第25話 新たな壁

 私のせいって、なに。


 うそつきって、どういうこと?


「私、なにか、した……? 何かしたならあやま――」

 

 伊月はふっと笑った。


 誰かをあざ笑うかのような。


「そうだよな。約束を破った方はそんなこと覚えてもないんだ」


 伊月の声はこの世界のものとは思えないほど冷たくて。


 頭がうまく働かない……。


 私は慌てて伊月に駆け寄る。


「近づくな!」


 伸ばしかけた手は空を切る。


「ごめん! 本当にごめんなさい!」


「……もう来るな、関わるな!」


 ハッキリと拒絶された。


 伊月がこうなっちゃったのは私のせいだったんだ――。


 ガタン。

 

 ドアにぶつかる音がした。


「瑠香ちゃん……?」


 憎悪が混じっているその声を聴いて私は頭を上げる。


「りん……」


「何でここにいるの。もう関わらないでって、言ったよね?」


「私はただ、伊月と話したくて……!」


「悪いけど、帰ってくれない? 私たち大会の準備で忙しいの」


 りんは手にしていた紙を掲げる。


 ぞわり、と。


 あの悪い予感がよみがえってくる。


 美香ちゃんと電話した時に感じた、あの予感が。






『もう廃部かもって思ったら――』






『うん、実は。全国いかないと、消されそうなんだよね……』





 りんは口の端を持ち上げる。

 

 こんな笑い方する子じゃなかった。


「私たち、全国目指してるから」


 私は後ずさりして、椅子にぶつかる。


「うそ、だって、この間の大会でいなかった……」


「今年の大会のこと? 全国一歩手前で近くの黄金中に負けたの。……ていうか、なんで瑠香ちゃんそんなこと知ってるの? もしかして」


「前の学校で全国いった」


「ほんとに?」


 疑わしそうな目を向けてくる。


 りんは考え込むそぶりを見せた後伊月とアイコンタクトを取る。


 数秒後に二人は頷いて私を見た。





「瑠香ちゃん、放送部に入らない?」


「え?」


 かすれた声がむなしく響く。


「放送部はいつでも大歓迎だ」


 






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