告白Uターン
緋色 刹那
告白Uターン
今日は高校の卒業式。
祐太は意中の丹下さんに告白するべく、彼女を呼び出した桜の木の下に向かっていた。
「いよいよ告白するのか……緊張するな」
しかし、祐太は頭の中で何度も告白のシミュレーションをしているうちに、だんだん自信がなくなってきた。
「やっぱり、やめようかな。フラれたらショックだし」
Uターンし、教室へ戻ろうとする。
だが、既に丹下さんを呼び出していることを思い出し、再びUターンした。
「ダメだ! せっかく丹下さんが来てくれるのに、彼女を待たせたままにするわけにはいかない!」
しかしふと、「そもそも丹下さんは来てくれるのか?」と思い、足を止めた。
「丹下さんは口では“行く”と言ってくれたけど、あれは建前だったのかもしれない。心の中では“行くわけねぇだろ、バーカ”と、僕を蔑んでいたのかもしれない!」
やっぱり帰ろう、と祐太は三度Uターンする。
が、丹下さんがどういう人だったのかを思い出し、四度目のUターンをした。
「いいや! 丹下さんはそんなひどいことを考える人じゃない! 僕に気はなくても、ちゃんと約束通りに待っていてくれるはずだ!」
その時、カップルらしき男女と廊下ですれ違った。
祐太はイチャコラする男女の後ろ姿を見送り、1番大事なことを確認していなかったことに気づいた。
「……丹下さんは、本当に彼氏がいないんだろうか? あんなキレイな人に彼氏がいないなんて、おかしいじゃないか」
祐太はUターンした。今まで「彼氏がいない」ということに喜びすぎて、それが嘘かもしれないなんて、考えたこともなかった。
「もしかしたら、約束の場所に丹下さんと一緒に彼氏も待っているかもしれない。彼氏が僕をボコボコにして、“二度と丹下さんに近づくな!”と言ってくるかもしれない」
でも、と祐太は自分の本来の目的を思い出し、Uターンした。
「僕は丹下さんに想いを伝えに行くんだ! もし彼氏がいたとしても、この想いを伝えるまでは、いくらボコボコにされても絶対倒れないぞ!」
そして告白の内容を復唱しようとした。が、告白を迷っている間に、内容を忘れてしまった。
「ど、どうしよう! 夜通し練習したのに、忘れるなんて! こんな状態で、告白なんか出来るわけがない!」
Uタは祐太ーんした。一度教室へ戻って、告白の内容を考え直そうと思った。
だが、途中で足を止めた。
「いや……むしろ、告白の内容を前もって考えるなんて、無粋じゃないか? 心で思ったことを、素直に伝えるべきなんじゃないのか?」
祐太は自分に言い聞かせるように呟き、Uターンした。
今度こそ、真っ直ぐ約束の場所へ歩いていった。
・
丹下さんは1人で桜の木の下にいた。祐太を蔑んでいる様子はなく、近くに彼氏もいなかった。
「丹下さん! ずっと前から好きでした! 僕と付き合って下さい!」
祐太はあれこれ考えるのをやめ、直球で自分の気持ちを伝えた。
丹下さんは一瞬きょとんとしていたが、すぐに微笑んで「はい」と頷いた。
祐太は歓喜で涙を流した。何度もUターンしたけど、勇気を出して告白して良かった。もうUターンはしないぞ、と心に誓った。
だが、彼は知る由もない……これがUターン人生の始まりだということを。
初めてのデートの誘い、プロポーズ、結婚報告……人生のあらゆる局面において、彼はUターンし、葛藤し続けるのだということを。
(終わり)
告白Uターン 緋色 刹那 @kodiacbear
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