第16話 男を狩るって・・・痴女ですか?
「痛い・・・」
身体中が痛む。
俊哉はベッドの上で痛みを堪えていた。
その傍らには真由が心配そうに見ている。
「すいません。御刀になると確かに耐久度は上がるのですが、限界を超えると変身後の身体にもダメージが残る事があるのです」
「そ、そうなんですね」
この全身の痛みは悪魔と戦った時に相手の刃を受けた際のダメージらしい。相手はそれほど、本気じゃなかった様子だけど、それでもこれだけ、体中がボロボロになっていたんだと後から気付かされる。
「なんか・・・酷い筋肉痛みたいな感じです」
「そうですね。ある意味では・・・日頃の運動不足からくるものもありますから・・・出来れば、普段から運動などをして、もう少し、筋肉をつけていただけると・・・」
真由は申し訳なさそうに言う。
「はははっ、俊哉は貧弱だからな」
その後ろでは鈴丸が俊哉の漫画を読みながら大笑いをしている。
「なんで・・・鈴丸が僕の家に・・・」
俊哉は訝し気に鬼を見ながら真由に尋ねる。それに答えたのは鈴丸だ。
「当然じゃろ。あの悪魔は逃したし、そこの小娘は顔が知られた。一人の所を狙われてもおかしくない。だから、一緒に行動している。悪魔の連中は考える事がゲスいからなぁ。私等とは大違いだからな」
「私一人・・・ましてや御刀が無い状態ですと、流石に襲われたら勝ち目がありませんし」
「お前ら・・・別々に暮らさなくても一緒に暮らせばいいだろ?こんなに離れていると不便じゃ」
鈴丸に言われて、俊哉は驚く。確かに理には適っているが、女の子の家で同居など。
「私もそれを申し上げたくて参りました」
真由がそう言うので俊哉は驚く。
「ど、同居なんて・・・」
動揺する俊哉を横目に鈴丸が涼し気な顔で言う。
「お前が聖剣だとあの悪魔にバレたら・・・お前が襲われるぞ?」
「お、襲われる?」
「そうじゃ。わしら鬼は良質な生命力を吸いとるのが極上の楽しみだからな。聖剣ともなれば、それは強い生命力を持っている。それを吸うのが・・・」
鈴丸は涎を垂らしながら俊哉の股間を見る。
「ダメです!させません!」
真由が立ちはだかる。
「私は悪魔と違って、吸い尽くすなんて野暮はせん。少し・・・少しな?」
「ダメです!不浄です!滅しますよ」
「滅しますって・・・お前に出来るか?」
鈴丸はほくそ笑む。
「くっ・・・とにかくダメです」
「しかしなぁ。お前・・・俊哉とヤってないだろ?」
鈴丸の一言に真由と俊哉が固まる。
「す、鈴丸さん。何を・・・」
真由は真っ赤になりながら、鈴丸に掴み掛る。
「生娘が。そもそも、聖剣を使う巫女とて、我等と同じで、聖剣の生命力を得ることで、強くなるのじゃ・・・その点においては姫騎士とか言う奴らは解っている。あいつら・・・ヤリまくっている。まぁ、それでも量産型だから、1人1人は弱そうだがな」
「量産型って・・・」
俊哉は呆れた感じに言う。
「量産型は量産型じゃ。真由とは違う。こいつは幾重に代を重ねた純粋な力を持つ巫女。姫騎士はただ、才能があるだけ。まぁ、かつてはこの国でもそういうのはあったが、廃れただけじゃがな」
鈴丸は笑いながら炭酸ジュースを飲む。
フェリスは考え込んでいた。
「お姉さま・・・」
心配そうに声を掛ける下級生。
「あぁ・・・どうしましたか?」
フェリスは慌てて、笑顔を作り、下級生に応える。
「いえ・・・何か考え事をされていたので・・・」
「そうですか。あなた達に心配をさせるとは生徒会長失格ですね」
「そ、そんな」
「大丈夫です。何も不安な事はございませんよ」
フェリスは強がった。
「お姉さま・・・悪魔ですね?」
下級生の問い掛けにフェリスは少し黙り、コクリと頷く。
「すでに4人の姫騎士が殺され、聖剣は行方不明。多分、死んでいるでしょう」
その言葉に下級生達はゴクリと息を飲む。
「その悪魔と対峙しました。多分、私一人では勝てません」
その言葉に下級生達は慄く。
「お姉さまが敵わない相手なんて・・・」
「本当の悪魔は魔物とは別次元でした。我等の教科書にも悪魔と戦う時は相当の準備と戦力を持って、挑めとあるのがよく分かりました。闇雲に挑んでは返り討ちにあいます。皆さん、覚悟をしてください。多分、近い内にこの学院の総力を注いでの討伐になります。多くの被害が出るでしょうが・・・神の下にその命を捧げる事になります。それまでに精進をして、力を蓄えるのです」
フェリスの覚悟を決めた表情に下級生達はただ、緊張するしかなかった。
「ふん・・・こいつももうダメだな」
真知子はベッドの上で裸のまま仁王立ちした。その傍らには意識を失った裸の男が倒れている。真知子は男の頭を掴み、無造作にベッドの脇に捨てる。
「新しい餌を確保しないと・・・私の肉壺が枯れてしまう」
彼女はそう言い残すと、ベッドから飛び降り、風呂場へと向かう。
彼女が去った後、干からびた男の身体を黒い影が這いより、その身体に覆い被さる。彼は悲鳴を上げる事無く、その身体は消えてしまった。
シャワーを浴びた真知子はいつも制服に着替える。
「さて・・・この間の鬼・・・人間側に付いたみたいだけど・・・何が目的かしら・・・まぁ、何にしても厄介ね。この間はあいつの武器がチャチだったから、勝てたけど・・・まともな金棒なら・・・こんなちっさいナイフじゃ、一瞬で叩き折られるだけか」
真知子はフォールディングナイフを何度も開閉させて、考える。
「それに・・・姫騎士の連中にも顔バレしたし・・・あいつら、執拗なのよね。この顔を何とかするにも時間が掛かるだろうし」
「まぁ・・・用心した方が良いか・・・」
ナイフを上着のポケットに入れて、部屋から出て行った。
真知子はいつも通り、繁華街を歩き回る。こうして、餌となる生命力に溢れる男を探している。
「久しぶりに聖剣を纏めて食べたから、並大抵の男では満足が出来そうにないな」
真知子は街行く男達を眺めながら、退屈そうに歩いている。
「あなた・・・悪魔ね」
そんな真知子の前に1人の女子高生が立ちはだかった。
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