第53話 私の奇跡

「それで、主様、ゴブリンから救った娘達をどうするかは決めたのか?」


ゴブリンの集落の向かおうという所で銀が俺に聞いてくる。


「ああ、決めているぞ、と言っても本人に決めさせるつもりだがな」


色々と考えたが結局は当人たちの意識次第だ。

そう考えて決めたのだ。


「本人達に決めさせるのですか?」


銀は少し不満げだ。

まあ、ルール的には俺の好きにしても良い所だからな。

娘たちに対して甘いと思っているのかもしれない。


「そうだ、本人達にだ」


俺は銀の気持ちを断ち切るように復唱して、亜空間倉庫の扉を出現させる。


「銀、サミー、亜空間倉庫を経由してゴブリン達の巣の側に戻るぞ」


「「ハイ」」


俺は2人を引き連れて扉を開け亜空間倉庫に入るとすぐに扉を閉めてまた開ける。


扉の外はゴブリンの集落のすぐ側だろう。

大きな木に見覚えがある。


「主様、何度経験してもこれには驚かされます」


銀が不思議そうに周りを眺めている。

確かにね、でも慣れてもらわないとね。

これからも亜空間倉庫を利用したショートカットは使い続けるつもりなんだから。


ゴブリンの集落に向かう道を歩き始めると、俺たちの気配を感じて近づいて来る人がいる。

あれはリンだな。


「神子様、無事にお戻りになられましたね」


「ああ、無事に戻ったよ」


「オイゲンはやはり大物だな。

あれだけ色々な事があったのに言うのはそれだけか。

それにリンもだ、一晩で大きくなったオイゲンを見て何も思わないのか」


サミーが呆れた声で俺とリンに言ってくる。

そう言われてもなあ....

あんな経験をどう話せと言うんだ?


「サミー様、神子様の奇跡に私は驚いたりは致しません。

ただ受け入れるだけですわ」


リンの俺への信仰心によるブレない言葉は俺にとってはこそばゆい物だ。

何しろ俺は神様をイベントの飾りぐらいにしか思っていない元日本人だからね。


でも、サミーも呆れ顔だからな。

俺が特別に敏感な訳でも無いのだろう。


「それで、リン、彼女たちの様子はどうだ」


「はい、神子様に頂いたポーションを飲ませましたので生命の危険は去りました。

ただ、粉砕骨折は流石に治りませんでした。

それとやはり心は立ち直ってはおりません。

あれだけ凄まじい恥辱をゴブリンから受けていますし、なによりもゴブリンの子を孕まされていますから」


「そうか、まだ死を望んでいるのか」


「はい、実は昨晩一人がゴブリンの子を生みました。

それを見たせいで、残りの4人はゴブリンの子を産むぐらい位なら死にたいと言っています」


「そうか、それで生まれたゴブリンの子はどうしたんだ」


「彼女たちの目の届かない所で殺しました」


まあ、殺すしかないよな。


「幸い、ゴブリンの子供を産んだルイはゴブリンの子供に全く愛情は無いようで殺したと伝えても動揺はしていないのが救いではあります」


ルイね、彼女を突破口にするのが良さそうだな。


俺はこれからの進め方を心で決めて彼女達のいる部屋へと入る。

部屋の中は清められていて最初来たときの豚小屋のような部屋とは別物だ。

五人の女達も垢もゴブリンの精液も洗い流されて清潔な服を着せられている。

でも、目には生気はなく、確かに死にたがっているようだ。


「お前達は死にたいのか?」


俺は女達に尋ねてみる。


それに対して返事はないが、首を縦に振っているので同意しているのだろう。


「それで、死ぬのは勝手だがゴブリンから救った俺に対する礼金の支払いはどうする気だ?」


「そんな、今の私達にお金など無い」


答える気力がある女がいるようだ。

腹が膨らんでいないからルイという名前の女だろう。


そして言い分は最もだ。何しろゴブリンに全て奪われているからな。

まあ、それを俺たちが回収してしまったしな。


「街に戻ってから支払うのでも問題は無いぞ」


「私達は無一文で天涯孤独だ。

誰も私達に金など出さないだろう。

それにこんな身体だしな。

どうやっても貴方に礼金を支払うのは無理だ」


「それでは、その身体を持って支払ってもらうか」


俺がそう言うとルイの顔が絶望に歪む。


「お前はゴブリンから私達を救ったと言いながら、同じ地獄に私達を落とすのか」


腹の底から振り絞ったような声だな。


「お前は何か勘違いしていないか。

俺はお前達を慰み者にする気は無いぞ」


「なら、何故私達を欲するのだ。

手足も満足に動かない私達など慰み者以外の使い道など無いだろう」


普通はそうだよな。


「なあルイ、ここにいるリンはお前達の知り合いだよな。

そしてどんな経緯を経て俺の元にいるか聞いていると思うんだが?」


「リン先輩の話は聞いたさ。

先輩達はポーションの力で健常な身体を取り戻し貴方に仕えている。

でも、私達はポーションを使っても手も足も満足に動かないんだ。

こんな私達では使えるのはゴブリンに散々使われたアソコぐらいだ。

もっとも、ゴブリンが使ったアソコなど貴方には一文の価値もないのかもしれないがな」


おい、自分の言葉で傷付くなよな。


「ああ、お前の身体など俺は求めていない。

それにポーションで健常な身体を取り戻せなかったと言っているが、今までお前達に与えてのは普通のポーションだ。

リン達を健常に戻したのはスペシャルなポーションだからな」


「スペシャルなポーション??」


「ああ、スペシャルなポーションだ。

お前達が俺に仕える気があるならそのポーションを作ってやる。

そうすれば健常な身体を取り戻せるぞ」


「手足が治る……」


ルイは俺の言っている事に反応しているが他の4人は無反応だな。


「ルイ、お前は望むか?」


「はい、望みます」


少しの逡巡の後ルイは答えた。


ルイは思う。

私は死にたいと思っていた。

でも、私は望んでしまった。

手足が健常になれば生きる意味を見つけられるのだろうか?

分からない?

でも望んだのだ。


そして、リン先輩がどうやってスペシャルポーションを作るかを私に教えてくれた。

おっぱいを吸われる。それは私の裸をオイゲンさんに見せるという事だ。


恥ずかしい、一瞬そう考えて後でそんな感情がまだ残っていた事に驚きを覚えてしまう。

今更だ、ゴブリンの慰み者のくせに裸を恥ずかしがるなんて。


そんな事よりの真剣に願わないといけないのだ。


リン先輩の説明が終わるとオイゲンさんが近づいて来る。

そしてポーションの作成を始めると宣言される。


私は促されて服を脱ぐ。

下着は着けていないのでワンピースの服を脱いで仕舞えば私の身体を隠すものは何も無い。


オイゲンさんの手がそんな私のおっぱいに近づいて来る。

私のおっぱいにその手が触れるのだと気づくと急に心臓の鼓動が早くなる。


ゴブリン達の手で私のおっぱいが弄ばれるシーンが幾重にもフラッシュバックする。


力任せに潰される私の乳房、そして乳房の皮膚を切り裂くゴブリンの爪。

更には臭い息を吐くゴブリンの口に含まれる私の乳首。

その乳首がゴブリンに強く噛まれて血がにじむ。


そんな映像が重なり合うのだ。


思わず身体を逸らしてオイゲンさんの手から逃れようとする。

でも、少し遅かったようだ。


私のおっぱいにオイゲンさんの手が触れている。

その感触で身体中に虫唾が走る、鳥肌が立つ。

でも、少し違う事に気づく。


ゴブリンの冷たい手では無い、温かな肌の触れ合いだ。

それを感じた時、身体から不快感が無くなる。

温かな手は優しく私のおっぱいに触れている。

ゴブリンとは全然違うんだ。


すると、恐怖に強張っていた身体の力が緩むのが分かる。

ヒャン、乳首が唇に含まれる。

柔らかな舌が私の乳首を刺激する。


そしてオイゲンさんの唇が私の乳首をリズムカルに吸い始める。

なんだろう?

おっぱいが熱くなる。

心臓の鼓動が頭の中に響き出す。


私の身体を何かが駆け巡りそれがおっぱいに集まってくる。

おっぱいが爆発するんじゃ無いかと思うほどその何かが集まった時。

それが乳首から流れ出す。


「ヒャ、ヒャ、ヒャアアン」


おっぱいが、流れ出す奔流で刺激される

そして私は望むのだ。


砕かれた骨が治りますようにと。

ゴブリンの子を孕んで醜く伸びきった腹が、黒く大きくなった乳首が元の少女の物に戻りますようにと。


そんな思いが私の中を駆け巡る何かに染み出してゆく。

そしてそれは私のおっぱいに吸い付くオイゲンさんへと運ばれる。


私の想いがオイゲンさんへと流れていくかのようだ。


「ア、ア、アア、アアアア、アン」


私の想いが全てオイゲンさんに届くと同時に私の身体が光に包まれる。


「さあ、ルイ、このポーションを飲むんだ」


いつの間にかオイゲンさんの手にはポーションが握られている。

そして、そのポーションがオイゲンさんの手で私の口に流し込まれる。


すると私は温かな光に包まれて、砕かれている骨が再生してゆく。


柔らかな笑みを浮かべるオイゲンさん。


無気力だった筈の四人の仲間が私を見つめている。

そして、その目には涙が滲んでいる。


私の身体から光が消える。


そして……


私は確信を持って手足を動かしてみる。


「動く、動く、治っている」


雄叫びのような声で私は告げる。

四人の仲間の目に生気が戻る。


声にならない声が四人から上がっている。

オイゲンさんの奇跡を讃える声だ。


そして優しく微笑んで私を見つめているリン先輩。


私もリン先輩と同じ道を歩むのだ。

私はそう確信するのだった。





















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