第26話 私の決断

「冗談、だよね」


 りんは思いっきり口角を上げる。


「そんなわけないじゃん! 瑠香ちゃんと一緒に活動できたら楽しいなって」


 伊月も今までの態度が嘘のように微笑む。


「ああ。また三人で仲良くやろう」


 そこに広がっている景色はまるでお花畑のようだ。


 たくさんのお花が咲いていて。


 気持ちよさげに揺れていて。


 太陽の光を反射してキラキラと輝いている。


 そんな、夢の世界。


 

 私が望んでいた世界そのもので。



 ゴクリ、と息をのむ。



「瑠香ちゃん?」


「瑠香?」


 ああ、私の大切な幼馴染が私の名前を呼んでいる。


 伊月に至っては久しぶりに名前で呼んでくれた。


 幸せ、だな。


 私は微笑んだ。


 それを見たりんと伊月も微笑んで。


 

 私の中でブチ、と何かが切れた音がした。


 

「私、やっとわかった。ありがとう」


「うん、瑠香ちゃんは放送部に入るためにここに来たんだね」


 ふっと、わらった。


 りんの目の色が変わった。


「この間言われたことを守るよ。もう二度とあなたたち二人に関わらない」


「な、何を言って——」


「りん、言ったよね? もう関わらないでって」


「あ、あれは——」


「ごめん。私がわかっていなかった。二人はもうあの頃の二人じゃない。私が会いたかった幼馴染じゃない。——だから、もういいの」


 私は一歩下がる。


 そして、深々と礼をした。


「今までありがとうございました」


 二人の顔を見ないで踵を返す。


「あ、そうだ」


 少しだけ振り返る。


「大会、頑張ってね」



 ドアを閉めた。




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