第27話

 空もすっかり暗くなり、俺は部屋で休んでいた。

 明日からのことを考えていたとき、リビアがやってきた。


「今お時間よろしいですか?」


 ひょこりと顔を出したリビアに、俺は頷いた。


「どうしたんだ?」

「ゴブリンとワーウルフたちに聞きました。村に出来ていた畑は、ゴブリンとワーウルフたちで作ったものなんですよね?」


 部屋へと入ってきた彼女は後ろ手で扉を閉めながら、こちらへと近づいてきた。


「そうだな」

「両者とも感謝していました。クレスト様が丁寧に教えてくれた、と。これからは頑張って量産して、ぱん、とやらを作りまくる、と。ぱん、とはなんですか?」


 ……そういえば、リビアにはパンを見せたことはなかったか。


「小麦で作れるふわふわとした食べ物だな。それなりにお腹を満たしてくれるし、果物と合わせると色々と味が楽しめるんだ」

「そうなのですか? ……私も食べてみたいですね」

「小麦ができれば、飽きるほど食べられるな」

「……わぁ、楽しみです」

「果物以外にも、卵やチーズと合わせてもおいしいんだ」


 卵を焼いて挟むだけでも美味しい。

 それに、パンにチーズをのせたトーストなんて最高だ。

 チーズがうまく溶けて、滅茶苦茶美味しいのだ。


 思いだしたら、腹が空いてきてしまった。……ただ、チーズや卵だって、料理術を見る限り手に入れることは可能だ。


「それでしたら、ファングカウ、ヘビーコケッコを仲間にするというのはどうでしょうか?」

「そうだな。家畜に出来ればいいんだが……まだ、彼らを育てるための食糧がそこまでないからな。それらを含めた準備ができ次第、仲間にしたいな」


 飼育術を手に入れたゴブリンもいるんだしな。

 ……本人はまだ何の効果も発揮しなかったため、少し悲しんでいるようだったが、いずれ働いてもらうことになるだろう。


 お互いにこれからについての夢を馳せていた時だった。リビアが目を輝かせ、こちらを覗いてくる。


「そういえば、ガチャはもう回されたのですか?」

「まだだな」

「……それでは、見せていただいても良いですか?」


 どうやらリビアもガチャの魅力に取りつかれたようだ。

 それじゃあ、ガチャを回すとしようか。

 今回は二十二回ガチャを回せる。

 

 リビアが俺のほうに体を寄せてくる。小さな彼女の肩が俺の体に触れる。

 ……僅かな温かさと石鹸の香りが鼻孔をくすぐる。

 あまり意識しないようにしながら、俺はガチャを回していった。


 最初の十一回ガチャは……銅色6つ、銀色3つ、金1つ、虹1つだ。


「むむ……これはあんまり良くないですか?」

「……そうだけど、まあこれからだな」


 最近はステータスが跳ねあがっていることもあって、銅色でも嬉しい。

 生活に困っていた四月は、ハズレだと思っていたが今では一番のあたりではないかとさえ思っている。


 まずは銅色からだ。


 力強化 レベル1

 力強化 レベル1

 耐久力強化 レベル1

 器用強化 レベル1

 俊敏強化 レベル1

 魔力強化 レベル1


 ……まあ、無難だな。

 

「次から、大事になるんですよね」


 リビアも俺のガチャについて覚えてきたようだ。両手をあわせ、祈ってくれている。

 銀色を確認していく。


 格闘術 レベル1

 釣り術 レベル1

 回復術 レベル1


「……これはどうなんですか?」


 リビアが首を傾げる。

 

「……かなりハズレの方だな。回復術くらいは使えるけど」

「確か、傷とか、魔力とかの回復が早くなるんでしたっけ?」

「ああ。知らぬ間についた擦り傷などは寝れば治る程度にはなったな。今後、レベルが上がれば大怪我を負っても回復するようにはなるかもしれないけど、今はそこまで恩恵は感じてないかな」


 がっくり、といった様子でリビアが肩を下した。

 次は魔法である金だ。


「土魔法だな」

「……うん、まあ、悪くはないですよね?」

「そうだな」

「……ちょっと気になったのですが、私がいるともしかして……悪くなってますか?」

「そうでもないぞ? まあ、だいたいいつもこんなものだ」


 リビアが本気で落ちこんでしまったので、慌てて訂正する。

 だいたいいつもこんなものなんだよな。

 全体で見れば、そこまで悪くない。


 リビアを元気づかせるためにも、俺は虹を確認する。


 召喚士 レベル1


「……被った」

「そ、そうなるとどうなるのですか?」

「……今のところ、使い道はないな」

「……私、外に出ていましょうか?」

「いやいや、大丈夫だって。いずれはこうなると思っていたしな」


 慌ててそういったが、リビアはあまり元気がない。

 ……さ、さっさと次に行こうか!

 俺は急いで、次のガチャを回す。

 そして……十一回分のガチャを回した。


 銅色は力強化、耐久力強化、器用強化、魔力強化。

 銀色は格闘術、開墾術、建築術。

 金色は火魔法、水魔法、付与魔法。

 そして、虹色が魔物指南だった。


「や、やった! リビアのおかげで、魔物指南のレベルがマックスになったなっ!」

「そ、そうですか……良かったです」


 心から安堵した、といった様子でリビアが息を吐いた。

 ……俺も同じだったな。これでまた召喚士が被ってしまっていたら大変だったな。


 リビアがいると出ないかもしれない、と思っていたかもしれない。

 とりあえず、スキルのレベルアップを行い、俺は軽く伸びをした。


「リビア、他にも何か話があるのか?」


 まだリビアは部屋にいたので聞いてみると、


「……あの、今日も隣で寝てもよろしいでしょうか?」


 恥ずかしそうに体を揺すり、上目遣いにこちらを見てきた。


「別に……いいけど」


 むしろ、お金を払わなければ普段は体験できないような状況なのだ。

 是非ともこちらからお願いしたいくらいなのだ。


「そうですか? それでは一緒に寝ましょう」


 嬉しそうにリビアが微笑む。


「……わかった。もういいのか?」

「はい」

 

 俺は部屋の明かりを消してから、ベッドに入った。窓からは月明りが入ってくるので、真っ暗ということはない。

 

 下心は多少なりともあったが、リビアはただ添い寝を希望しているだけ。

 決して邪な態度は表に出さないように努めた。


 前にリビアとは一緒に寝ているとはいえ、それでも未だ緊張はなくならない。

 恥ずかしさがあったため、俺が彼女に背中を向けると、つんつんとつつかれた。


「もう、お顔を見せてください。クレスト様のお顔がみたいんです」

「……別に、見ていて楽しいものでもないだろ?」

「楽しむものではありませんよ。ただ、安心できるのです」


 そういわれると、背中を向けている俺が意地悪でもしているようだった。

 彼女の方を見ると、嬉しそうに頬を染めた。


「……抱きついて眠ってもよろしいでしょうか?」

「……あ、ああ」


 それこそ、背中を向けたかった。

 リビアに返事をすると、彼女は嬉しそうに抱きついてきた。初めはそっと。だけど次にはある程度力をこめてだった。


 別に痛いということはない。彼女の感触を確かめるようなその力加減に、俺はどきりとした。

 リビアの足がすっと絡んでくる。……そうすると、リビアは落ち着いたような顔になった。


 逆に俺の心臓はバクバクと高鳴っていた。前よりも密着度が増しているからだ。

 ……ああ、くそ。これで眠れるだろうか? 体に疲労感はあるので、それに任せるしかなかった。




 クレスト


 力370(+22)

 耐久力345(+17)

 器用328(+16)

 俊敏354(+16)

 魔力412(+24)


 力強化 レベル6(あと3つでレベルアップ)

 耐久力強化 レベル5(あと4つでレベルアップ)

 器用強化 レベル5(あと3つでレベルアップ)

 俊敏強化 レベル5(あと3つでレベルアップ)

 魔力強化 レベル6


 剣術 レベル4(あと3つでレベルアップ)

 短剣術 レベル2(あと1つでレベルアップ)

 槍術 レベル2

 採掘術 レベル2

 釣り術 レベル3

 開墾術 レベル2(あと1つでレベルアップ)

 格闘術 レベル3

 鍛冶術 レベル2(あと1つでレベルアップ)

 料理術 レベル2

 仕立て術 レベル2(あと1つでレベルアップ)

 飼育術 レベル2

 地図化術 レベル2(あと1つでレベルアップ)

 採取術 レベル2

 感知術 レベル2(あと1つでレベルアップ)

 建築術 レベル2

 魔物進化術 レベル2

 回復術 レベル2


 土魔法 レベル4(あと2つでレベルアップ)

 火魔法 レベル5(あと4つでレベルアップ)

 水魔法 レベル4

 風魔法 レベル3(あと2つでレベルアップ)

 光魔法 レベル2

 付与魔法 レベル3


 鑑定 レベル3(MAX)

 栽培 レベル3(MAX)

 薬師 レベル3(MAX)

 召喚士 レベル3(MAX)

 魔物指南 レベル3(MAX)

 魔物使役 レベル2(あと1つでレベルアップ)


 余りスキル

 薬師 レベル1

 鑑定 レベル1

 召喚士 レベル1_____________________________________

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