第24話「新たな敵」
「エレナさがれっ!」
燃え盛る炎を思い浮かべ、叫ぶ。
「"
火炎。
輝く朱色の波がジャンクたちを襲う。
立ちこめる熱気に、黒い化け物たちは怯えた声をあげて逃げ出した。かまいたちを受けた一匹も傷だらけの身体で炎のなかを逃げていく。
ジャンクたちが立ち去って、炎がシュッと掻き消える。
「ま、魔法……」
「大丈夫かエレナ!?」
「びっくりした……」
はぁ……とエレナは深いため息をつく。
「また変な呪文つけて……。今度はエロじゃなくて中二病なのね……」
「おうよ」
エロに興味を持つこと。
そして中二病をちゃんと患っておくこと。
それを飛ばしちゃ立派な男にはなれねぇよ!
よく見ると水色のスカートから覗く脚は小刻みに震えていた。
「……今日はもう帰るか。一度対策を立て直したほうがよさそうだ。このままじゃジャンクに追われて疲れるだけだし」
「そうね……。やっぱり地上に向かいま……」
「お嬢ちゃんたち、こんなところでなにしてんだい?」
知らない声。
声のしたほうを見あげる。
いきどまりの建物の上に、男が二人立っていた。
軽い身のこなしでそいつらが飛び降りる。ひとりは腰に鞘をぶらさげ、もうひとりはいかつい籠手をはめていた。
籠手の男はニッと嫌な笑みを浮かべる。俺とエレナは一歩後ずさった。
「今、魔法使ってただろ? 見たところそのカワイイ服も結構いいモンみたいだし、さてはキミたち、いいトコのお嬢さんだな。女の子だけでこんなところをうろついてちゃ危ないぞぉ? なぁ兄貴?」
「まったくだ。まさかお嬢ちゃんたちもこれを探しにきたのか?」
兄貴と呼ばれたほうが背負い袋から古い本を取り出す。
「
「!!」
俺とエレナは顔を見合わせる。兄貴のほうが得意げに笑った。
「正真正銘の本物だぜ。俺たちもさっきやっと見つけたんだ」
くそ、
俺も無理矢理唇の端をつりあげる。
「それ、まさか譲ってくれたりしませんよね?」
「わりぃな、これはもう俺たちのモンだ」
ですよね。
籠手の男がにやりと笑って、
「お嬢様はおとなしくおうちに帰んな」
「俺たちが送ってってやるよ」
大股でぐんと距離を詰めてきた。
「っ……!」
伸びてきた男の手を俺とエレナは飛び退ってかわす。男たちが下品に笑った。
「そんなに怖がるなよぉ!」
ちらりと兄貴のほうが持つ本を見る。ここは逃げるべきなんだろうが、どうにかしてあれを手に入れたい。
「エレナ、ちょっと時間を稼げるか?」
小声で言う。
「……なにするつもり?」
「あの本を奪う。俺に考えがあるんだ」
「……わかった。やってみるわ。どれくらい?」
「一分。いけるか?」
「努力するわ」
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