第26話「俺の最強魔法だぜ」

 エレナがすばやく後退する。


 俺はパンとスケッチブックを叩いた。


「"エッチ・スケッチ・ワンタッチ”!」


 紙面の線が光った。光はキュインと伸びて地面に降り立ち、


「な、なによこれ!?」


 裸の巨乳エレナになった。

 どんなに動いても髪やらポーズやらで大事なところが見えない少年漫画仕様だぜ!


「俺の最強魔法だ!」


「なんで裸!? なんで巨乳!?」


「そのほうが俺のテンションがあがるからだ! いけ! 乳エレナ!」


「変な名前つけないでよっ!」


 乳エレナはすっと弟に近づき、


「っ!?」


 拳を突き出す。


 弟はギリギリのところでかわしたが、乳エレナは間髪入れずにもう一発。


「がっ!」


 それが頬にクリーンヒットし、弟の身体が二メルテルくらい吹っ飛んだ。


 地面にバウンドした弟の身体を乳エレナは片手で持ちあげ、


「うわっ!?」


 兄貴のほうにぶん投げた。

 兄弟仲良く仰向けに倒れる。


「ンのヤロォ……!」


 すばやく起きあがった弟が乳エレナに殴りかかる。乳エレナは弟の腕をひねって受け流し、兄の懐へぐっと踏みこんだ。慌てて一歩下がった兄が剣を引き抜こうとする。

 が、乳エレナがその手を蹴りあげるほうが早かった。


「強い……」


 エレナ(貧乳)がつぶやく。


 乳エレナが兄のうしろに回りこみその背を蹴る。


「おわっ!?」


 前のめりに倒れた兄が弟を踏み潰す。乳エレナはその背に馬乗りになって片手で腕をひねりあげた。


 兄の尻ポケットから『メルヘンズ』を抜き取り、ひょいと俺に投げる。俺はパシッとそれを受け取った。


「よっしゃ! 逃げるぞエレナ!」


「う、うん!」


 走り出すと同時に乳エレナがシュゥと掻き消える。


「待ちやがれ……!」


 墓荒らしグレイヴァー兄弟が起きあがる。すごい速さで俺たちのあとを追ってきた。

 くそ、捕まってたまるかよ!


「エレナ、目ぇ閉じろ!」


「え?」


 俺は脳裏にさっき見たラッキースケベを描く。


 ぺろんとめくれたスカート。縦長のへそ。薄桃色の頼りない布。


「"パンティ・フラッシュ”!」


 カッ! とあたり一面が光に包まれた。


「くっ……!」


 やつらの足音が止まる。


 俺とエレナは必死に足を動かした。

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