助けるためにすることは

天ノ黒月

生き抜くための最善手

 俺は人の死が見える。人が自殺するとき、殺されるとき、病気で死ぬときに死が見える。人が死ぬとき真っ黒なオーラが見える。


「もう、俺なんて生きている価値ないんだ」

 電車が来る前にそういう風に独り言を言っている男がいた。やはり、そのオーラは全身が真っ黒。自殺するんだ。そう俺は分かった。

 だから、俺はわざと肩をぶつけた。

「なにをしているのだ?」

 そう、俺は男に向かって言った。大抵はこれで自殺する気持ちはなくなる。自殺したいという気持ちは一瞬たけなのである。

 そして男の真っ黒なオーラはこれで消えた。

 少しでも死にたいと思っているものはどこにだっている。少しのストレスで死にたいと思う。その積み重ねでそれが最高点になったときに実行に移すのである


 男の自殺を止めてから数日が立った。今度は車にひかれて死んでしまう5歳くらいの女の子が道路の反対側にいた。たとえ、5歳の女の子だって、生まれたばかりの子でさえ例外ではない。

 こういった場合はその女の子の行動を止めれば助かるはずだ。その後、案の定ボールが道路に出てしまった。

「危ない!」

 とっさに俺はそう叫んだ。

 そうすると女の子はびっくりして立ち止まった。ボールは車に撥ねられた。その後、その少女から黒いオーラは消えた。


俺のこの能力は先天性ではない。3か月ほど前に急に使えるようになったのだ。この能力が使えることに何かの意味があるはずだ。その意味はまだ俺は分かっていない。

 俺には親友と呼べる友達が二人いる。二人とも幼馴染で一人は男の和明、もう一人は愛華だ。こいつらとはどんなことだって話すことができる。

 その三人は同じ高校に通っている。そして、朝、和明といつものように会話をしていた。

「また、お前は人を助けたんだって?」

「ああ、今週は二度も遭ってしまったよ」

 今週、事故にあったことも話した。こいつは俺が死を見ることができることを知っている数少ない友達の一人だ。勿論、愛華も知っている。

 そんな会話をしていると愛華が教室に入ってきた。

「おはよう!」

 その教室に入っていきた愛華を見て俺は驚愕した。

 あの真っ黒で体を包むようなあの死の前兆が見えた。俺の顔はとたんに真っ青になっただろう。うそでしょ。原因がわからない。学校の中じゃ、理由がわからない。病気?そんなことは聞いたことはない。

「愛華!どこか具合悪くないか?」

「え?うん」

 この反応では本当に具合悪くないか。理由は…そう思っていると黒いオーラが消えた。しして、クラスメイトの人が…

「お前、ナイフでジャグリングなんかやって失敗したらどうするんだよ!」

 ジャグリングはお手玉の海外版である。

 どうしているとナイフが飛んできた。もし、俺があそこで止めていなけれな死んでいただろうこれで死ぬことを回避できた。愛華が近づいて俺に話しかけた。

「急にどうしたの?顔、変?もしかして、死が見えたの?」

「ああ、そうだよ」

「ええ、怖いな。もう消えたの?」

 死がいつもより身近に感じることができた。親友の死は身近だ。

「消えたよ」

「あのナイフが刺さったかもしれないの?」

「うん。そうだね。たぶんそうだと思う」

 これは原因がわからないのだ。ただ、状況から判断するしかない。今回の場合はたまたま回避できたが、できなかった可能性もある。その場合は…考えたくないな。

 今度は愛華もいれて3人で会話をしていた。そうするとホームルームが始まった。

 そのまま、いつものように一日が終わっていく。

「愛華、じゃあな」

 最近、愛華は引っ越し、家が遠くなってしまったのだ。

「またね。二人とも」

 そうして二人で帰ろうとした。しかし、和明が…

「俺の顔に何かついてる?」

 いや、違う。あの、黒いオーラが…

 どうして、親友二人が一日で…

「驚かないで聞いてほしい」

「もしかして、俺にオーラがついたのか?」

 俺が言おうとしていることをくみ取ったらしい。そして、俺は首を縦に振った。

「そっか。それならここにとどまれば大丈夫か?」

 俺は恐る恐る確認するが黒いオーラは消えていない。そのあと、車が急に曲がってきた。俺は壁のほうに和明を寄せ、俺も壁側に行った。そうすると黒いオーラが消えた。

「たぶん、俺が物理的に干渉しないと変わらないと思う」

「だから、俺が止まっても無駄だったのか」

「そういうことだと思う」

 車は俺たちが曲がる方向から来たので曲がっていたら轢かれていただろう。


 一日に二度、親友の死を見てから数日が立ち、週末になった。今日はみんなでゲーセンに来ている。

「ねえ、和明、お前ってくれんゲーム得意だったよな?」

「まあ二人に比べれば得意なほうだよ」

「愛華が何度も挑戦しているから教えてあげてよ」

 何度か挑戦し、少し悲しいような顔をしていた。

「わかった」

「愛華はどれが取りたいの?」

「このぬいぐるみ」

 その後、何度かやり取れたらしい。俺にはよくわからないが、裏技を使ったらしい。

 その後、様々なところで遊び、帰った。しかし、その帰り道にまた、愛華にあの黒いオーラが…

「和明、愛華に…」

 俺はそれだけ伝えた。それで理解してくれたらしい。周りを見て、気が付いたようだ。上が危ない。近くにはマンションがあり、人がベランダにいる。何かが落ちてくる。そう俺たちは分かった。だから、愛華の肩をつかみ止めた。

「きゃっ」

 愛華は声をあげた。やっぱり、マンションから物、植木鉢が落ちてきた。

「また、黒いオーラが見えたの?」

 俺はゆっくり首を振った。

 知り合いから黒いオーラが見えたのはこの前が初めてだ。だから、その人のその後は分からない。もしかしたら、目先の未来を変えているだけで、本質的未来は変えられないのかもしれない。そうなれば、二人もいずれ…

「愛華が2回目ってことは俺も可能性があるってことだよな」

「ああ、そういうことになるな」

 俺は少し動揺していたが落ち着いて見せた。

「!?」

 俺はまた、見てしまった。和明が…

 やはり未来は変えられないのだろうか?なら、なぜこの能力が俺に授かったのかがわからない。

「その反応は俺に…」

 また、ゆっくり首を振った。

「今日は俺の家に二人とも来て」

 この前から二人に死が見えることが多い。だから、死が見える俺がそばにいて監視することが一番安心するだろう。

 俺は和明を押し、倒した。そうすると、さっきまで和明がいた頭ぐらいの場所に野球ボールが飛んできた。これで、黒いオーラが消えた。

「和明、ごめん。これで、黒いオーラは消えたよ」

 そうして俺は、和明の手を取った。

 そして、俺の家にみんなで集合した。

「昔はこうやってみんなで止まったよね」

「ああ、そんなこともあったな」

 昔のことを懐かしがっていた時だった。1階から物音がした。そのとき二人が真っ黒なオーラに包まれた。

 一応、俺のことも確認した。大丈夫なようだ。俺だけ助かるようだ。

「お前ら、逃げろ。黒いオーラだ」

「でも、どこに?」

 それが問題だ。俺が直接干渉していない。未来を変えることができないだろう。

「じゃあ、この中に隠れて」

 俺が指をさしたのはタンスだ。ここに隠れるしかない。

「閉めるよ」

 そして、俺はカギを閉めた。下には確実に何かがいる。俺はそいつを倒しに行く。あいつらは直接干渉したから黒いオーラが消えただろう。そして、俺はこれから、下にいるやつに全力で抵抗する。俺は死なないはずだ。黒いオーラが………ある…

 自分が干渉すれば………武器を持とう。これで多少は。

 下には人がやはりいた。俺は背後その武器で殴りかかった。しかし、急所を外したようだ。相手がナイフで俺の腹部を刺した。俺はそのまま倒れた。目の前にはガラスがあり俺が移っていた。俺に黒いオーラはなかった。

 俺は後日病院のベットで目覚めた。そこで、あの後の話を聞いた。その話はこうだ。

  あの後、二人は下にいたやつが出ていったことはすぐにわかった。ガラスを割り、出て行ったのだ。下に行くと腹部にナイフが刺さったまま倒れていたようだ。そして救急車を呼び、今に至るのだ。

 そして、俺は二人の顔を見る。黒いオーラは見えない。

 この時から俺は黒いオーラは見えなくなった。きっとこの力は二人を助けるために遭ったのだろう。助けられてよかった。だが、引っかかることもある。黒いオーラは消えないのではないか。しかし、俺は次のように結論をした。

 俺が見えるようになったのは二人を助けるため。ほかの人たちは、練習をするため。これで、一番しっくりくる答えだ。

 あれから、3年がたった再び黒いオーラが見え始めた。

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