Merry Christmas~聖夜に想いを込めて~

のがみさんちのはろさん

プロローグ


 今日から12月。どこもかしこもクリスマス気分で浮かれ騒ぐこの季節。


 あなたなら、誰と過ごしたいですか?




 友達、家族。それとも、恋人と?





「クリスマス会に参加する人はこの紙に名前書いておいてねー」



 とある中学校の三年の教室。受験に追われる彼らもこの時くらいは羽を伸ばしたいもの。放課後、クラス委員が黒板の隅に貼った紙に皆が名前を書いていく。

 プレゼントどうする? なんて相談する声や、色めいた話し声で賑わう中、一人の少女が赤いシャーペンを持ったまま黒板の前で小さく唸っていた。



「相川、なに悩んでんだよ」

「青山くん」



 声を掛けられた少女、相川汐里あいかわしおりは小さくため息をついた。

 汐里に声をかけた彼、青山英司あおやまえいじはそんな彼女に続けて話し掛ける。



「……参加、しないの?」



 英司は用紙を指差して言った。クラスの大半は既に名前を書いている。

 あと三ヶ月で卒業なのだ。その前にクラスみんなでの思い出がほしい。それはみんなが思っていること。

 汐里も同じ気持ちだ。親だって駄目とは言わないだろう。



「……青山くん、は?」

「参加するよ。相川も来いよ、このクラスで何か出来るのなんて、もうないんだから」

「……うん」



 英司は空いてる部分に自分の名前を書いて、汐里にも書くように促した。

 参加しない理由などない。汐里は英司の隣に名前を書いて自分の席に戻る。



 クリスマス。

 聖夜、恋人のイベント。そんなイメージのあるその日、中学最後のクリスマスに、思い出を作ろうとしてる生徒は少なくない。



 そう、思い出。


 好きな人との、思い出を。





「……告白、しよう」





 そう決意する、少年少女の25日。





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