第12話「図書室にいくわよ」

 入学式の日は、午前放課となった。


「図書室にいくわよ」


 エレナに腕を引っ張られて高等部校舎を出る。


 エレナの胸に肘があたってる……。

 でも肋骨のかたさが哀しい……。俺のおっぱいちょっとわけてやりたいぜ。


「図書室になんの用だよ?」


「決まってるでしょ。呪いを解く方法を探すのよ」


 広い学園の敷地内を長い脚でせかせか歩きながらエレナが言う。


「ネットで検索してもろくな情報が出てこないんだもん。それにこういうのって楽してネットで済ますより、文献をあたったほうがちゃんとしたことがわかるでしょ?」


 うわ、まじめっぽいなー。


「ていうかおまえ、俺を元に戻す気なんてあったんだ? てっきり徹底的に隠蔽する方針かと」


「あるわよ。あたりまえでしょ。いつまでも爆弾抱えてたくないもん。それに元の姿に戻れなきゃあんただっていろいろと困るでしょ? ……む、昔の約束とか」


「約束?」


 なんだっけ? と俺はすっとぼけた。


「……覚えてないならいいっ」


 エレナは赤い顔をぷいっと背けて、怒った声で言った。


「ま、そりゃ俺だっていろいろ困るわな。この姿じゃ家にも帰れないし」


 あとは彼女が作れないとか、一生童貞かもしれないとかな。

 あれ、女になっても「童貞」でいいのかな?


「そうよね。あんたのご両親にも、申し訳ないわよね……。お父様、お元気?」


 エレナの表情が翳る。


「元気だよ」


 そう……と答えたエレナの顔は、長い水色の髪に隠れて見えなかった。


 図書室で「呪い」や「変身」に関する本を片っ端から寄せ集め、持てるだけの分を借りる。


 その日は夜まで部屋で本とにらめっこしていた。


 美少女とひとつ屋根の下だってのに、色気がねぇなぁ。

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