第20話


 ファングシープを倒して獲得したポイントは一体あたり200のようだ。

 ミツベアーと同じくらいだと思ったから、まあ仕方ない。


 それでも、とりあえずファングシープを25体倒せば、十一回ガチャを回せることは分かった。

 ……あとはどうするかだな。


 感知術が使えないため、途中ミツベアーと何度か戦闘になった。

 とはいえ、苦戦する相手ではなかった。


 普段よりは戦いにくかった。眼前に邪魔な表示がいくつも出ていたからな。

 それでも、問題なく倒すことができた。


 俺は拠点へと戻ってきて、家に入った。

 そこに敷き布団とかけ布団を作成し、ベッドに設置した。

 ……おお、完璧だ。あとは、まくらでも作ればいいが、枕ならタオルなどでも代用できるだろう。


 タオルならファングシープから作れるようだ。こちらは仕立て術のようだ。

 ……とにかく、これで生活が劇的に改善されるな。


 俺は再びファングシープがいる地域へと戻り、魔物を狩っていく。

 ファングシープを狩りながら、さらに北へと進む。

 そのあたりまで行くと、グレープンの実を見つけられた。

  

 紫色のその木の実は甘いことで有名だ。上界にあるものは小さなものだったが、下界にあるものは拳ほどのサイズだ。

 それがいくつもくっついて一つのグレープンの実となっている。


 俺は一つつかみ、口に入れる。うまい。

 とりあえず、種だけ回収してポケットにしまった。

 ……さらに歩いていると、メニンジンと呼ばれる野菜を見つけた。

 赤……ややオレンジに近いか? 人間の腕ほどはあるその野菜は地面に埋まっていた。


 それもちょうど種もあったので、それらを回収する。

 ……この辺りは素材の宝庫だな。

 さらに歩くと、ジャガンモを見つけた。土に埋まっているので、鑑定を使っていなければ見つけられなかっただろう。


 周囲を見ると花が咲いているもの、すでに実になっているものと様々だった

 ……それも探してみると、種を見つけることができた。

 

 鑑定がないとどれも簡単には回収できなかったかもしれない。

 ……それにしてもメニンジン、ジャガンモのどちらも同じように成長しているわけではないようだ。


 本来こういった植物などは温度など細かく調整しないと育たないはずだ。

 上界でも、旬の野菜とか色々あるんだしな。

 

 この下界では……そういったものはないのだろうか? この特殊な魔力が満ちた環境が、そういった作物に異常を与えているのかもしれない。


 とりあえずすべて種だけは回収できた。さらに北へと進んでいると、新しい魔物を見つけた。

 

 ヘビーコケッコ

 

 ……鶏種の魔物だ。

 俺の胴ほどまである体。ぶくっと大きく膨らんでおり、なかなか食べ応えがありそうだ。


 数は一体だ。ファングシープのように群れで行動していないだけで少し安心する。


 それから俺は剣を構え、ヘビーコケッコへと斬撃を放った。


 ヘビーコケッコに斬撃は当たる。ただし、威力はそこまで強くない。

 ……この辺りの魔物になると、斬撃が通りにくいようだ。


 ヘビーコケッコがこちらに気づくと、その翼を振りぬいた。

 ……と、羽が襲い掛かってくる。とりあえずかわすと、ずがずがっと地面に突き刺さる。

 ……マジか。

 

 まるで矢のように鋭い。あれを食らうわけにはいかない。

 足を止めると、ヘビーコケッコが翼を振ってくるので、走りながら接近する。

 剣を振りぬくと、ヘビーコケッコが翼で受けた。


 ……堅いっ!?

 剣が弾かれる。……正面から破るのは難しいな。

 ヘビーコケッコへと何度か剣をたたきつけ、その側面へと回っていく。

 ヘビーコケッコ自体はあまり動きが速くない。足で翻弄すれば、隙を見つけることは難しくない。


 ヘビーコケッコの背後をとり、剣をたたきつける。

 さすがに、肉には刃が通った。羽をかき分けるように剣を振り下ろす。


「ぎゅわ!?」


 ヘビーコケッコの悲鳴を確認する。動きが悪くなった。

 俺はさらに側面へと回って、剣を叩きつけていく。

 ヘビーコケッコが倒れたのを確認して、とどめを刺した。


 ……ふう、最初は驚かされたがこれも勝てない魔物じゃないな。

 ミツベアーが、明らかにこの辺りの魔物だと一つ抜けていたようだな。


 また今後も、そうやって明らかに一つ抜けた魔物が出てくるかもしれない。

 油断だけはしないようにしよう。

 ヘビーコケッコの肉を回収したところで、俺は牛牙剣の耐久値が減り始めていることに気づいた。


 ……そろそろ、新しい剣も視野に入れたほうがいいだろう。

 数日の探索の間にアイアン魔鉱石もいくつか回収している。

 ……この辺りで一度装備品を整えよう。


 鍛冶術があれば、工房がなくても作れるのは本当に便利だよな。

 とりあえず、今日一日はここでヘビーコケッコとファングシープを狩ろうかな。


 俺は一度地図を確認する。

 さらに北へと進んでもよかったが、太陽もだんだんと沈み始めている。

 

 正確な時間は分からないが15時ほどではないだろうかと思う。

 ここからさらに進んでしまうと、戻れなくなる可能性がある。


 小腹が空いた俺は、そこでヘビーコケッコとファングシープの肉を食べることにした。

 火をおこし、完璧な焼き加減で肉を焼く。


 塩はないが……味はどうだろうか。近くの木で作ったフォークと皿を使い、まずはファングシープの肉を口に運ぶ。

 ……ああ、うまい! 羊の肉は上界でも食べたことがあるが、この肉はそれらとは比べ物にならない! 頬がとろけ落ちるな!


 次はヘビーコケッコだ。鶏の肉は良く焼いたほうがいいと聞いていたので、いつも以上に念入りにだ。

 口に運ぶ……ああ、うまいなぁ。焼き鳥のようにして食べたが、塩が本当に欲しくなる。

 どっちの肉も今日の夕食にしよう。


 ここでポイントを稼いでから、今日は家に帰る。

 そう決めた。

 

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