私のハナシ

@mape77

序章

昨日買ったばかりの、白い膝丈のノースリーブワンピースに身を包む。

鎖骨まで伸ばした濃いブラウンの髪は緩く巻いて、片方の耳だけ見えるように髪を掛けた。

小振りの上品なネックレスと、揺れるゴールドチェーンのダイヤのピアス。

バッグは比較的カジュアルなブランドのもので、色はベージュピンクにした。

メイクは濃い目に、だけど唇はバッグと合わせたヘルシーなピンク。

靴もバッグに合わせた、同色のエナメルローヒールパンプスにした。

全身鏡の前で入念に最終チェックをすれば、“私”の出来上がり。


マンションの扉を開けると、夏の夕暮れを反射したオレンジ色の海が、キラキラと輝いているのが見えた。

4階のエントランスから見えるこの景色は、私のお気に入りだ。

取り柄と言ったら海か山しか思い付かないようなこんな田舎町、昔から大嫌いだったけれど、この壮大な景色だけは唯一誇りだと思える。


その景色を瞳に焼き付けて、私は階段を足早に降りた。


今日の“ターゲット”に会いに行くために。






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