第二十話 レベル1000
《歪界の呪鏡》を用いての修行より、一週間が経過した。
俺はレベル1058まで上がっていた。
ついにレベル1000の大台に入っていた。
今日も今日とて、俺はルナエールと共に《歪界の呪鏡》へと入り込んでのレベル上げを行っていた。
勿論、今回も《
ただ、今は開始数日目とは決定的に異なることがある。
異形の悪魔達に対して、俺の魔法で多少なりともしっかりとしたダメージを通すことができる点である。
「
俺は魔法陣を紡ぎ、剣を天井へと掲げる。
直径十メートルを超える、巨大な赤黒い炎の球が宙に浮かんだ。
そう、俺は超位魔法に属する、第十階位よりも上の魔法の習得にも成功していた。
この魔法は本来被害が大きすぎるので気軽に乱発できる魔法ではない。
地形を変えてしまいかねない上に、気を抜けば術者自身も業火に巻き込まれかねない。
しかし、ここは《歪界の呪鏡》内であるため好きに壊してしまっても問題はない。
そしてルナエールの《
巨大な炎の球が《
炎の球は地面と衝突した瞬間、更にその質量を増した。
赤黒い炎が、結界外の一部分を埋め尽くした。
悪魔達が炎に覆われていく。
そう、俺が苦心して《
この技であれば、悪魔達にとってまだ格下である俺も、悪魔の回避を許さずに攻撃を当てることができる。
俺は《
大きな人間の頭部に目が三つ、鼻が二つに口が四つついた、不気味な外観をしている化け物であった。
顔の一部の面がやや黒く焦げていた。
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種族:$)うj~L
Lv :3012
HP :14478/15361
MP :15578/15662
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よし、1000近いダメージが通っている。
ここの悪魔共は回復能力も高いものが多く、これで倒しきることは難しいだろうが、経験値配分のための貢献稼ぎには丁度いい。
ついでに、俺の武器は既に《愚者の魔法剣》から変わっている。
レベル500を超え始めたところから、あの武器では軽すぎるのではないかと感じるようになってきた。
今は黒刃の長剣を使っていた。
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【魔剣ディース】《価値:伝説級》
攻撃力:+1100
魔法力:+1000
五百年前に生まれた魔王ディスペアが自身のために、人間の一流の鍛冶師を集めて造らせた剣。
納得できる剣を造れなかった者は殺すと宣言していたが、
剣としての性能は勿論のこと、高い魔法力を秘めている。
魔王ディスペアが討伐されて以来、《魔剣ディース》は人間の手に渡ったが、所有者がすぐに死亡するため魔王の怨念が籠っていると噂されている。
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……ちょっと不吉な由来はあるが、今の俺の実力によく適している。
やや重くは感じるが、今の基本戦術が結界内で魔法をぶっ放し続けることなので、あまりマイナスには働いていない。
因みに魔王ディスペアの怨念についてルナエールに尋ねたところ、『私より遥かに弱いので、あまり怖いと思わない』と答えられた。
それはそうか……。
俺だって、ゴブリンの怨念が込められた剣なんて、大して怖いとは思わない。
ルナエールの傍にいる限りは特に問題ないだろう。
俺はルナエールから投げ渡された小瓶を掴み、一気に中身を飲み干してから地面へと投げ捨てた。
無論、《神の血エーテル》である。
《
……俺は今日だけで既に《神の血エーテル》を三十本近く飲んでいた。
俺は少し膨れた腹を撫で、それから《魔剣ディース》を構える。
「《
再び結界の外が業火に包まれる。
ルナエールが俺に続いて《
今日の分のレベル上げが終わり、また彼女の小屋へと帰還した。
今日は珍しく、一度しか《ウロボロスの輪》に頼らずに済んでいた。
最近は《ウロボロスの輪》の発動に追い込まれた後、どうにか上手く立ち回ってルナエールが結界を張り直してくれるまで時間を稼ぐ術を身に着けていた。
なので、死ねば死にっぱなしという不毛な事態を避けられる。
「……大丈夫ですか? まさか、十時間も続けるとは思いませんでした」
「すいません師匠……迷惑でしたか?」
「いえ、それは別に構わないのですが……精神的にかなり辛いのではないかと」
「最近は慣れてきました。最近は身体が吹っ飛ばされてもあまりストレスに感じなくなりましたし、作業的な疲れも……こう、エーテルの酩酊感で誤魔化せますから」
「そうですか……」
ルナエールが俺の言葉に対し、若干困惑気にそう返した。
……俺も、慣れは恐ろしいものだと最近実感しつつある。
「そ、その……考え方が、人間というより私のような不死者よりになってきたかもしれませんね。あまりここに馴染み過ぎると、外で生活し辛くなるかもしれませんので気をつけてください」
俺はふとルナエールの横顔を眺める。
目が僅かに大きく開いており、口の端にもやや力が入っている。
「師匠、ちょっと嬉しそうですね?」
「そ、そんなことはありません! 怒りますよ!」
「え……す、すいません!」
……なんとなくそう見えたので言ってみただけなのだが、思いの外強く反発を受けてしまった。
それからルナエールはしばらく、自身の顔を手でぺたぺたと確かめるように触っていた。
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