龍の継承者~世界最強を受け継ぎし少年、異世界を自由に無双する~

田仲らんが

第1章:《天龍邂逅》

プロローグ・ゼロ

 ──そこは不思議な洞窟。

 一人の少年と、一体の龍が対峙していた。

 少年が、龍へ心配そうに話し掛ける。



 「……おい、……本当に良いのか……?」

 「もちろんさ。キミに託せるのならこの命、捧げても良い覚悟はとっくに出来てる」

 「……そうか。

 お前がそう言うのなら、俺はもう、何も言わないさ……」

 「うん。───じゃあ、始めるよ?」

 「……あぁ」



 龍がそう宣言した──刹那。

 両者の総身が輝きだした。

 龍の総身から溢れ出る光の粒子が、少年へと移っていく。

 その様子をやり切ったかのように満足した顔で見ている龍と、逆にどこか悲壮な表情を浮かべている少年。

 龍から光の粒子が移っていくと、その身体が段々と透明になっていく。

 対して少年の身体からは、溢れんばかりの光が放たれている。

 その間、両者は特段、何を話すのでも無くジッと見つめ合っていた。

 そして龍の総身から光の粒子が全て移った瞬間、両者の光が収まり、何処からともなく両者の口が開く。



 「ねえ、コウセイ。

 キミは絶対に幸せになってね……。

 ボクみたいになっちゃ、ダメだよ……?」

 「……なぁ、ルカ。

 本当に、これで良かったのか……?

 他に方々は、無かったのか……?」

 「……もしかしたら、あったかもね……。

 でも、これで良いんだ。

 もう、永く生きすぎた……。

 ははっ……。この世界は平和になったし……ボクは既にお役御免、ってことさ。」

 「…………」

 「そんな顔をするなよ……。

 こっちの方が悲しくなるだろ……?」

 「……だって……こんなのは、間違ってる。

 お前は不用なんかじゃない。

 ……少なくとも、俺はそう思ってる」

 「……そう言ってくれると、少しは報われるかなぁ……」



 話している間にも、龍の身体は只でさえ透明だったのが、もう消えかかっている。



 「……どうやら、時間のようだね。

 ──コウセイ。

 キミとは少ない時間だったけど、孤独空っぽだったボクの心にもう一度、温もりを灯してくれた。

 本当に感謝してる。

 ……出来ればもっとキミと居たかったけどねぇ……」

 「なら、……ならっ!

 もっともっと! 俺と一緒に居ればいいだろ!!

 何で……何でっ、お前が居なくならなきゃいけねぇんだよッ!!

 おかしいだろッ!!!」

 「あははっ……プロポーズかい?

 気持ちは嬉しいけど、……ね。

 さっき説明した言ったよね……?

 ボクは、この世界には既に必要が無い存在なんだ、って。

 ……それ以外にも理由はあるしね。

 ──だから、キミに力を託してボクは消える。

 ……キミは、決して力の扱いを違えてはいけないよ?

 ボクみたいになるからね……。

 キミがこっちに来ないことを祈っているよ。

 ……コウセイ」

 「っ、おい!

 待てよ、待ってくれッ!

 まだ、ちゃんと───……え?」



 龍に近付こうとした少年が、その場に倒れ込むように崩れ落ちた。

 少年にも何が何だが分からないのか、困惑しながらうつ伏せとなった状態で、必死に藻掻き、起き上がろうとする。



 「……な、んで……?」

 「……継承の影響だよ。

 キミはこれから身体組織が龍へと変化するんだ。」

 「……ふざ……ける……な……ッ!

 ま……だ……ッ」

 「……ありがとう、コウセイ。

 ボクのことをそんなに考えてくれて。

 とても嬉しかったよ。

 じゃあ、今度こそ。

 さようなら……」



 そう言った瞬間。

 龍の姿が完全に──消失した。



 「……………………そ、ん……な……まだ………おま……え、の……こ……と………っ」



 そして。

 少年の意識は完全に落ちていった……。




 ──目の前に見知らぬ“光の球体”があるとは、気づかずに……。



 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る