Uターンプロポーズ

千代田 白緋

第1話 一年間という空白

僕は地方に残る。彼女は都会に行く。ただそれだけ。


高校最後の登校日。僕は突如として、彼女が都会の会社に受かって、来年から離れ離れになる事を知らされた。裏切られた感と不安を胸に抱きながら、校門前で立ち尽くす。彼女の進路選択を止める権利なんて僕は持っていない。だけど、遠距離恋愛なんてした事がなかった。彼氏なのだから、少しぐらい、相談があってもいいものである。不安を感じるのは当たり前だ。そして、別れ際、彼女が言った言葉が頭をよぎる。


「来年、一年間はメールも電話も会うのも止めよう」


僕は飽きられてしまったのだろうか。僕はドキッとする。確かに受験期に入ってから、俗に言う「倦怠期」にあった事は否定できない。だが、別れの季節である事もあり、最近の自分は積極的であったと自負している。大学受験が互いに終わってからは、デートやサプライズプレゼントをしていた。これで飽きられてしまったと言われたら、僕に出来る事は何もない。しかし、なぜ彼女は「一年間」という期間を決めたのか分からない。飽きてしまったのなら、期間を決める必要はない。それに別れ際の彼女は泣いていた。卒業式で感極まって泣いたと考えるもいいが、彼女の涙には後ろ向きではなく前向きさが乗っていた。何かを決意した時のような。あの涙を僕はどこかで見ている。しかし、それがどこで、いつ見たものであるかが思い出せない。

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