第50話 龍の卵の育成者

周りが明るくなってきたので俺は目を覚ます。

どうやら日が出てきたようだ。


一瞬、何処にいるかと悩んだ後で荒野で野宿をしていた事を思い出す。


荒野で毛布一枚に包まって寝た割には温かかったな。

そう思うと同時に隣から伝わってくる人肌の温かさに気が付く。


そうか、最初は銀、次はサミーが一緒の毛布に居てくれたんだ。

そう言えば、眠りに落ちた時は銀のおっぱいを掴んでいたな。


俺は自分の手に感じるサミーの素肌の感触を楽しみながら、途中で銀とサミーが入れ替わったのを思い出す。


「ひゃん」


俺に触れられる感触でサミーが可愛い声を上げる。

どうやら俺の手がサミーのおっぱいに当たったみたいだ。

俺はサミーのおっぱいを握りしめたいという誘惑を抑えて起きる事にする。


毛布から抜け出そうとして僕がもぞもぞと動いているとそのせいかサミーが目を開けて俺を見つめている。


「オイゲン、おはよう」


なんだろう、見慣れたサミーの顔がいつもと違って見えてしまう。


「おう、おはよう」


少したどたどしい挨拶が二人の間で交わされる。


「だまって、毛布から抜け出すのは反則だぞ」


そう言いながらサミーが俺に抱き着いてくる。

サミーの素肌の感触が俺の素肌に伝わってくる。

そして素肌の感触以上の柔らかな感触、サミーの双丘が僕に押し付けられて潰れている感触も伝わるのだ。


「オイゲンの肌はつるつるしていて気持ちが良いな」


サミーが俺の耳元でささやく。


「サミーの肌も気持ちよいよ」


俺はサミーの双丘の感触を胸で堪能しながら、後ろに廻した手でサミーの背中を撫でまわす。


「ひゃああん、だめ!

朝から、離れられなくなるだろう」


サミーはそう言うと僕から身体を離すのだが、その拍子にサミーの双丘が目に飛び込んでくる。

昨日まではなんとも感じなかったその双丘に自分の目が釘付けになってしまう。


「オイゲン、どうしたんだ、私のおっぱいが今更珍しいのか?」


あけすけなサミーの言いように俺は不貞腐れてサミーの双丘から目を離す。

そして二人とも毛布の中で服を整え始めるのだ。


「2人とも起きましたか。

簡単な食事ですが用意済みです。

食べましょうか」


銀が俺達に声を掛けてくる。

その銀の声が俺と銀との濃厚なキスの感触を俺の唇に呼び覚まし、銀の顔を見るのが恥ずかしくなる。


「今日の朝食は簡単なスープとパンです」


いつもと同じように銀は振る舞っているが、俺を見て泳ぐ目に銀も昨夜の事を思い出して恥ずかしがっていることが見て取れる。


それでも、朝は普通に始まるのだ。

器に注がれた温かなスープから昇る香りに食欲が刺激される。


「いい塩加減だ、それに香辛料が良い仕事をしてるよね」


「本当だな、銀は料理が上手だよ」


2人して銀の作ったスープを褒めると銀の顔が綻ぶのが分かる。

朝から良い感じだ。


「それで、主様、今日はどうされるのですか」


銀が俺に今日の予定を聞いてくる。


「そうだな、まずは昨日使った魔法の爆心地に行ってみようと思う。

そこで魔法の威力の確認をしてからここに戻って威力を落として昨日の魔法を再現するつもりだ」


夢に出てきた龍の話はどうしようかな?

荒唐無稽な話だけれど、そもそも身体が急に大きくなった時点で言わずもがなかな?


「ねえ、2人とも龍は見たことはあるかい」


少し唐突だったかなと思いながら龍の話を俺は切り出す。


「主様、龍は伝説の生き物です。いろんな話は聞きますが実物を見た人は少ないと聞いています」


「そうだな。私も話でしか龍の事は知らないな」


「なあ、これから2人に他言無用の話をするのだけど聞いてくれるか」

「主様の秘密ですか?

主様が秘密と言うからには大層な話なのでしょう。

それを銀に話して頂けるのは光栄です。

もちろん、他の人に話したりは致しません」


「私も誓うよ」


2人が秘密を守ると言ってくれたので俺は話を始める事にする。


「爆心地に向かうのは魔法の威力の確認もあるが龍の巣を探すためだ」


「「龍の巣ですか」」


突然の俺の話に2人が同じように驚きの反応をする。


「ああ、龍の巣だ。どうやら爆心地のすぐ側に龍の巣があるようだ。

そして俺の魔法で巣にいた龍は死んでしまった様なんだ」


なんでそんな事が解るのだろう?

2人の瞳が俺にそう訴えている。


「実は、死んだ龍から俺はギフトをもらうと同時に依頼を受けたんだ」


「ギフトに依頼ですか」


「そう、ギフトはランクアップといくつかのスキル。

具体的には亜空間倉庫と身体強化、それと感知の3つだ。

それとそれを受け入らられるように身体を成長させられた」


「それでは、主様の身体が急に成長したのは」


「そう、龍のギフトを受け入るためだ」


「主様、ランクアップとスキルですが、どちらもあるのではないかと言われてはいますが未だ確認されていない概念です。

身体強化と感知については筋力では説明できない力を出せる人や五感だけでは説明できない感知能力を持つ人は確認されていますが、それがスキルという事なのでしょうか」


「それに亜空間倉庫と言うスキルは聞いた事がないぞ」


「どうやらランクアップやスキルは俺が龍からもらった依頼を達成するためにくれたみたいだな。

普通では人の身では手に入らない物が貰えたのはそのせいでだろう」


「主様、龍から人が何かを頼まれると言うのも途方もない話ですよ。

一体何を頼まれたんですか」


「それなんだが、どうやら龍は巣で卵を育てていたみたいなんだ。

龍が死んだのも卵を守る事に力を集中して自分を守ろうとしなかった為のようなんだ」


「龍が卵を育てていたんですか?」


「そうだよ。そしてその卵を無事に孵す事が俺の頼まれごとだ」


「それは大変な事を頼まれたな。

希少な龍種の未来の為には卵から次代の龍が生まれる事は是非とも必要な事だからな。

龍としては命を捨ててでも卵は孵したかったんだろうな」


「そうだろうな、俺は知らなかったとは言え卵を育てていた龍を殺してしまったんだ。

対価ももらった以上卵を無事に孵すぐらいの事はやらない訳にはいかないだろうな」


「それでは主様は卵を見つけて育てるのですね。

でも、龍の卵の孵し方などわからないのではないですか」


「それなんだがな。

俺は亜空間倉庫はその為にあるんじゃないかと思うんだ」


俺は亜空間倉庫に入り口を開けろと心の中で命令する。


「わっ、なんですかこの扉は」


「これが亜空間倉庫の入り口だ。入るぞ」


俺が扉を開くと扉の先に広い空間が現れる。


「中は明るいな。どうやら壁が発光しているようだ。

さて、入るぞ」


俺を先頭に銀とサミーも続いて中に入る。


「倉庫と言うには快適な空間だな。

明るいだけじゃなく、室温も快適に保たれてるようだな」


「オイゲン、奥に何かあるぞ」


サミーが指差す先には祭壇の様な物が見える。

近付いてみると、祭壇の様な物は何かを2つ安置する場所の様だ。


「なあ、主様、此処は龍の卵を置いて置く場所じゃないか」


銀も俺と同じ事を思っていた様だ。


「確かにその様だな。

ここは柔らかいのかな?

うわあああ」


卵を置くと思われる場所に手を触れた途端、ここの使い方が頭に飛び込んでくる。


「おい、オイゲン、大丈夫か」


気が付くとサミーが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。


「ああ、大丈夫だ。触れた途端の俺の頭の中にここの使い方が流れ込んできたんだ。

やっぱり、ここは卵を孵化させる場所みたいだ。

ここに卵を置いておくと亜空間倉庫の持ち主のマナが卵に与えられて卵が育つ様だ」


「でも、主様はマナを使いこなせないのではないのか」


「そこは大丈夫だ。もらったスキルもマナが必要なので、俺の魔力をマナに変換する器官を龍からもらっているんだ」


「それはまた至れり尽くせりですね」


「確かにな。でも全ては卵のためだろう。

龍の奴、恩着せがましく言ってたが、俺を安全な卵の孵卵器に仕立てた様だな」


「それでも亜空間倉庫は凄いです。

これだけの広さがあれば大抵の物は置けますし、ここに泊まれれば野宿も随分と楽になりますよ」


「そうだね。温度は快適だし、雨の心配もいらない。

何より襲われる心配をしないで寝れるのは凄い事だよ」


銀もサミーもここが気に入った様だ。

確かにベッドとかを入れれば野営の時の上等な宿泊場所にも出来るな。


「さて、見つけた卵の孵し方も分かったから卵を回収に行くよ」


そして俺は凄い可能性に気付いてしまう。

それは扉の出現場所を選べるんじゃないかと言う可能性だ。

だから俺は意識する。

扉を開けた先にあるのは龍の寝ぐらだと。


そして扉を開けた先にあったのは禍々しい洞窟だった。


「オイゲン、これって!」


「ああ、龍の寝ぐらだ」


「これはとんでもない能力だろう。

扉の出現場所を自由に選べるなら一瞬で好きな場所に行けるぞ」


「ああ、とんでもない。だから銀もサミーもこの件は他言無用だぞ」


真剣な俺の顔に釣られる様に2人も真剣な顔でうなずいてくれる。


そして俺たちは扉を超えて龍の寝ぐらへと足を踏み入れるのだった。







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