けて炬燵に座った。

 火を止め、コーヒーとココアを作るために用意してあったマグカップにお湯を注いでいく。そして粉が固まらないようにスプーンでココアの方をかきまぜた。

 マグカップを机の上に運ぶと、咲弥の横に腰を下ろす。

「ありがと」

 言いながら咲弥はマグカップを両手で持つと、ふうふうと息を吹きかけてから口を付けた。俺もコーヒーを一口飲む。

「ちょっと早いけど、飲んだら出よっか」

「うん」

 咲弥は幸せそうにココアを飲み、俺はそれを眺めながらコーヒーを飲んだ。

 ほぼ同時に飲み終えると、俺は咲弥からマグカップを受け取ってキッチンの方に運んだ。咲弥は立ち上がって、急ぎ足で部屋の方に向かう。

 俺がマグカップを洗っていると、後ろからバタバタと忙しない足音が近づいてくる。

「啓人、早く」

 すでに咲弥はコートを着ており、俺のコートを抱えて持ってきた。俺は洗い終えたマグカップを片付けて、コートを受け取る。

「ありがと」

 俺がコートを着ると、咲弥は腕を絡ませてぐいぐい引っ張って家を出た。

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