第46話 ゴブリン殲滅戦

オーランドに行くに当たって問題となっていた2点の問題は解決しました。


薔薇の騎士達の練度は向上し帝国時代の全盛期に近づいて護衛騎士を務めるのに充分な実力を取り戻しました。


マリーに関しては四肢が回復したのは良かったのですが、僕と精神年齢だけでなく肉体年齢も幼くなったせいか僕への依存がひどくなってます。


「オイゲン、もっと私に構いなさいよ」


僕にピタッとくっ付きながら僕に我が儘を言ってくるのです。

なぜか、神様扱いからシモベ扱いに変わっています。

まあ、神様みたいに崇め立てられるよりはずっとマシです。


そんな訳で、オーランドに一緒に連れて行く事にしました。

だって、僕から離れませんからね。


☆☆☆☆☆



「では行ってまいります」


「シャロン、オイゲンを宜しく頼むよ。

大人びていてもオイゲンはまだ子供だからな。

シャロンがしっかりと手綱を握ってくれ」


シャロンを団長としてオーランドに出発です。

片道4泊5日の工程の旅です。

前回はお尻がとっても痛くなったので今回は大きなクッションを用意して馬車対策もバッチリです。


本命の大量破壊兵器の実験は、父さまの領地と隣の領地の境にある脇道を入って半日ほど進んだ先にある荒れ地で行う予定です。


そして2日めには、何事もなく脇道の近くまでたどり着くことが出来ました。

ここで僕はシャロンに小芝居をうたないといけないのです。


「シャロン、僕は父様から密命を受けているので今からその密命の遂行に向かわなくてはいけません。

密命ですので目立たない様に少人数での行動が求められます。

ですから、銀(真名:舞緋)とサミーの2人を連れて行きます」


「3人でなんて危険だろう。

カルロスにくれぐれもオイゲンをよろしくと言われてるからな。

俺も付いて行くぞ」


「シャロンは団長ですから残ってみんなを指揮する必要が有ります。

僕たちが戻ってくるまで薔薇の騎士達と訓練を積んでください」


僕は無理やりシャロンを納得させます。


「私も行く、ついて行くの」


今度はマリーです。

年相応になったのは良いのですが、我が儘にもなっています。


「ねえ、マリー。マリーは薔薇の騎士のリーダーなんだからみんなと一緒に居ないと行けないんだよ。

マリーは良い子だから分かるよね」


「オイゲンはマリーのおっぱいが小さくなってから冷たくなった。

もう、マリーのおっぱいに興味がないんだ」


なんでここでおっぱいの話になるんですかね?

確かにマリーのおっぱいは年相応に戻りましたから今は微乳ですけどね。


「ねえ、マリー、僕はマリーの微乳も好きだからね。

おっぱいの大きさで差別なんかしてないよ。

それに、僕は聞き分けの無い子は嫌いだな。

僕はマリーを嫌いにはなりたく無いんだけどなあ」


「ひっ、嫌、オイゲンはマリーを嫌いにならないの。

分かった。みんなとマリーはオイゲンを待ってるから。

その代わり、戻ったらマリーのおっぱいをいっぱい吸うの。

いいでしょう、オイゲン」


何その交換条件、まあマリーが良い子でお留守番するなら受けますか。


「分かったよ、マリー、マリーは良い子だね。

だから帰ったらマリーのおっぱいをいっぱい吸ってあげるよ」


「えへへへへ、分かった」


シャロンとマリーの説得が終わったのでやっと荒れ地に向かえます。

今日中に戻りたいので急ぎ出発です。


目的地に向かう道は目の前にある山を迂回する形で作られています。

ですから目的の荒れ地は山の裏側にあるのです。

その為、派手にやっても山が目隠しになってシャロン達にはバレないはずです。


1時間も歩くと道は細くなり獣道の様相を示します。


「これは、すごい道だね。

サミーはなんでこんな所を知ってるの」


「オイゲン、私はエルフだよ。

山や森は私の友達だからね」


「いや、サミー、それって答えて無いよね」


「もう、オイゲンは細かいね。

あんまり細かいと女にモテないよ。

まあ、ぶっちゃけると冒険者をしていた時にゴブリンの退治で来たことがあるからさ」


ゴブリン、ゴブリンですか。

異世界の定番ですね。

冒険が始まる気がします。


「ああ、心配しなくてもその時にゴブリンの巣は殲滅したからね。

もう、ゴブリンは出て来ないから安心してくれ」


そうですか。

ゴブリン、ちょっと見たかったんですけどね。

出て来ないんですか。

残念です。


☆☆☆☆☆


そう思っていた時もありました。


「オイゲン、左、2匹飛び出してくるぞ。

サミーは右、3匹だ」


銀の指示がきます。


「ぐぎゃ、ぐぎゃ、ぎゃぎゃぎゃああ」


きみの悪い声と共にゴブリンが飛び出してきます。

でもゴブリンは僕の視界に入った瞬間に頭を破裂させます。


サミーの前に現れたゴブリンもサミーの魔法で一撃です。


「ハッ、ハッ、ハッ、キリがないね。

銀、まだいるかい」


かれこれ20匹は殺したはずですが、本当にゴブリンは次から次へと湧いてきますね。


「いや、近くには気配は無いな」


「そう、取り敢えずは安心か」


一息付いた所で、僕は怨みがましくサミーにたずねます。


「ねえ、サミー、ゴブリンは殲滅したんじゃ無かったの」


「したさ、したはずだ。

でもあいつらってG並の繁殖力だからな。

撃ち漏らしたゴブリンがまた繁殖したんじゃないか」


サミーは他人事のように答えます。


「それで、主様、これからどうされますか」


「そうだね、サミーが潰したゴブリンの巣はここから近いのかい」


「う〜ん、多分30分も歩けば着くと思うけど」


30分ですか。街道からそう離れていないって事ですね。

放置すると旅人や商人に犠牲が出そうですね。


「それじゃあ、潰しに行きますか」


「ゴブリン退治か。あいつらの巣は臭いんだよな」


「サミー、サミーはゴブリンの巣を全滅させたってことで賞金をもらったんでしょう」


「まあ、そうだよ」


「だったら、ちゃんと全滅させないとまずいでしょう」


「そ、そうだな」


少しは責任を感じて欲しいですね。


「それじゃあ、サミーがペナルティを喰らわないためのゴブリンの殲滅に向かいますか」


僕達はサミーの先導でゴブリンの巣に向かいます。

そしてサミーの言う通りに30分ほど歩くとそれは見えてきました。


「ゴブリンて洞窟に住むもんだと思ってたんだけど」


「ゴブリンだけだとそうですね。

でも上位種が生まれるとそいつの指導の元、多少は文化的になるんですよ」


そう、ゴブリンの巣って言うからてっきり洞窟だと思ってたのですが、目の前には粗末ながら柵に囲まれた集落があるのです。

もっとも、建物は小屋とも呼べない竪穴式住居みたいな作りです。


「ねえ、銀、上位種がいる場所は分かるかい」


「そうですね。あの中央の少し大きな建物にいる個体が他の個体より強そうな気配を振りまいてます」


「そいつか!

それじゃあ、先ずはそいつを殲滅するか」


「ちょっと待ってください。

あの小屋には上位種の気配に加えて人の気配がします」


「ゴブリンの小屋に人の気配、それって」


「今にも消え去りそうな気配が5つあります。

ゴブリンの慰みものにされていると思われます」


「死にそうな人が5人もあの小屋に居るのか。

それじゃあ、周りの小屋を派手に強襲して出てきた所で仕留めよう。

銀にサミー、周りの小屋を派手にぶっ壊してくれ」


僕の指示で2人が2手に分けれます。左の小屋3戸を銀が、右の小屋3戸をサミーが潰すようです。


「ファイアーボール」


「ウインドカッター」


2人が声を発すると炎と風が小屋を破壊します。


「バアアン」


「バキ、バサ」


魔法の炎と風が小屋に襲いかかると小屋は呆気なく崩壊します。


「ギャ、ギャギャギャ」


小屋の中から怯えた声を上げながらゴブリン達が飛び出してきます。


「パーン」


僕の視界に入ったゴブリンの頭が弾けます。


「ドグアアン」


銀のファイアーアローがゴブリンの身体を吹き飛ばします。


「バキ、バキバキバキ」


サミーのウインドカッターがゴブリンの身体を切り裂きます。


「ギャ、ギャワアア」


「ヒャア、ヒャアアアア」


「ヒ、ヒ、ヒ、ヒイイ」


まだ殺されていないゴブリンはいきなり仲間が弾け飛び、燃やされ、切り刻まれるので阿鼻叫喚のパニックに陥っています。


「ギャ、ギャ、ギャワアア」


上位種のいた小屋から怒声を発して2回りは大きなゴブリンが飛び出してきます。


「ポン」


乾いた音と共にそのゴブリンの目玉が飛び出し、目玉が無くなった眼窩からは液状になった脳味噌が吹き出します。


「ヒ、ヒ、ヒ、ヒャアア、ウワワワワワ」


リーダが一瞬で倒されたのを見て残りのゴブリンが我先にと逃げ出そうとしますが、僕達3人の魔法からは逃れられません。


直ぐに生きたゴブリンは居なくなり、ゴブリンの死体だけが転がっています。


「主様、大丈夫ですか」


「オイゲン、気分は悪くないか」


2人とも僕を心配してくれます。


「大丈夫ですよ、帝国の兵士を殺した経験がありますからね。

ゴブリンを殺しても少しも心は痛みません」


帝国の兵士を殺していなかったら相手はゴブリンとは言え、無残な死体が転がり、血の臭いが充満する状況はキツかったと思います。


「2人ともありがとう。

僕は大丈夫です。

それより、リーダが居た小屋を確認しましょう」


死にそうな気配の人間がいるはずです。

助けられるなら助けたいですね。


僕達は急いでリーダが居た小屋に向かいます。

そして、中を覗き込むと、そこには確かに人の姿があります。


10ではきかない数ですね。

でも息があるのは、銀が言った通り5人ですかね。

5人とも思った通り若い女のようです。

そして全員が臨月間近に思える大きなお腹をしています。


「こ、これは」


銀が顔を背けます。


「クソ、あの時確実に駆除していれば」


サミーが苦渋に満ちた声をあげます。


全裸の女達はゴブリンの慰み者として逃げ出せないように手足が折られています。

そして首には縄がつけられて柱に繋がれています。


「しっかりしてください」


近寄って声を掛けますが、虚な目は僕を捉えていないようで反応はありません。

僕は体内に蓄えた魔力で体力回復ポーションを作成して5人に飲ませます。


「や、やだ、やだ、もうやめて。

逆らわないから、大人しくするから。

もう痛いのはいや」


「うわあああ、やだよ。

ゴブリンの子供なんか産みたくないよ。なんで、なんで、私のお腹が大きくなるの」


「うわああ、やだ、やだ、動いている。私のお腹の中でゴブリンの子供が動いている。

とって、とって、いらない、いらないんだから」


喋れるようになった途端、女達の呪詛の声が響きます。


「銀、人手と物が足りない。戻って薔薇の騎士を3人連れてきて、

後、身体を清めるのに必要な道具と着せる服をお願い」


「主様、了解です。急ぎ行ってきます」


銀は僕の指示を聞いてすぐに薔薇の騎士達の元へと向かいます。


「オイゲン、この女達を生かすのか。

殺して欲しいと望むかもしれないぞ」


「この状態ではそうですね。

でも僕には女達は殺せませんよ」


「そうだな。でもこの女達の腹には『分かってます、分かってます、それでも……』、そうか、オイゲンは優しいからな」


やさしい、本当にそうでしょうか?

今にもゴブリンを産みそうな女達に対して何が優しさなのか僕にはよく分からないんです。

ただ、出来ることをするだけです。




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