第80話 悲恋の最終章⑰瀬戸際の決断 そして!

しばらく、沈黙がありました。


由紀子の置手紙と日記で激しく混乱していました。


あの・・・貴方の名前に私の名前を重ねてみたの!


何度も聞いているのですが、改めてこの言葉の重さを


かみしめています。「ね・・・貴方・・・そんなに感動して


しまったの?まったく・・・なんか浮かない顔して何を考えてるの?


ね・・・つまんないじゃない・・・病気の事、心配してるの?


それとも私をもう1度、心底惚れ直してしまって言葉がでないの?


ね・・・ちゃんとしなさいよ・・・貴方の目の前にいる女性は誰ですか?・・・」


彼女は俺の深層心理というか心の中を読むのが非常に得意です。


少しの変化も見逃さない洞察力というか天性ひらめきみたいなものを


感じます。「う・・・ん・・・俺の目の前にいるの・・・由紀子・・・


でもどうしても解決してゆかなきゃならない事あるよね・・・好きでも


仕方のない決断というか・・・うまく話せないけど、正直、心が揺れ動くんだ・・・


俺は岩手に行けない・・・親を捨てれない・・・由紀子の親父さんを完全に


裏切ってしまったんだ・・・就職も日本橋に決まったし・・・もう引き返す


ことできない・・・由紀子はあと1年大学があるから・・・ある意味モラトリアム・・・


俺は甘ちゃんな学生生活を終わり、社会人として生きていかなければならない・・・


好きでも仕方ないことあるよね・・・由紀子にもそんな思いがあるからこの1か月すれ違いの連続・・・少しでもそうした心のモヤモヤが晴れないから、距離を置きたがる・・・


男も女もそのへんは同じだと思う・・・現実逃避というかどうしても目をそむけてしまう・・・


逢えない時間がたくさん増えれば、お互いにあれこれ思い悩む・・・・そして1つ答えが出ていて、どうにもならない事・・・自分の力では解決さえできない・・・瀬戸際の恋物語・・・


俺が長男でなければ・・・由紀子が長女でなければ・・・赤い糸がぐちゃぐちゃにもつれてほどけないんだ・・・でも答えはでてる・・・そうだよね・・・由紀子の意見も聞きたい・・・」


「そーね・・・・貴方が思うより私のほうが数倍考えていたの・・・貴方は私との時間を減らすために煉瓦亭のバイトはじめてたでしょ・・・その時・・・ピーンときたの・・・距離を置きたいんだ・・・悔しかった・・・悲しかった・・・でもどうにも我慢できないで、2度新丸子に行ったわ・・・

 なんか偵察みたいなキモチもあったの・・・何してるのかな?部屋の中を見れば大体の見当はつくものよ・・・相変わらず綺麗だったから安心したのも事実・・・でも暁子さんのことも事実・・・

 私の中では暁子さんは関係ないから心配しないで・・・貴方が言うとうり・・・岩手はないよね!・・・

 あるとすれば私が山梨というかお嫁に行かせてもらえれば晴れて一件落着なんだ・・・そんな事は私自身が一番考えているの・・・どうすればお父さんを説得できるかってね・・・お母さんは少しだけ風向きが変わって、そんなに好きだったら里中君のお嫁さんになっちゃえば!なんか・・・

 追及しなかったけど、お婿さんじゃなくてお嫁さんなんていう話が出てきたから唯一の救いなんだ!

 でもお父さんの牙城を崩すのはしんどいわね・・・正直・・・大きな壁なの・・・これを乗り越えられれば、ハッピーエンドになるの・・・でも道のりは険しいわね・・・私もお父さんには逆らえない・・・」


由紀子のトーンダウンを感じました。彼女も俺以上に悩んでるいるんだ・・・戦場の闘士・・・同期のサクラ


このモヤモヤした気持ちを何とかしたい・・・でも答えは出てる・・・岩手の親父さんは駄目だと・・・嫁は絶対駄目・・・男のケジメを裏切ったおまえにはやらん・・・とてもお嫁にだすなんて思えない・・・しばらく沈黙が続きます。


「ね・・・貴方・・・そんなしょぼくれた顔してたって仕方ないでしょ・・・すぐには答えが出ないもんね・・・貴方・・・今夜を泊まってゆくからね・・・お泊りSETもないけど・・・良いわね・・・」


機転がきくのです。袋小路に追い詰められたけど・・・この「すぐには答えでないもんね!」・・・救われました。



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