青春新聞

折戸理央

第1話 桜

 緊張で手が汗ばんでいる。有馬詩織は手汗を新品のプリーツスカートで強引に拭ってから、深呼吸。教室の引き戸をゆっくりと開ける。席はもう三分の一ほど埋まっている。黒板に張り出された座席表を確認して、少し驚いた。一番窓際の列の先頭が私の席だったのだ。つまりは、出席番号一番。

 出席番号が早いことにはもう慣れていたが、一番なんて久しぶりだ。

 席に着き、カバンから一冊の文庫本を取り出す。もう何度読み返したかわからないその本のページをゆっくりと開いた。

 窓の外では例年よりも少し遅めに満開を迎えた桜が青空の下で競うように咲いていた。


 

 

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