第3話
どんな関係になろうと、俺は、お前と一緒にいたかった。
ただ、それだけなんだよ。
◇◆◇
翌週の日曜日。俺は部屋でボーっとしていた。
今朝、目を覚ますと瑛太からメールが着ていた。それはいつも通り、「夜に行く」と一言だけ書かれたものだ。
アイツが来るまでまだ時間があるし、なんか飲み物でも買いに行くか。丁度切らしていたし、煙草も買いたいし。
俺は上着を羽織って、近所のコンビニへと向かった。
「……っ、さむ」
つい最近まで、まだまだ残暑で薄着でも汗ばむような日が多かったのに。
もう、季節が変わるんだな。そりゃそうか、もうすぐ11月な訳だし。なんか、一年があっという間に終わっていくな。瑛太とこういう関係になったのだって、つい最近のように思うのに、気付けば半年も経ってる。
あの肌にもう何度触れただろう。アイツの反応が毎回初々しくて、いつまで経っても恥ずかしそうにするから、いつも初めて抱くような感覚になる。病み付きになってしまう。
卑怯な身体だよ。ただでさえ溺愛ってくらい惚れまくってんのにこれ以上お前に夢中にさせてどうするんだよ。
コンビニに入って、奥にあるペットボトルの飲み物が並べられた棚の前で何本か適当に選ぶ。新商品出てるのか。じゃあ、それも買っておこう。
「あれ、もしかして常盤君?」
「……え?」
何となく、懐かしいような声に俺は振り返った。そして、心臓が止まるくらい驚いた。
だって、そこに居たのは、アイツの彼女だったから。
「……
「やっぱり。相変わらずカッコいいね、声掛けようか迷っちゃった」
「なんでだよ。普通に話しかけろよ」
彼女は
でも、なんでここに?
俺、高校卒業してから直ぐに地元離れたから絶対に会わないと思っていたのに。
「お前、この辺住んでんのか?」
「ううん。弟がこの近所に住んでるの。今日は風邪引いたって言うからお見舞いにね」
そう言って篁はカゴに入れた飲み物やアイスを見せた。そういえば、こいつには弟いたっけ。重度のシスコンで、同じ生徒会の俺や瑛太をメッチャ敵視してたんだよな。
ってことは、今頃は姉ちゃん独占できて喜んでるんだろうな。ニヤけてる顔が簡単に想像できる。
「弟、元気か? って、今は元気じゃないよな」
「ふふ、そうね。でも相変わらずよ」
「相変わらずのお姉ちゃんっこなんだな」
「そ、そんなことないわよ。ちょっと心配性なだけで……」
「ちょっとで四六時中姉ちゃんに引っ付いてるかよ……」
「それは……」
これでよく瑛太もコイツの彼氏になれたよな。ま、きっと今でも認めちゃいないんだろうけど。
「瑛太とは、どうなんだ?」
「え……えっと、普通かな」
「歯切れ悪いな」
「なんていうか、私たちってずっと一緒じゃない。だから、なんだか関係がふわふわしちゃって……」
「……友達に戻ってる?」
「って訳じゃないと思うんだけどね。今でも好きだし、瑛太も好きでいてくれてるのは分かるんだけど」
「……」
「瑛太がたまに不安そうにするの。私のせいなのかな……」
ゴメン。
俺は、寂しげに微笑む彼女に、心の中で謝った。
瑛太にそんな顔させてるのは、きっと俺だ。俺との行為が、アイツの不安を埋めながらも別の不安を生んでる。
でも、ゴメン。本当にゴメン。俺は、今の関係を止められない。俺は、瑛太が欲しい。今日も、俺はあいつを抱くよ。
「……奢るよ」
「え!? いいよ、そんな」
「奢らせて。そんな気分だから」
「どうかしたの……?」
許してなんて言わないよ。
でも、ゴメン。
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