ミクロコスモス

大路まりさ

太陽


お日様の光が、母親の病室に差し込んでいた。


それから、兄弟たちの名前に関連付けて付けられた俺の名前は俺の宝物だった。


誰かを照らして、暖かな日差し浴びせられるように。

お日様がなければ、花も木も草も育たない。恵の光になれますように。


それが俺の名前「太陽」


5人兄弟の末っ子の俺は、3人の兄と1人の姉に大事にされて、時に厳しく時に優しくされて育ってきた。

だからその環境が当たり前で、その姿を見ながら成長してきた。


だからさ、お前がそんなに寂しい思いをしてきたことを俺は知らなかったんだ。


お前は、俺が思っているよりも日の当たらない場所にいたんだな。

周りから見たお前は、明るい場所にいるように見えたのに。


なんだか冷えるな。

どんよりとしている。

なんだろう、真っ暗ではない。

グレーっぽい感じ。くすんでいる。


俺はお前が知りたい。

お前は本当はそんなんじゃないだろ?


沢山の人に囲まれて人気者のお前は、花のようだった。

でも綺麗で色鮮やかな、誰からも好かれているお前の心に、一輪だって花が咲いてないじゃんか。


今にも枯れてしまいそうだ。

お前には、お日様が当たってないんだ。


明るく振舞ったって、元気なふりをしたって、陽の光が当たらなければ花は萎んじゃうだろ。


お前に近づきたい。

それで、俺が照らしてもいいか?陽の光を。


俺が陽の光であたためてやるから。

お前が寒くないように。

花が枯れないように。


俺が明るくする。


少しずつ、少しずつ無理やりにとは言わないから。


本当のお前が、見られるように。


それが俺の役目になりたいんだ。

俺は「太陽」だから。

名前の通りになりたいんだ。







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