第9話「久しぶりの幼馴染」
「こうやって二人で話すのも久しぶりね。五年も会ってないんだからあたりまえだけど」
「昔は毎日一緒に遊んでたのにな」
小学生のころ、俺は当時女子校だったヒナギク学園とは別の学校に通っていた。
それでも放課後はこんな美少女と毎日一緒に遊んでたんだから、よく考えたら俺って結構勝ち組じゃね?
まあ、それはいいや。
ヒナギクが男女共学になったのは今から三年前のこと。
しかし生徒の男女比はいまだ一対九で、ひゃっほうハーレム! って喜んでたんだけどね、さっきまでは。
「これからは嫌でも毎日顔をあわせることになるわよ。……い、一緒に寝起きするんだから」
エレナは頬を染めて怒ったように言った。
「ま、そう考えたら女子になるのも悪くないな」
美少女の幼馴染と同室で暮らせるし、よく考えたら更衣室も風呂も女子と一緒だし。天国じゃん。
「へ? そ、そう?」
エレナの顔に赤みが増し、へへ、とうれしそうに口元が緩む。
「ま、まああたしもね、あんたがルームメイトっていうのも、その……嫌じゃないわ。男の子と同じ部屋なんてって思ったけど、まあ……もともと気心も知れてる仲だし? うん、知らない人と同じ部屋よりもずっといいわ」
エレナはぷいと顔を背けて立ちあがった。
奥の寝室へと一度消えて、すぐにバスケットをぶらさげて戻ってくる。
「さて、あたしはお風呂に入ってこようかな」
「お風呂? 俺もいくっ!」
「ダメ」
水色の瞳がギン! と吊りあがる。
「えー! 楽しみにしてたのに! 女体化最大のラッキーイベントなのに!」
「だからダメなの! あんたを女の子にしちゃったあたしには、あんたが他の人に迷惑をかけないよう見守る使命があるのよ!」
「このまじめ! 美少女の俺が女の子の裸を見て、一体誰に迷惑がかかるというんだ!?」
「あんたは男でしょーが!」
「ひどいっ! 私女の子だもんっ!」
「都合のいいときだけ女の子ぶるな! あんたはここ!」
エレナはビシッと洗面所の扉を指差す。部屋の洗面所にはユニットバスが備えつけられていた。
「あんたが使っていいのは部屋のユニットバスだけ! 大浴場は絶っ対っ! 使っちゃダメだからね!」
「ええー……」
「もしも覗きなんてマネしたら、あんたが女の子に変身したこと、あんたの家族にバラすからね!」
「それだけは勘弁してくださいお願います」
即行で床に額をつける俺だった。
俺が名門マジスタ校に入学したことを喜んでくれている家族たちに余計な心配はかけたくない。
「じゃあおとなしく言うことを聞くことね。わかった?」
俺はコクコクとうなずいた。
「返事!」
「はい」
「声が小さい! もっとはっきり!」
「はいっ!」
尻に敷かれるってこういうことかな?
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