首都圏ファンタジー。日本の首都圏にモンスターが現れたけど、取り敢えず頑張って生き残りたいと思います。

千葉一

千葉県編 非日常の始まり

序章 黒崎颯人

 俺はゲームや、漫画。アニメなどが大好きなオタク系の男子高校生だ。

 どれぐらい大好きなのかと言うと、友達よりも最優先するぐらいの重度なゲーム馬鹿である。

 勿論、休日のライフワークはゲーム、漫画、アニメ、DVD鑑賞のどれかだ。


 そんな陰キャの見本みたいな俺は、友達が一人もいない……ああ、一応言っておくが、虐められているわけではないぞ。

 ただ単に友達と遊ぶより、ゲームするのが大好きなだけだ。

 実際、高校では悪口を言われた事も、殴られ、蹴られるなど、典型的な虐めは受けていない。

 ただちょっと、空気扱い――むしろ、俺がクラスメイトに対して壁を作っている感じだ。


 とは言え、最初からそうではないのだ。

 少なくとも小学生から中学生までは、友達とよく遊んでいた。

 テレビゲームで交友を深めたり、外でサッカーなど試合に熱を入れた。

 それなのに、今は友達と呼べる人間は皆無と言ってもいいレベルまで落ち込んでしまったのだ。


 そうなってしまった原因は、俺の責任である。

 元々、人付き合いが苦手である俺は、あろうことかそれを改善する事もせずに、ゲームなど二次元に没頭してしまったのだ。

 また高校生活などの環境の変化に適応できなかった。

 小学、中学時代の時は、友人など知り合いが一緒だったが、高校からは友人と一緒になる機会が恵まれなかったのである。


 今からでも友人作りなど、ゲーム断ち……まではいかなくてもゲームから少し距離を離れた方がいいのでは――そう思ったこともあるが、一人でゲームするのが楽し過ぎて億劫なのであった。


 自堕落――そんな言葉に似合う俺の高校生の日常は、平凡を通り越して灰色の世界であった。

 先ほど述べたように俺は虐めを受けてはいないが、クラスメイトの喧騒に関わらないようにし、ただ『生きている』だけの役を務めるだけである。

 世間話はしない。連絡事項だけ他者と関わる。授業が終わったら寄り道せずに家に帰る。

 そして俺の大好きなゲーム三昧の時間。そこで灰色の世界から、色鮮やかな世界が広がっていくのだ。


 それは『逃げ』とも言えるし、他者と関わる事を諦めた俺の『現実逃避』である。

 ゲーム、漫画、アニメ、二次元の世界は、友達作りを諦めた俺にとって、優し過ぎる世界であり、精神安定剤のような役割を持っていた。


 特に主人公の環境に、俺の琴線を深くかき乱したのだ。

 誰からも好かれ、頼りになる仲間を作り、巨大な敵と戦い、そしてハッピーエンドを迎える。

 そんなRPGの主人公の姿は、俺の理想であり、一つの目標でもあった。


 しかし現実の主人公――黒崎颯人くろさきはやとは、どうあがいてもゲームの主人公にはなれないのだ。

 せいぜい、あの場面イベントでの出来事に、俺ならどうするか――と、夢想するのが関の山である。


 それでも……。

 それでも俺は願うのだ……。

 俺にとってつまらない世界が、ゲームのような世界になってしまえと――。


 自堕落で自業自得な陰キャの馬鹿野郎である俺が、主人公ヒーローとして大活躍するゲームの世界に生まれ変わって欲しい――そんな欲望を表に出さず、ただひっそりと静かに願っているのであった。

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