9月の雨

里中 秋

第1話 9月の雨 プロローグ

   9月の雨になりました。

 昨日は34,8度、今日は24度前後の気温です。

 1日で10度も気温が違うと・・・なんか調子が狂います。


  雨のせいで・・・蝉たちの声もぱったりと止んでいます。

「9月の雨」が気になります。


1977年太田 裕美がリリースした名曲です。

昭和52年 大学1年生でした。入学、早々

同じ下宿の女子学生と仲良くなり、夏休みはそれぞれの

郷里へ帰省・彼女は岩手・・・俺は山梨・・・前期の試験が終了して

一足早く彼女が帰省・・・7月の・・・下旬だったと記憶しています。

見送りに上野駅まで・・・


上野駅の低いホーム・・・13:00発東北本線「やまびこ」5号

 盛岡行き・・・発車のベルに背中を押され、デッキに消えて行きました。

何を 話したかは記憶が失せています。ただ、涙を流して

いた彼女の表情を今でも、ボンヤリと思い出せます。

5月に出会い、それからは時間が許せる限り、一緒にいたので

別れが、お互いに辛くて・・・そんな感傷のシーンだったと思います。

時間が流れ9月に・・・後期の授業開始が9月20日過ぎでした。

3日早く上京した、彼女と渋谷、ハチ公前で待ち合わせ

行きつけの道玄坂・炉端焼「北海」で再会の祝杯をあげました。

それぞれの「夏休みの思い出話」を披露・・・飲むほどに

陽気に饒舌になります。4時間があっという間に過ぎ、閉店時間

です。


あいにく、外は雨でした。

持ち合わせの傘も無く、仕方なく、タクシーに乗りこみました。

僅かな道のりですが、駅に向かうタクシーの行列です。

しなだれかかる彼女の肩を抱きながら、沈黙の時間が流れます。

2ヶ月の空白を埋めるように、そんな余韻を楽しんでいます。

柑橘系の香りがします。そう・・・お気に入りの彼女の香りでした。

7月に別れたときも、同じ香りです。その時彼女がぽつり

「何も、変わってないよ・・・2ヶ月が長かった!」

タクシーのラジオから・・・

 太田 裕美「9月の雨」が流れて

います。


 September rain rain

九月の雨は冷たくて

 September rain rain

想い出にさえ沁みている

 愛はこんなに辛いものなら

私ひとりで生きていけない

 September rain

九月の雨は冷たくて


彼女が「私・・・この曲がとても好きなの!」・・・

43年過ぎた今でも・・・心に残る思い出の曲です。



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