第2話 こんな状況で新しい姫騎士が現れるなんてっ!

 剣に変化した俊哉を振り上げる真由。

 明らかに長く、大きい剣。振り上げるだけでも女の子の細腕では大変そうだった。

 「クレイモアは扱った事はありませんが・・・これなら・・・悪魔も討てます」

 真由は何かを確信したように笑顔を見せる。その時、不意に声が掛けられた。

 「あら・・・一度も悪魔と戦った事の無い戦処女が言うじゃないですか」

 女の声に振り替える真由。

 「フェリスさん・・・」

 振り返った先には金髪碧眼の美少女が立っていた。彼女は近所にあるキリスト系の私立女子高の制服を着ていた。

 「確かに・・・立派なもんね。だけど・・・あなたの腕前でそれを扱いこなせるのかしら?」

 フェリスと呼ばれた少女は左側に垂らしたポニーテールを弄りながらほくそ笑む。

 「わ、私だって、巫女の家系です。剣術だって習得しております」

 真由はムキになるように彼女に応える。

 「ははは。ムキになるところが余計に面白いわ。そもそもあなたの言う剣術とは日本刀を用いるものでしょ?そんな大剣・・・扱えるとは」

 「あなたなら扱えるとでも?」

 真由は食ってかかるようにフェリスに尋ねる。

 「当然。私はフランス王家に繋がる騎士の家系。片手剣ならず、かのような両手剣だって、扱えるわよ。むしろ・・・私にこそ相応しいかしら」

 「ふざけないで。これは私が先に手に入れた聖剣よ」

 「先に手に入れた?バカね。聖剣には騎士を選ぶ権利があるのよ?あなたみたいに扱い方も知らない処女が選ばれるとでも思って?あんたみたいのは扱い易い短小包茎がお似合いよ」

 「黙りなさい!」

 真由は剣の切っ先をフェリスに向けた。

 (おいおい。どうなっちゃうんだよ)

 声は出せずに俊哉は状況をただ、不安そうに見守るだけだった。

 「まぁ・・・いいわ。地獄の門が開いてしまったからには、使える姫騎士は一人でも多く無いと困るしね。ただ、持て余すようなら、いつでも私が譲り受けてあげるわ。壊す前にして頂戴ね」

 そう言い終えると、フェリスはその場から立ち去ろうとした。だが、彼女は何かを感じ取ったように立ち止まる。

 「ふん・・・結界に気付いて、寄ってきたみたいね」

 フェリスはブレザーの下に着ているシャツの第一ボタンを外して、その豊満な胸の谷間を露わにする。

 「シャルル!いらっしゃい!」

 「は、はい。姉さん」

 フェリスが呼ぶと教室に一人の弱々しそうな男子が入って来た。

 「解っているでしょ!悪魔が近付いてきたわ。聖剣になるわよ」

 「えっ・・・他の人が・・・」

 「見て解るでしょ。あっちも姫騎士よ」

 フェリスはそう言うと、制服の膝丈のスカートから伸びた白い太ももを露わにして、少年に絡み付く。豊満な胸が彼の頬を撫でる。そして、彼女の右手が彼の股間を撫で回した。僅か数十秒で手がチャックを開き、中に入った時、シャルルの身体が変化した。

 「悪魔との戦いがどんな物か・・・とくと見ておきなさい」

 ファリスはサーベルを軽々と振り回す。

 「わ、私だって、やれます!」

 真由は慣れない大剣を構えた。それを見たフェリスは笑う。

 「やれます?もう、あんたの聖剣は鈍ってるわよ」

 そう言われて真由は驚いて、剣を見た。確かにさっきに比べて、刃が鈍ったようにも見える。少し小さくもなった感じだ。

 「バカね。ただ持っているだけじゃ、興奮が醒めてしまうって事よ。男の扱いを知らない処女はそんなんだからダメなのよ。常に男を興奮させ続けないと・・・剣の力を発揮が出来無いわよ」

 フェリスはサーベルを構える。すると、その刃を軽く舌で舐め上げる。その途端、サーベルの輝きが増したように見える。

 「愛撫が大事なのよ。男もね」

 彼女がそう言った時、教室の壁が引き裂かれるように何かが現れた。

 「ふん・・・低級か。だから結界に誘われたのね」

 黒いスライムみたいのが突如、現れた。俊哉はその光景に驚くしか無かった。

 「低級なら、私が・・・!」

 真由はスカートのポケットから札を取り出す。

 「あんたねぇ。聖剣を持っているのに札を出すって・・・剣を使って、退治するって発想はないの?まったく・・・」

 フェリスは呆れた感じになりながら、素早い動きでスライムに迫った。右手が付き出され、軽々とスライムが切断されていく。

 一瞬で、猪程のスライムが切り刻まれた。そして、それは黒い霧となって、消えてまった。

 「これが聖剣の戦いよ。札や儀式で何とか出来るのは低級まで・・・私たちはこれよりも強い上級悪魔を相手にしないといけないのに・・・あんた・・・本当に使えるの?」

 フェリスは大剣を構えたまま、結局、動けなかった真由を見て、呆れる。

 「い、今のは・・・あなたがお節介をしたからです」

 真由は負け惜しみともいえる感じに言い返す。

 「解ったわよ。だけど・・・実戦で負けるって事は死ぬって事よ。あんたも・・・その聖剣になった子もね。あんたのプライドだけで、その子の命を無駄にしないでちょうだいね」

 フェリスはサーベルの柄を擦りながら、舐め回す。すると突如、彼女の顔に突如、白い液がぶち撒けられ、サーベルに変化していたシャルルが姿を現す。

 「相変わらず、多いわね」

 フェリスはハンカチを取り出して、顔を拭く。

 「姉さん、ごめん」

 シャルルは恥ずかしそうに俯いている。

 「まぁ、良いわ。一番、近くに居る姫騎士がようやく聖剣を手に入れたのを確認が出来ただけ、収穫よ。帰るわ。それじゃね」

 フェリスはそう言って、去って行った。

 

 その光景を眺めて、安堵した途端、俊哉の姿が人間に戻った。突然の事だったのか、真由も驚て何も出来ずに俊哉は地面に落ちてしまった。

 「痛てぇええ」

 倒れた俊哉を心配する真由。

 「だ、大丈夫ですか?」

 「あぁ、大丈夫ですけど・・・今のって・・・全て本当なんですか?」

 俊哉は夢でも見ている感じで真由に尋ねる。

 「本当の事です。あの悪魔が、人間界を浸食しようとしています。私達はそれを防がねばなりません。それが有史以来、我が一族に課せられた宿命でありますから」

 真由は真剣な表情でそう答えた。

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