第3話 はじまりの村の門番のおっさん
「貴様何者だ!」
あぁ、一体どれだけのネット小説で書かれたであろう、このセリフ。しかし驚いたな。実際の
「聞いているのか!」
そうそう、これもネット小説定番のセリフだよな。この後応援とかくるのか?いや「はじまりの村」の規模だとそれはないか。主要産業は何だったけかな。それにしてもおっさんにめり込まなくて良かった。何も考えずにバグ技使ってみちゃったよ。これでいいのか、この世界。
「おいこら!」
『門番のおっさんの攻撃。テイルはクリティカル5ダメージを受けた』
すげぇ、このおっさん初撃でクリティカルだ!じゃなくて、このまま食らってたらHP無くなりそうだな。『ふしぎそうな飴』2つ食っといて良かった。今レベル3でHPも足りてる。
「あーすみません。冒険者です」
「冒険者か…見たことない顔だが、いきなり真後ろに現れて、何が目的だ」
えぇ…めんどくさいな。いや、まぁ「はじまりの村」なんだから、こっち側の門通るやつだいたい初めてだろうに。アレでなんとかなるかな。
「すみません、ちょっとまだ転移魔法?とかに慣れてなくて。これ、通行料です」
そう言って俺は門番のおっさんに1万G硬貨を渡した。トリスタの世界に紙幣はない。硬貨に含まれる金属がその価値を証明しているのだ。1万Gは日本円でいうところの1万円。物価も日本とほぼ同じ。理由はトリスタのプレイヤー・運営オフ会で聞いたことがある。
『ほら、通貨単位とか細かくしたり、物価をいじると分かりづらいじゃん。2次創作とかも許可してるし、日本円に換算して〜とか日本の物価になおして〜とかなると、いちいち世界観の設定も読む方も面倒だからさ』
ちなみに1万G硬貨に使われてる金属は日本円でいうところの1万円分の純金らしい。そこ、オリハルコンとかじゃないんだね。純金はけっこう柔らかいと思うんだけど、トリスタはゲームなので強度があるらしい。合金のピンクゴールドよりもあるのかな?どれくらいあるんだろう。今度誰かに硬貨切りしてみてもらおう。定番の演出だしね。
そんな事をトリスタの初期ゲームプランナーが話してた。たしかにな。いろんなネット小説も見習ってほしい。あの人今何やってるかな。そう言えば初期のシナリオライターもやってたらしくて、
『【はじまりの草原】と【はじまりの村】の名前?だって考えるの面倒じゃん。なんで【はじめてのおつかい】じゃなくて【はじまりのおつかい】かって?アレ誤植なんだよね。でも、システム内だけじゃなくて印刷物とかもう色々な所にその名前でやっちゃったし、まぁ【はじまりシリーズ】ってことでいっかってさ』
ずいぶん適当な人だったな。でもまぁかっこ良さそうな神殿の名前とか、フィールド名とか、村名考えるのは面倒だよな。だいたい他の作品とかぶりそうだし。キャラ名なんて特にそうだ。例えばエレオノーラとかいう名前とかありがちだよな。たまにプレイヤーやってるらしいんだけど、名前も「はじまり」さんだったな。はじまり大好きさんだよホント。
「…ていいぞ」
「ん?」
「通って良いと言ってるんだ!」
あぁ、聞いて無かった。おっさん、金もらったらOKなのか。RTAしてるわけじゃないが俺も新しい人生を楽しむのに忙しいしな、とっとと行っちまおう。
「あんがとな、おっさん!」
『門番のおっさんに攻撃。門番のおっさんはクリティカル10ダメージを受けた』
お、NPCへダメージ判定あるのか?いや、さっき俺もくらってたしな。おっさんどれくらいHPあるんだろう?てか肩叩いただけでクリティカルか。大丈夫かこのゲーム、というか世界。
「おっさんじゃない!私の名前はモンバン・ノ・オッサンだ!」
やっぱガバガバだな〜このトリスタの設計。何だその名前。あぁ「はじまり」さん言ってたな。
『NPC名考えるのめんどくさいよね?』
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