第7話 7歳になりました、王国の正式な臣民になります
僕は7歳になりました。
僕は7歳になるこの日をワクワクして待ってました。
なぜだと思いますか。
えへへへ。
まず、7歳になるという事は、王国の臣民として承認されるという事なのです。
この世界では幼児は病気や栄養失調で簡単に死んでしまうのです。
なので、7歳になるまでは王国の臣民として扱われないのです。
7歳まで生き延びれば死亡率が大幅に低下するので臣民として王国に認められるんです。
だから、今日から僕も王国の臣民であり、父さまの正式な跡取りになったのです。
それ以上に嬉しいのは母さまとの約束があるからです。
母さまは僕がイライザのおっぱいに成長魔法を使ったのを知っていますから僕に魔法使いの素養があると思ってくれています。
なので、7歳になったら正式に魔法の使い方を僕に教えてくれると約束したのです。
えっ、母さまが魔法使いかって?
う~ん、正式な魔法使いではないんです。
でも、簡単な生活魔法は使えるのです。
生活魔法が使えるだけでは正式な魔法使いとしては認められませんが、魔法を使うのに必要な体内のマナの動かし方や、そのマナを媒体にどう魔法を発動するかは学べます。
だから、まずは母さまに生活魔法を教わって、魔法の基礎を覚えるのです。
それができたら父さまの書斎にある初級魔法の正しい発動の仕方という本で初級魔法を母様と共に学ぶ予定です。
そこで、才能が確認出来たら更なる魔法の学習のために家庭教師だって呼んでくれるって言われました。
でも、先ずは生活魔法です。
最初はライトという指先に明かりが灯る生活魔法の習得が目標です。
だから僕はすぐにでも母さまから生活魔法を学びたいのですが、その前にこなさなければならない7歳のイベントがあるんです。
それは教会に行って王国の臣民として登録してもらう事です。
これは結婚式、成人式と並ぶ3大イベントなので、子供たちはみな着飾って教会に向かいます。
そこのキミ、みんなが揃って教会に行けるのが不思議ですか?
そう思うキミは鋭いです。
王国の臣民への登録は芽吹きの日におこなうんです。
春が始まるこの日に7歳になっている子供を対象に一斉に行うんですよ。
だから、7歳児みんなが教会に集まって神の祝福を受けて王国の臣民として登録されるんです。
そして今、僕は教会に向かうための正装への着替えで母さまの着せ替え人形となっています。
「まあ、オイゲン思った通りね。とても可愛いわ」
母さまは僕が新しい服を着た姿を見てご満悦です。
「やっぱり、オイゲンはお顔が良いから、チョット服を変えるだけで可愛さが膨れ上がるのね」
ああ、母さま、僕は男の子です。
可愛いいって言われてもうれしくありませんよ。
「本当だな。オイゲンの顔は小さい頃のキミにそっくりだからな。
男にしておくのが勿体ないぐらいだよ」
「まあ、貴方ったら。私が小さいときの事なんか知らないじゃありませんか!」
「なにを言ってるんだ。僕が9歳の時にキミのお披露目会に招待されて一目ぼれをしたって話は何度もしてるじゃないか。
ほう、なんだその顔は。
そんなに嬉しそうにして。
キミは僕に何度も一目ぼれをしたってことを言わせたいのだね」
どうやら母さまは父さまに一目ぼれをしたって言わせたかったようですね。
「ええ、最近の貴方は私に愛してるって言ってくれませんしね。
夜はリリーの所に行ってしまうし。
私、寂しいんですもの」
あああ、また父さまと母さまののろけが始まりました。
まあ、しょうがない所もあるんですね
母様が妹を妊娠したのを契機にリリーがメイドから父さまの愛妾にジョブチェンジしたんです。
まあこれは前から決まっていたことらしくて母さまも合意でのことでした。
貴族って本当に大変です。
家を絶やさないためには複数の妻を持ち、多くの子供を産ませるのは義務なんだそうです。
まあ、我が家は貧乏貴族ですから、貴族の第二夫人を得る甲斐性はありません。
そんな貧乏貴族の家ではメイドを愛妾にするのが一般的らしいです。
だからリリーもうちのメイドに採用する時に、将来は愛妾になることも採用条件に入っていて、それを受け入れて家のメイドになったんだそうです。
でも、父さまの愛情は母さまから離れることは無いみたいですね。
寝室でイチャイチャできない分、こんな風にイチャイチャすることが増えました。
「ごめんよ。寂しくさせて」
父さまはそう言うと母さまを抱きしめてキスの嵐を浴びせます。
本当に父さまの愛情表現は場所を選びません。
まあ、そんな父さまに抱きしめられてうっとりしている母さまも大概ですけどね。
「ご主人様、奥様。そろそろ馬車に乗っていただきませんと教会への到着が遅れます」
リリーが抑えた声で父さまと母さまに声を掛けます。
「あら大変、貴方急ぎましょう」
「ああ、オイゲン準備はできてるかい」
父さま僕の準備はとっくに出来てますよ。
父さまと母さまが二人の世界に浸っていなければもう出発していたはずですよ。
でも、僕はそんな文句は言いませんよ。
「ハイ、準備はできています」
元気に答えて父さまに続き玄関へと向かいます。
「みなさま、行ってらっしゃいませ」
執事の声で扉が開き、外の眩しい光が玄関に溢れます。
今日は良い天気みたいです。
玄関の先には馬車が止まっています。
その馬車に父さま、母さまに続いて僕も乗り込みます。
そしてゆっくりと馬車は動き出します。
馬車って乗り心地は最悪です。
地面のデコボコが座っている座面に直接伝わります。
板に皮を張っただけの座面は固くてそれだけでもお尻が痛くなりそうなのに、これはたまりません。
だれかサスペンションとポケットコイルを発明してくれませんかね。
でも、幸いなことに家から教会は馬車で10分もかかりませんでした。
これなら歩いてくれば良いのにって思いましたが、これも貴族の嗜みです。
そして馬車から降りると目の前には教会があります。
勿論石造りなんかじゃ無くて木製の建物です。
でも、思ったよりは立派な教会でした。
中に入っていくと中は子供とその親で一杯です。
どうやら僕たちが最後みたいです。
当然のように一番前に向かいます。
そして、僕達は座っている領民に向き合います。
そうです、僕は小さいとは言え領主一族なのです。
その席から見渡せば、教会の椅子に坐っている大人も子供もみな誇らしそうです。
そして、みな今日のための晴れ着を着ています。
女の子はみんな髪を結い、飾りも付けています。
みんながちゃんと正装を出来るだけの余裕を持っていることで父さまの統治が素晴らし事が判りますね。
父さまが7歳を迎えた領民の子供に祝辞を述べてゆきます。
それは力強い言葉で母さまにのろけている時の父さまの面影はどこにもありません。
そこにあるのは領民を導く領主としての父さまの姿です。
僕はその父さまの姿を見て、自分が父さまの後を継ぐために父さまに近づくようこれから研鑽を積むことを誓うのでした。
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