174話【魔王の朝】
◇魔王の朝◇
【ランデルング】の窓ガラスから差し込む朝日に、フィルヴィーネ・サタナキアは顔を
「――これが《人間界》の朝か……」
周りはまだ寝ている。
エドガーは
メルティナは背中に《石》があるからか、一人うつ伏せで寝ていたが、
まるで悪い夢でも見ているようにうなされている。
「ん……?ロザリームが居ぬな……」
フィルヴィーネはまだ知らない事だが、ローザは寝起き
そのローザがこのメンバーの中で、一番に起きていること。
それはエドガー達が起きていれば、
「……外か」
《石》の気配を
「おっ……リザ、お前は
自分の胸の
足を
「……全く、しょうのない」
フィルヴィーネは、その顔に
◇
寒さを
ローザは、
「……さむ」
まだ回復していない魔力では、体温の
普段の
「おかしいでしょこの寒さ。
知らない訳ではない。知っていても
ローザは昨日の
「火よ……」
一言
それでもローザは「この程度か」と、まだ不完全な魔力の回復に
すると、誰かが起きて来たのか、装甲車の二重ドアが重々しく開き。
髪をぼさぼさにしたフィルヴィーネが降りて来た。
「……
右手の《石》をツンツンと差して、体調=《石》だと分かる。
フィルヴィーネはローザの隣まで来て
「――平気よ。
「む……?そうか、慣れていぬからだな……この再構成された身体に慣れるには、
“神”や“魔王”の身体は、そもそも人間の身体とは
疲れはしないし、眠くもならなければ腹が減る事のない不変の存在だ。
そんな身体を持つはずのフィルヴィーネが、
そしてそれに一番
「まさか人間の身体を
しかし、この世界に合わせて身体を作り変えられるとは夢にも思っていなかった。
「――だがまぁ、腹が減ることはいい事だな。“悪魔”の部下どもが人間の
「わ、私に同意を求めないでよ……」
ジト目で、ローザはフィルヴィーネを
そんな訳あるまい。
「そうか?」
「当たり前でしょう?人間を食うなんて……“悪魔”か魔物しかしないわよ」
「そ、そうなのか……良かった、食べなくて……」
以前部下に進められたことを思い出して、
あったらあったで
「……だいぶ
「おお、何かあるのか!?」
「――いやないけど」
「
「……」
「ロザリーム?」
ローザは別に嫌味で言ったのではなかった。
先程、少し辺りを
それは
そこで不思議に思う事が、この国の民たちがそれを知らない事だった。
王女のローマリアですら「もしかしたら」と、
「……確かに初めから、荒野になっている可能性がある。と言っていたけれど……ここまで何もないとね。不思議に思わないのかしら」
「この国の者どもが……か?」
「――ええ。エドガー達が住む王都は、結構な広さを持っているわ……それも区画を10に分けて、その区画一つ一つが中程度の街並みに大きいのだから……人の出入りが多くないとおかしいでしょう?」
パチンッ――!と
ローザは知らない。【王都リドチュア】以外の街や村を。
聞いてもいないのだから当然と言えば当然だが、他の国はどうだ。
「私が居た時代の【ブラストリア王国】は……
【王都リドチュア】が【ブラストリア王国】の首都と同じ位置だとすればの話だが、ローマリア王女が言う事は
そうなれば、ローザが知っている事の一つでもあれば、それは確かな
「――決定的なものは無いわ……単に
変わりすぎている世界。
「……【ビコン】であろう?」
「……あ」
そんな所に、事実。ローマリアが
【ビコン】は
ローザも知っている、王国の森に生息していた
昨日の昼に会話した事を思い出して、ローザは
まさかこれだけ探しているのも
「……
「そもそも、“魔道具”の数々があるであろう……」
「それは……そうかもしれないけれど。でも、サクヤとサクラの世界にも同じ“魔道具”……宝石があるのよ?」
それはどう説明するのか。
「――それは
「
「知らぬことをアレコレ考えても意味はない……理解できる事を少しずつ組み合わせ、
「……」
理解出来る事。分かる事は、まだ本当に少ない。
少しずつ、一歩一歩確かに進んで、その先にある答えとは――いったい何なのだろうか。
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