第6話
……次の日。
俺は体を起こした。
……いてぇ。一応葉っぱを重ねて布団代わりにしたが、それでも体への負担は大きかったようだ。
それでも爆睡できたのは、よっぽど体に疲れが溜まっていたからなんだろうな。
体を軽く伸ばすと、ぴきぴき、と骨が鳴る。
さて……とりあえず、今日もガチャを回すために頑張らないとな。
毎日、十一回ガチャを回す気持ちでいたい。
ガチャが4月一杯で終わってしまうしな。
そのあと、どうなるかがわからない以上、今のうちに獲得できるスキルは獲得しないと。
ポイント稼ぎと同時にやるのは……仲間を作ることだ。
……この下界には、色々な理由で転移させられた人がいる、はず。
特に多いのは、亜人種だ。
上界は人間が暮らす場所として、亜人種の多くを下界送りにしていた。
だから、どこかしらに人もいるはずなのだ。
……昨日の夜は大丈夫だったが、今後もずっと夜一人で寝て生き延びられるとも限らない。
二人になれば、交代しながら寝られる。
だから、まずは人を探したい。
そんな気持ちで魔物を狩りながら森を移動していく。
森は似たような景色が続くため……正直言って自分が今どこを歩いているのかも分からない。
かろうじて、足跡や木につけた傷などで、同じ場所を歩かないようにはしているが……地図も欲しいな。
ゴブリン、ファングラビットを狩っていると、太陽が一番高い位置になる。
鑑定で川の水を調べ、飲めるのを確認してから口に含む。……うまいな。
下界の川は上界のものとは違うのかもしれない。
途中拾った木の実を食べながら、俺は午前中に把握した一つの事実にため息をついた。
……25体、か。
ウルフのポイントが入らなくなってから、ファングラビットを狩り始めた俺はファングラビットの倒した数を数えていた。
合計25体。2500ポイントが入ったところで、ファングラビットからポイントが得られなくなってしまった。
……これは中々問題だな。
ファングラビット、ウルフ以外の魔物を探さないと、今日の分のガチャが回せない。
昨日はファングラビット、ウルフ、ゴブリンを合算して5000ポイントを稼いだんだからな。
あと一体、魔物を見つけられれば、とりあえず今日の十一回ガチャに間に合う。
川で一休みしていると、川を泳いでいた大きな魚が飛びかかってきた。
鑑定すると、フィッシュアローと呼ばれる魔物であるのがわかる。
顔の先が矢のように鋭い魚だ。飛びかかってきた一撃をかわすと、フィッシュアローは地面に突き刺さった。
……狩りやすい魔物だな。隙だらけの体を切り裂いて、仕留めた。
……ポイントは、100だ。
魔物から得られるポイントは100で固定なのだろうか? それとも、ここにいる魔物が弱いとかそういう理由があるのだろうか?
ひとまず、新しい魔物を発見できてよかった。
それに、魚か……。フィッシュアローは鑑定で食べられることが分かったので、火を使って体を焼いた。
それから、その魚にかぶりつく。
……うまい!! 今までに食べてきた魚が偽物だったかのように、新鮮で身が引き締まっていてうまい!
骨を除去するのが面倒だったが、それでもうまい!
……ああ、下界での生活ではこの食事が唯一の楽しみかもしれないな。
腹を満たした後、川沿いに歩いてフィッシュアローを仕留めていく。
そうしながら、まだ2500ポイントに到達していないゴブリンも狩っていく。
さらに、新しい魔物を発見する。
ブラッドマウスと呼ばれるネズミだ。人間の子どもくらいはある大きさだ。
牙が鋭く、近くの太い木に余裕で穴をあけるほど。
あれに噛まれたら命はないと思ったほうがいいな。
それでも、動きがあまり速くないため、比較的戦いやすい。
森の中で遭遇したゴブリンよりも戦いやすいかもしれない。奴らは、木々をうまく利用するから苦戦するんだ。
ブラッドマウスの肉を鑑定で確認する。
危険と表示されてしまった。
……どうやら、ブラッドマウスの肉は毒があるようだ。
これは食料にならない、か。
……危なかったな。鑑定が手に入っていなければ、手当たり次第に肉を食べて、さっさと死んでしまっていたかもしれない。
ゴブリン、ブラッドマウス、フィッシュアローと戦いゴブリンからポイントが得られなくなる。
……ブラッドマウス、フィッシュアローを仕留めると、ポイントが5000に到達した。
空を見ると、まだ陽は落ちていない。
……効率があがったのは、剣術のおかげだろうか。
これはレベル2だが、剣の扱いが随分と良くなったように感じる。
……ただ、問題も決してないわけじゃない。
剣を研ぐ手段がないため、そのうち剣がダメになってしまいそうなことだ。
……どうしようかね。
弱い魔物はなるべく、剣以外で倒す手段を探したほうがいいかもしれない。
だが……それで怪我をしたら元も子もないからな。
先を見なければならないが、今も大事だ。
……難しいな。
拠点へと戻る途中、新しい果物を発見した。
……そちらへと視線を向けると、他にも見たことのないものが色々とあった。
……明日はその方に探索へ行こうか。
最初の拠点では確認できなかった植生があるということは、それに合わせて魔物も変化している可能性があるからな。
今日は昨日よりも順調に生活できている。
ただし、残念なことがあったといえば、結局、人とは出会えなかったな。
今日も、俺は洞穴で生きるか死ぬかの睡眠をとる必要がある。
……まさにガチャみたいなものだな。
俺は洞穴へと戻ってきて、それからガチャ画面を開く。
ポイントは5500ある。帰りに何体か、フィッシュアローを狩ったからだ。
今日一日の労働のすべてを、ここに賭ける。
十一回ガチャで、昨日は虹色の玉が一つ出た。
……今日は二つは出てほしい。
俺は神へと祈りをささげてから、ガチャを回した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます