37話【新たな異世界人】
◇新たな異世界人◇
“召喚”の
《紋章》も、古代語の書き込みも大丈夫だ。
現在は最終段階、“魔道具”を設置している
ローザが積極的に協力して手伝ってくれているお陰で、かなりスムーズに事が進んでいる。
【
【月明かりの砂】は、魔法陣を描くインクに混ぜた。
追加で集めた【
「うん。大丈夫、ありがとうローザ!――後は僕が」
「ええ、任せるわね」
ローザは
エドガーの
「――よし、やろう」
「頑張って!エドっ!」
エミリアも、見えない壁に
ゴホンっ。と一度
「レオマリスの血……【召喚師】の血が汝に問う……双星の
エドガーは【召喚師】の
“精霊”を“召喚”しようとした時とは、ほんの少しだけ違う。
魔法陣を描く材料に使われた【月明かりの砂】ことグレムリンの灰も、白い
呼応するように、陣上の【
魔法陣の上に浮く【闇夜の羽】は黒く発光して、ホワイトサファイアが放つ白い光と、まるで戦っているかのように対抗して光る。
「我が名はエドガー。エドガー・レオマリス!契約を望む者なり!……ここに
エドガーは言葉に
その様子に、ローザとエミリアも戸惑う。
「エドガー……?」
「エドっ!?」
(――我に力を、か……なんか違うよな)
見知らぬ異世界の人間を勝手に呼びつけておいて「力を貸せ」だなんて、とてもおこがましい気がする。
「エドガー!急いでっ!魔法陣が消えてしまうわっ!!」
ローザが叫び、エミリアは必死に見えない壁を押してこちらに来ようとしている。
エミリアはきっと、トラブルが発生したと
「大丈夫!二人は
エドガーは後ろ手で二人を制し、
きっと意味はない。でも、力を貸してもらう自分が上から目線で呼び出すのは、違うと思った。
「――ここに
エドガーらしいと言えば、そうかも知れない。
魔法陣は、白と黒に何度も交互に点滅し。やがてパッ!。と消える。
魔法陣が消えたと同時に、二つの影が飛び出して、魔法陣の後方、部屋の奥に着地する。
「成功、した……?」
「「……二人!?」」
エドガーは成功に
現れたのは、黒髪の少女が――二人だ。
ポニーテールの少女と、ツインテールの少女。
「……こ、ここは」
「なに?……ここ」
「「――はっ!!」」
“召喚”されたばかりの二人の少女は、お
「「この
異国の
「――っ!?」
しかしツインテの少女は、いきなり逃げる様に走り出して、エドガーの元までやってきて言う。
「こんにちはっ!」
「え!?こ、こんにち――って、え!?ちょっと、君っ!」
「いいからっ!隠れさせて!」
「はいぃっ!?」
エドガーの後ろに隠れた少女は、エドガーのコートをひしっと
「おのれこの
ポニテの少女は
「――ちょ、ちょっと待って!落ち着こう!?」
“召喚”の
理解が追いついていない。
ちらりとローザとエミリアを見ると、二人共驚いたのか
「
「あ、
ポニテの少女は、エドガーを
「なっ!?危なっ!」
エドガーは
「きゃあっ!」
エドガーの背後にいるツインテの少女は、
明らかに
「な、なんなのよっ!いきなり!」
ツインテの少女は自分が
その事実を知る唯一の相手、ポニテの少女はツインテの少女をギロリと
「――ひぃっ!」
エドガーの背中にしがみつき、
「マジなんなのよっ!有り得ないでしょ!こんなの映画じゃんっ!!」
「え、今なんて……」
「こんなの」の後の言葉が聞き取れなかった。何語だろう。
「
「は、はぁ!?
エドガーからすればどちらも変な、もとい珍しい
「な、なんだとっ!こすぷれが何だか知らぬが!馬鹿にしたな!?」
ポニテの少女はズンズンと進み、エドガーの目の前までくる。
ツインテの少女も、エドガーの背後から出て来てポニテの少女と
「大体さぁ、何それ!今時【忍者】?
「なんだとぉ!私は【くノ一】だ!」
「同じでしょ!」
「違うわっ!!ボケっ!」
「は?誰に向かって言ってんの!?あたしはこれでも学年一位なんだけど!」
「知るかっ!そんな足を出して、腹が冷えて子を産めなくなるぞ!!」
「ははっ、何それおばあちゃんじゃん!!ウケるっ」
「こ、こ、このボケぇぇっ!!」
「う、うっさい、馬鹿!!!」
「た、頼むから……同じ顔でケンカするのはやめてくれぇぇぇぇぇ!!」
自身が
ツインテの少女も同じくおとなしくなった。
「「……は、はい」」
エドガーの
その声にようやく「はっ!」反応したローザも
◇
「では、わたしから……」
「いや、あたしでしょ」
「「――はあっ?!」」
現在の
順番を
進まない状況にイラっとしたのか、
「……いい加減になさい」
「「……はぃ」」
ローザが持っていたのは細剣だった。
(うわぁ……怒ってるなぁ)
まるで他人事のように。自分が今後一番
光線を目の当たりにした新しい異世界人二人は、ローザの
「「……」」
「はぁ……私が先に自己紹介するわね――ロザリーム・シャル・ブラストリアよ。ローザと呼んで。はい次は
ポニテの少女に、持っていた短刀を返して自己紹介を
「ふふん……わたしは……サクヤだ」
隣のツインテ少女を
そして
「あたしは……サクラよ」
サクヤからくる
サクヤと同じように、少しだけ何かを考えてから。
「サクヤにサクラね……名前が似ているけれど、双子なのかしら?」
「「違うっ!!」」
「……そう。じゃあエドガー、自己紹介しなさい。キミが“召喚”したのだから」
ローザは意を返さず、いがみ合う二人を
「えっと……まずは、お二人をここに呼び出したのは僕です。だから、言いたいことがあれば、僕がすべて聞きます……あ、僕はエドガーっていいます、エドガー・レオマリスです」
エドガーは綺麗に頭を下げて、二人に言葉を
サクヤは
一方サクラは、黙ってエドガーの話を聞いている。
サクヤに黙れと
「
エドガーはサクヤとサクラ、二人を交互に見やり。
真剣に、誠実に、
「今すぐかもしれないし、明日、明後日かも知れない――本当は来ない方がいいんだけど……ああ、違うな……」
「ビックリするかもしれないけど……実は今、この街がピンチなんだっ!――君たちの力を貸してほしい」
「……ほほうっ!!」
「なにその魔法少女にならない?みたいな
エドガーが顔を上げて、二人を
サクヤは待ち望んでいた戦いの気配に、心を
サクラは、どこかで見たアニメのマスコットが言いそうなセリフに、
「――ふふっ」
しかし、そのセリフに笑ってしまったのはローザだ。
ローザは、エドガーが話したまさかの
「ロ、ローザ!?」
まさかローザに笑われるとは思わずに、エドガーは赤くなった。
「ごめんなさいエドガー……必死な顔で言う割には
「ええっ!?いや、でも」
遠くにいるエミリアもうんうんと
「――冗談よ。それに
「む!まさか
「――あ!!ってことはあなた……」
“召喚”される前に、エドガーが何かをする姿。
ローザは、“魔人”(低級悪魔)と戦う(一方的にボコボコにされる)エドガーだった。
おそらくは、この二人も見たのだろう。エドガーの言葉に
エドガーが
「そうよ。私も
「な、
「異世界……やっぱり異世界なんだ、ここは」
サクヤはローザのただならぬ雰囲気に。
サクラはこの世界が異世界だという事に驚き、けれども納得する。
「え、あのさ……ローザ。サクヤさんにサクラさんも、僕の話……」
三人の異世界人は、三人にしか分からない
「す、すみませぬ!
「あたしも聞いてたし……あたしに何ができるかはわかんないけど。まぁ、
サクヤは立ち上がり、エドガーの前に
サクラは照れながらも、顔をそむけて手を差し出す。
「――あ、いや、分かっていただけたなら別に……」
(あ、あれ……?)
本当は、こんなにあっさりでいいのかと思っているエドガーだが、異世界人は皆こんなものなのだろうかと、一人で納得してしまった。
「そうね。そろそろ行きましょうか、キチンとした話は、広い二階に行ってからにしましょうか……――じゃないと」
ローザが部屋の後方、入口をツンツンと指差し。
「あの子が
「――あ、エミリア」
決して忘れていた訳ではないが。
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