間話【暗闇に咲く花/暗闇を持つ花/巡り会う黒白】
◇
小さな島国。――【ヒノモト】。
その【ミカワノクニ】と言う場所で、わたし
庭の池で、
長い黒髪を後ろ手で
その目は黒く、
しかし左眼だけが、黒の中に光を持ち、まるで《宝石》のような存在感を持ち、
わたしはこれから、
最後に、屋敷の中を見て回っていたのだが。
「
「――はい、兄上」
幼き頃から、シノビとしての
そんなシノビの人生を、本当は送りたかった。
わたしには、この国でも
――通称【魔眼】。
いつ自分が殺されるのかと、父上はこの力に
そうして
父上や兄弟姉妹に《
肩身の
そして今日、
何の歴史もなく、わたしのシノビとしての人生は終わったかと思われた。
わたしは、
左眼が不意に
わたしはその人物に、目を奪われたのだ。
赤毛の女性と戦う、少年。
炎に焼かれそうになるのを、何度も剣で辛うじて防ぎ、命を
正直言って、全然
――ただ。
幼い頃から、自分を
そして、少年が反撃の
その後、少年は黒く光る陣の前に立ち、何かを
わたしはそれを、自分に言われた気がして、いつの間にか返事をしていた。
「――か、構わないっ!わたしを、ここから連れ出してっ!!」
もしこの少年が、わたしの
この身を投げ打ってでも――彼を守ると
「ナンジノナヲノベヨ」
誰もいないはずの空間から聞こえる、不思議な声にわたしは。
「
黒い影に
どんどん意識が
わたし、
◇
小さな島国。――【日本】。
その【愛知県】と言う場所で、あたし、
子供の時から優秀で、欠点の無い子供。
親に
小学生では、六年間無遅刻無欠席。
中学生では、学校の優秀生として
それは高校生になっても同じで、あたしは優等生を
二年生になって、今年も変わらずに優等生を演じるのかと思った。
――そんな時。
『A組の
あたしに
『えー、マジで?学年一位も、やることやってんのねWW』
『
そんな
生活指導員の先生が
『
体育の
この男に目をつけられてから、あたしは、自分を
『なあ
あたしは「はぁ……」と答えるしかなかった。
こんなバカみたいな
そう考えていたのは、確かに甘かったのかもしれない。
ある日、この男にまた呼び出されて。
『だから、な?
鼻息荒く、あたしに近付く
左手で強く肩を
テキパキと三つボタンが開き、白い下着が見える。
『……へぇ、援交してる割には、
その言葉に、あたしはキレた。
――ドグシャ!!
『――ぐぁぁあっん、ぐぅぅ!!な、何をぉぉ』
大股で
我慢すれば
不思議と、涙が
最初から、決めつけであたしを狙っていたんだろう。
『任せろ』。だなんて言われてからも、
身体が目当てであたしを助けるフリをしていたんだって、心の中では分かっていた。
でも怖かった。冷静でも、優秀でも、演技がうまくても、あたしは一人の女の子だった。
制服を乱したまま
教室に置いたままの
それにきっと明日には、
帰宅して、あたしは暗い自分の部屋でおでこに
別に熱があるわけじゃない。
うっすらと、前髪に隠れて見えないが傷がある。
子供の頃に、人形のような自分を
――傷だ。
『……なんであんたは子供らしくできないのよっ!!』
いい子にしようと、
まさしく人形のような子供。周囲の人から見られた評価だ。
母は周りからの評価を過度に心配する
だからこそいい子でいようと心掛けて、遊びも甘えもしなかった。
それが、母には苦痛だったらしい。
普通の家族。遊んで、
あたしには、それが出来なかった。
ふと、
二人の女が、一人の男を取り合っている光景だった。
「な、なにこれ、バカらし……疲れてるんだ、きっと」
思わず出た言葉だったが、もう一度
赤い髪の女性が茶髪の少年に抱きつき、頭を
もう一人、金髪の少女はそれに反発して、赤い髪の女性を引き
一方で少年はというと、抱きつかれて赤くなったり、金髪の少女をみて青ざめたりと表情が忙しい。
「……ふふっ。なんなの?」
ふと、自分が笑っている事に気が付き、ショックを受ける。
これだけ長い年月、いい子の皮をかぶり続けていたのに、こんなくだらない事に笑っている。
「なんで……」
そして、少年に近付く二つの影。
――あれは、あたしだ。
そこにいるあたしは笑顔で彼女達の輪に入り、赤い髪の女性と金髪の少女、そして茶髪の少年に「これからよろしくっ」と声をかけた。
気になったのは――あたしが
「――ちょっ!なんであたしが!?二人!?」
髪型は違えど、顔は同じ。
ポニーテールのもう一人のあたしは、赤髪の女性に
「――なっ、何してんのよっ!?」
あたしは驚いて、立ち上がって叫ぶ。
――そして。
「ナンジノナヲノべヨ」
突然聞こえる声に、あたしは反射的に
「はぁ!?名前……?誰よっ、どこにいるのっ!?」
機械のような
「ナヲノべヨ」
イラっとしたあたしは、つい。
「
そして、真っ白い光に包まれて――部屋から居なくなった。
◇
「――な、何っ?何なのよぉ!誰よさっきの声……出てこーいっ!!」
そんな
「――そんなはしたない声を出すものではないぞ。そなたも【ヒノモト】の
「――っ!だ、誰よっ!?」
その顔は少し
「……はぁっ!?」
「――な、なんとっ!?」
同じ顔の少女が、異空間で出会った。
「コレハ……ドウシタモノカ……」
機械的な音声に、不思議と
「なんだお主!
「――こ、こっちのセリフなんだけど……!」
二人は、プカプカと浮かびながら
「第一あんた!さっきのアレ何なのよ!あたしの身体で。な、なに男の子に抱き付いてるのよっ!?」
「はぁ?――な、何のことだっ!?身に覚えのないことを
二人の言い合いに、謎の声は強制介入を始める。
「……!?」
「……!?」
二人は突然身体が動かなくなり、声も出ない。
勝手に身体を止められて、二人は謎の声に話しかけられる。
「マズハシャザイシヨウ……マサカ、オナジタマシイガベツベツノセカイニアルトハ」
(何なのよっ……この声、マジック!?)
(――なんと
言葉は
「キミタチハ、センタクデキル……ココロノナカデカマワナイ、ナニガホシイカセンタクスルノダ、チナミニ、ゼンカイノジンブツハ、【ココウナルチカラ】ヲセンタクシタ」
有無を言わさずに淡々と進める声。
(なによ……選択?前回?)
(なんなのだ……選択……とな?)
まずはステータスを決められた、勝手に。
これはランダム要素が強く、元の世界の身体能力が反映されるらしく、自分では決められないとのこと。
選択できるのは、あくまでも
(ステータスがランダムって……メチャクチャ弱い可能性もあるって事?)
「アンズルナ……コレカラソナタラガムカウセカイ【リバース】ハ、トテモゼイジャクナセカイダ……タショウヨワクテモ、セイカツニコマルコトハナイ」
「弱いって言った!?」
謎の声が言うには、あたし達がこれから行くらしい世界、【リバース】は、《魔法》や“異能力”が存在する、まさしくファンタジーの世界らしい。
どんなゲームだと言いたくなったが、ちらりと横を見たら、同じ顏をしたポニテ女が、
(これって、異世界転生ってやつ……?あたし、死んだの?……いや、でも――でも)
(なんと素晴らしいっ!《魔法》や“異能力”だと……た、た、楽しみだ――だが)
「サァ、センタクセヨ!」
二人は、
((――この女に……負けない力をっ!!))
そうして、同じ
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