第12話


 さて、今日はどの方角の調査を行おうか。

 地図はないが、おおまかに周囲の状況は把握していた。

 木の枝を使って地面に大まかな地図をかき、今日の探索するエリアを決める。


 今日は東側を見て回ろうか。今いる地点から南側が、最初にいた洞穴のほうだ。

 北側はポイント稼ぎをしながら、探索したが特に目新しいものは見つけられなかった。


 奥まで行けば話は別かもしれないが、かなり遠出になってしまう。

 もう少し、周囲を見てからでもいいだろう。


 東側に向かうことを決めた俺は、そちらへと歩き出す。

 まだポイントが稼げるファングカウとホブ・ゴブリンと戦いつつ、進んでいく。


 新しい魔物がいれば、5000ポイントに到達できるけど……。

 そんなことを考えながら進んでいく。

 途中、アイアン魔鉱石をいくつか見つける。……今後のことも考え、二つほどポケットにしまう。


 ……リュックサックとか作れないだろうか。

 仕立て術のほうを調べてみると、ポーチ程度なら作れるようだった。

 早速、ファングカウの皮を使い、作成してみる。

 ……よし、できた。


 牛柄の入ったポーチができたので、そこにアイアン魔鉱石を入れる。

 ついでに、糸で無理やり括り付けていたナイフも、皮のホルスターを作り、そこに入れた。


 ……よし、仕立て術のおかげで色々な皮を使った小物が作れるな。

 皮だけに加工したあと、鍛冶術で防具の生産もできる。

 ファングカウを仕留め、皮を集め、ファングカウの皮鎧を作る。


 急所を守る程度の装備だが、ないよりはましだろう。

 そうこうしていると、ファングカウと、ホブ・ゴブリンから回収できるポイントがなくなってしまった。


 ……はぁ、あと2500ポイントか。

 二種類くらい魔物が発見できればいいんだが。

 そんな思いとともに歩いていたときだった。……潮の臭いがした。


 まさか、海が近くにあるのか? そちらへと向かうと――砂浜が見えてきた。

 ……海だっ。


 海水があればそこから塩が作れる。

 俺は近くの木に片手を触れながら、小さな箱を作る。

 それを塩の入れ物にするためだ。


 砂浜を歩き、海へと近づく。波の揺れを見ながら、木の箱で海水をすくう。

 それから、料理術を発動する。一瞬の光を放った後、海水がすべて塩へと変わった。


 ……とりあえず、これで塩を回収できたな。

 まさか、こんなに早く塩を手に入れられるとは思わなかった。

 拠点から半日程度歩いたところに海がある。

 

 これは貴重な情報だ。

 海の向こうは、深い霧があって何も見えない。

 海を渡った先に大陸があるのかどうか。そのあたりは気になるところだった。

 砂浜を歩いていた時だった。海水から一体の魔物が飛び出してきた。


 半魚人の魔物――サハギンだ。

 手には槍が握られている。……海にも魔物がいるからな。下手に泳ごうとしたら、殺されるだろう。


 とりあえず、新しい魔物は悪くない。サハギンが大地をけりつけ、槍を突き出してくる。

 速い。砂浜という動きにくい足場もあって、攻撃をかわすのにも苦労する。

 

 数度槍を振りぬかれたところで、俺は土魔法を発動する。

 サハギンの足場に土を作り、その右足と左足のバランスを崩した。

 突然の変化にサハギンが驚いた様子だった。その一瞬が命取りになる。


 俺はサハギンの喉に剣を突き刺した。

 サハギンが動かなくなったのを確認してから、剣を抜いた。


 血を拭き取りながら、サハギンの槍を見る。

 槍は……非常に状態が悪いな。これじゃあ使い物にはならなそうだ。

 ……下手に森においてゴブリン辺りの魔物に拾われてもかなわないので、俺はそれを土に埋めた。


 サハギンを倒して獲得できたポイントは200だ。

 ……確かに、下界に来てからずいぶんと成長した俺のステータスでぎりぎり戦えたくらいだからな。

 200は十分だろう。というか、もっとほしいくらいだ。


 槍も鍛冶術によってアイアン魔鉱石等で修復できるようだが、現状剣だけあればいい。というか、俺は槍を使ったことがない。


 槍術とかでどうにかできるのかもしれないが……命をかけた戦いで無理に使う必要もないだろう。

 砂浜を移動し、サハギン狩りを行う。

 サハギンを狩っていると、森のほうからポイズンビーという魔物もやってくる。


 ……毒持ちの魔物だ。警戒しながら戦い、何とか攻撃されずに仕留めた。

 倒したポイズンビーを鑑定すると、どうやらポイズンビーの牙には解毒効果があるようだ。


 チユチユ草と組み合わせれば、解毒ポーションが作れるようだ。

 ……これは一つ作っておこう。それまで入れていたポーションを飲み干し、解毒ポーションを作った。

 この辺りの狩りをするなら、解毒ポーションがあったほうがいいだろう。


 ……ポイズンビーは100ポイントなのか。こいつはこいつで結構危険な魔物だが、確かに一撃ヒットさせられれば倒せる。妥当なのかもしれない。


 ポイズンビーが再び現れた。今度は二体か。

 人間の頭ほどのサイズであるが、飛んでいるため戦いにくい。

 ポイズンビーたちの攻撃をかわしながら、剣を振る。一体を仕留めたが、剣が深く刺さってしまいぬくのに手間取る。


 もう一体が突っ込んできて俺の腕をかすめていく。

 ……くそっ。攻撃をくらった次の瞬間、頭が重くなる。

 ……これが、毒状態なのだろうか。まるで高熱でも出たような感覚だ。

 

 慌てて解毒ポーションを飲み、一息つく。

 もう一体を仕留めたところで、俺は解毒ポーションをもう一度作っておいた。


 あ、危ないところだったな。

 解毒ポーションがなければ、そのまま死んでいたかもしれない。

 ……薬師を手に入れられてよかった。


 こんな危険な魔物がいるんじゃ、他の生存者を探すなんてまず無理なのかもしれない。

 ……今後もずっと一人、なのだろうか。


 はぁ、それは少し悲しいな。

 俺はそれからポイズンビーとサハギンを狙って戦っていく。

 空が暗くなる前に、狩りを切り上げ俺は拠点の大木へと戻った。


 ポイントは6600。

 まずは今日のガチャを回すとして、明日もポイズンビーとサハギンを倒していれば5000までは稼げる。


 ひとまず、今日明日は安泰だな。

 さて、ガチャを回すぞ!



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