第27話 サミーが僕を疑うんです、でも僕も自分が怖くなり始めてます

銀とサミーに魔法を教えてもらうという企みは、僕的には素晴らしい攻撃魔法が見つけられたので、とても満足な結果でした。


でも、2人には不満しかない結果だったみたいです。


「だってね、オイゲンは私の魔法をこれっぽっちも模倣してないから。

あの凄い魔法はオイゲンが自分の力で考えて発明した魔法だからね。

私は全く役に立っていないわよ」


サミーは自分が役立たずだと力一杯主張してます。

変わってますよね。


「そうです。銀は主様が凄すぎて銀程度では主様に仕える資格など無いのではと考えるほどです。

主様の頭の中は一体どうなっているのですか?」


銀もですか!

困りました。

2人が完全に自信を無くしているようです。


「ねえ、銀にサミー。僕が知っている魔法と言えば母さまに習った生活魔法だけだったんですよ。

だから攻撃魔法って名前は聞いていたけど、どんな物かは全く解らなかったんです。

それを教えてくれたのは2人ですよ」


「なあ、オイゲン。無理な慰めは返って相手を傷付ける場合もあるんだぞ。

あんな凄い攻撃魔法が使えるのに、攻撃魔法がどんな物か解らなかったとかあり得ないからな」


サミー、いじけ過ぎですよ。困りましたね。


「じゃあ、サミーは生まれた時から攻撃魔法が使えて、その威力も知っていたんですか」


「そんなわけ無いだろう。私達エルフの村では魔法を教える教師がいたからね。

その教師に教えてもらって初めて魔法は使える様になるのさ」


「ですよね、僕も同じですよ。この領地には攻撃魔法を使える様な魔法使いはいないんです。

だから、今まで、僕は魔法を教えてくれる教師には出会ってないんですよ。

やっとです、やっと出会ったんですよ。銀とサミーという教師にね。

そして今日初めて攻撃魔法を教えてもらって、攻撃魔法を使える様になったんです」


「主様、そうだったんですね。

銀は主様の初めての魔法教師なんですね。

そう考えると恐れ多くて胸が潰れそうです」


素直な銀は直ぐに僕の言う事を信じてくれました。

でも……


「そこなんだよ、そこ。

今日初めて攻撃魔法を見て、直ぐにあの魔法を編み出したなんて。

出来過ぎなんだよね」


「じゃあ、サミーはどう思ってるんですか」


「これは、長命種のエルフである私だから分かる事だけど。

オイゲンは、私達の同類だ」


「いや、サミー、それは無いだろう。

主様の耳の形を見れば主様がエルフで無いことは一目でわかる」


おお、銀がぼけてます。


「銀、私はオイゲンがエルフだとは言っていないぞ。

オイゲンは私達エルフと同様に、姿と生きてきた年月が合わない長命種だと言っているんだ。

見た目は子供でも、大人以上に学んで経験もしているはずだと言っているんだ」


おっ、サミーはおバカキャラかと思っていたんですが僕の本質を見抜きましたか


「でも、僕は7歳児ですよ、それは母さまに聞いて貰えば分かる話です」


「いや、もっと簡単なやり方があるんだ。

そのやり方で、オイゲンはこの幼い体で実際は大人なんだと、証明してやる」


「なあ、サミー、主様が大人だとどうやって証明するんだ」


銀がサミーに不思議そうに尋ねていますね。


「そんなの決まっている、オイゲンが大人なら私の体に夢中になるに決まってるんだ。

なあ、オイゲン、カルロスと同じ様にお前も私の体に夢中になるか試してやる。」


「ちょ、ちょっと、サミー、それはずるいです。

主様が女の体の夢中になるなら、最初にその栄光に預かる体はこの銀の体です。

主様、銀の体に夢中になって頂けますか」


はあ〜、2人が急にバカになってしまいましたね。

これはサミーが原因です。

そのおバカサミーが僕に近づいてきます。


「オイゲン、私が天国に連れて行ってやるからな」


い、いや、遠慮します。

僕はそう言ったつもりでした。

でも言葉になりませんでした。


だって、サミーの舌が僕の口の中に入り込んでいて言葉にならなかったのです。


「う、うう、うううむうう」


意味不明の音だけしかでませんね。


うわあ、なんかヤバいです。

サミーの舌が半端ないんです。


こ、これがエルフの舌なんですね。

人間の舌よりもずっと長くて、しかも口の中を自由に動き回るんです。


「クチュ、クチュ、チュウウウ」


「はああ、どうだ、オイゲン、エルフの舌使いは凄いだろう。

ただ人が簡単に味わえるものでは無いんだぞ」


いや、味わっているのはサミーの方でしょう。


「サ、サミーは幼児趣味だったんですね」


「幼児趣味だと、そんな訳無いだろう。

私はオイゲンの正体を暴こうとしているだけだぞ」


耳を赤くして顔を背けて言っても説得力は無いですけどね。


「大体、オイゲンは女と見ればおっぱいを握りしめて乳首をしゃぶる女好きだろう。

そんなオイゲンに私の事をどうこう言う資格は無いんだ。」


うわ、またです。またサミーにキスをされます。

不味いです、サミーの舌が気持ちよすぎるんです。

サミーも全然やめてくれないし、そろそろ息が苦しいんですけど」


「パッカーン」


「うぎゃあ、銀、何すんの。痛いじゃないか」


サミーが頭を抱えています。

どうやら銀の拳骨が頭に落ちたみたいですね。


「サミー、主様が苦しがっている」


流石は銀です。僕のことを気遣ってくれたんですね。


「銀、銀は美人だが男女の機微に疎すぎるぞ。

オイゲンは私の舌を向かい入れて自分の舌で愛撫していたんだぞ。

それなのに邪魔をするなんて。

せっかく、良い感じになりそうになった処なのに」


「サミー、人聞きの悪いことは言わないでくれますか。

サミーの舌が無理やり押し入ってきただけじゃないですか。

こんな幼子に欲情するのはやめてください」


「そうだぞ、サミー。これ以上は銀が許しませんよ」


「わ、分かった、分かったから。

銀、その手を下げような。

ファイヤーボールの実演はもう終わったんだからな」


「そうですね。今は終わりにしておきます

でも、サミーが主様に失礼な事をした時は、二度とそんな気が起こらない位、サミーを的に実演をしましからね」


「分かった、分かったから。

銀は本当に頭が硬い。

こんな中途半端な状態でやめさせられる身にもなって欲しいものだ。

しょうがないから、この後はカルロスに遊んでもらうか」


あら、父さまに飛び火してしまいました。

まあ、父さまなら大丈夫ですね。


「でも、オイゲンは絶対に年齢詐称をしている。

だって、キスが上手すぎる」


サミーが何かぶつぶつと言っていますが無視します。

本当にいきなりキスとかやめて欲しいです。

前世の振られた彼女とのキスを思い出してしまいますよ。

哀しすぎるじゃないですか。


そして、サミーが落ち着いてくれましたので、今は2人で片付けをしてくれています。

僕もやりますと言ったらサミーから子供は座って見てなさいと言われてしまいました。

大人と言ったり、子供と言ったり、サミーの頭の中はどうなってるんですかね?


そう、頭の中です。

暇な僕は物思いに耽ります。


あの魔法は、我ながらとんでもない発想でした。

高圧で圧縮した小さな空気の玉を脳内で出現させれば凄い武器になる事に気付くなんて。


脳内で圧縮空気が出現して、圧が解放されたら簡単に脳が破壊できますし防ぎようは無いですよね。


これって無敵ですね。


魔法はイメージだ、この言葉は正しかったです。

そして僕なりのイメージからあの対人用の攻撃魔法が生み出されたんです。


その根本にあるのは僕の魔法への考え方です。

まず、僕の体内にある魔力が直接作用して何かに変わることは無いはずです。

魔力は触媒で取っ掛かりなんです。


なんでそう思うかって?

だって、その方が理屈に合うんです


そして、触媒たる魔力が高次元空間(神の領域でも良いですけど)で作用して、物質の設計が行われ、高次元空間で設計どおりに物質が作られるんです。

そして高次元で作られた物質が僕のいる3次元空間の僕の指定する場所に実体化するんです。


でも、不思議なんですよ?

魔法で作れる物質はたったの1グラムって言う枷があるのに、1グラムの物質に与えるエネルギーに対するの枷はないんですよね。


これってバグですかね?


いや、違いますね。

1グラムの物質を作るのに必要なエネルギーに比べれば物質に持たせるエネルギーなんて誤差の範囲なんですね。


だって、長崎に落とさせた原爆は1グラムの質量をエネルギーに変換しただけだそうです。

1グラムの物質が消失するだけで長崎の原爆と同等のエネルギーが放出されるんです。


そう考えると魔法で無から1グラムの物質を作れるって凄いことなんですね。

僕は手の平の上にある魔法で作り出した1円玉を眺めながらこれを作り出すことの凄さにめまいを覚えました。


そして、恐ろしい考えが頭に浮かびます

1グラムの反物質を作り出して、この世界に実体化させれば、この世界の1グラムの物質と対消滅して全てエネルギーに変わります。


つまり、長崎型原爆の2倍の威力のあるエネルギー解放が起きるんです。

これは戦略級の兵器ですよね?


これ、出来ちゃいますかね?


いや今は取り敢えず止めましょう。


自分で考えていて恐ろしくなりました。

僕は悪魔にはなりたくないです。

だから僕が悪魔にならないで済む様に、この世界は平和であって欲しいと思います。


ほんとうに、そう思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る