第6話

「あれ…?どこから来たの?全然気付かなかった…。」


 私の足元に、猫がいた。真っ白な猫。砂の上を歩く猫の足音なんて、聞こえないか。私は猫の頭をなで、首をくすぐる。


「かわい…。」

「お前も可愛いよ。」

「え?」


 驚いた私がユウスケを見ると、ユウスケも私を見ていた。


「笑った顔。」


 いきなりそんなこと言わないでよ。合わせていた目を、私は思いっ切り逸らした。


 猫がユウスケに飛び付く。人懐っこい猫。ユウスケは猫とじゃれ合う。


「かわいいもんだな。」

「笑った。」

「ん?」

「ユウスケも。笑った。可愛い。」


 私この時きっと、幸せだった。初めてで、最後なのかな。


「大人をバカにするな。」

「子供をからかわないで。」

「笑うな、バカ。」

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